コラム
「日本流通産業新聞」2月27日号掲載2025.3.17(投稿日)
基礎講座Q&A vol.112 「Q.テストのたびに新たな課題が出てきます」

「日本流通産業新聞」 2月27日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.112 「Q.テストのたびに新たな課題が出てきます」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

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Q.テストのたびに新たな課題が出てきます
新規獲得も既存リピート育成も、なかなか良い成果が出せていないのが現状です。テスト展開をいろいろとやってみるのですが、そのたびに新たな課題が出てきて、その対応に追われており、根本原因にアプローチできていないのが問題だとは思っているのですが、手が回らない状況です。(中堅通販会社)

A.マーケティング戦略の不在を克服して、基本戦略をブレさせない!

◆他社を真似る!?

 さまざまな通販化粧品会社さまのお話をお聞きすることが多いのですが、時々「おや?」と思うことがあります。その一つが、他社の施策情報を取り入れて、当たり企画を真似したがることです。
 もちろん他社の情報を知ることはとても大事なことです。しかしそれは単純に真似するためではありません。他社と自社は、商品も異なれば、お客さまも異なり、訴求内容も、コンセプトも異なるので、単純に同じことをしても当たるはずはないのです。そのため情報はもっと俯瞰で見た大きなくくりで捉えるべきで、単純に真似することは邪道と言えます。
 自分たちの主張やコンセプトを、自信をもって前面に打ち出すことこそ最も大事なことなのです。つまり、真似る前に、自分たちの「強み」をアピールすることが大切だと思います。一時の施策だけを真似て、短期間の成果を上げることよりも、もっと長期的視点で将来の価値を上げるために、自分たちの「強み」をアピールし続けた方が、強い勝者になれるのです。

◆テストの数字で決める!?

 またいつも私が不思議に思うのは、テスト施策のリターンによって方向性を決めるという「テスト展開」というキーワードです。この背景には「評価は数字次第で決まる。その後の方針は結果次第」という進め方です。もちろん通信販売は統計のビジネスなので、数字は大きな判断基準です。ただし数字によってすべてを決めるとなると、それは少し間違った方向に行く危険性があると思います。
 数字は誰にでも共通の分かりやすい評価です。しかし私たちが化粧品を買う時は、数字で表せる現象ばかりを頼りにしている訳ではありません。
 なんとなく気分が良かったからとか、勢いで買ってしまったとか、数字にはできない感情的な、動きやモノ・コトにも大きく左右されます。そのため、数字のみを判断基準にしていると大きな間違いを犯すことがあります。それを組み込んで戦略を立てるのがマーケティング戦略の役割なので、数字が決めてくれるのであれば、何も検討する必要がなくなってしまいます。「数字だけで判断しない」が、通販マーケティングの鉄則だと思います。

◆お客さま調査をしない!?

 また、とても不思議な現象として、通販化粧品会社さまで「お客さま調査をしたことがない」とお聞きすることがあります。
 「お客さまの声は、毎日コールセンターに入ってくる注文の時のお電話で聞いているため、お客さまについては十分に知っています」というのが論拠になっていることも多いようです。
 これはとても重大な思い違いをしていると言えます。お客さまが注文時点で言ってくださるのは、クレームか、あるいはお気に入り商品を褒めてくれる場合などに限られます。もっとお客さまの生活背景を知って、消費行動を予測できるような、ライフスタイル全般の「調査」ではありません。それでは大きなマーケティング戦略を定めるための情報が不足してしまいます。
 販売現場でヒアリングできる枝葉末節の情報は、具体的施策を考える時に役立つ調査情報なので、大きな方向性を定める調査とは別に考えないといけません。お客さま調査の役割を間違えると、大きな損失を生みだす要因になってしまいます。

◆LTV拡大が目的ではない!?

 最近よく聞くのは「新規獲得から、LTVの拡大とロイヤル客の育成へと舵を切った」とのお声です。方針転換の意向を示される会社が増えています。これは本来商売の基本のキのようなものです。満足していろいろ買ってくれる上得意先を増やすことは、ほとんどのビジネスの原則のようなものです。特に消耗品のビジネスではなおさらです。
 誰がいつ「通販化粧品は新規獲得が運命を左右する」というようなムードを作ったのでしょうか?そもそもその考え方が大きな間違いなのです。そんな一過性の成功を目標にしていたのでは、長期にわたっての成功を導くことはできません。
 私は現在の傾向については、「やっと元に戻って、本来のビジネスのあるべき姿になってきた」と歓迎すべきだと考えています。

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