国土交通省国土審議会長期展望委員会がまとめた「2050年の日本国土の長期展望」によると、今から約40年後の2050年には、総人口は2005年のピーク時から約25.5%減少し、一億人を割り込むと予想。
一方で、65歳以上の高齢人口は増加の一途。2005年に約20%だった高齢化率は、約40%に高まると予想されている。
そんな中、化粧品業界でも各社が50-60歳以上の高年齢向け化粧品に力を入れ始めている。
2000年9月に『“素敵な50代を応援する“ブランド』としてカネボウが展開した「エビータ」は、2005年にはメイクシリーズを、2007年には美白スキンケアシリーズを発売。商材の幅を広げながら50代向けブランドとして成長を続けている。
また、2008年には資生堂が『60代以降の女性の“年を重ねた美しさ“を引き出す新スキンケアブランド』として「エリクシール プリオール」を、2008年にはカネボウ化粧品が、『メイクで簡単に“エイジング・ケア“』をコンセプトに掲げた百貨店向け高級ブランド「CHICCA(キッカ)」を50代後半~60代女性をターゲットに展開。通販化粧品では、2010年にサントリーが『「肌をやり直す」ためのスキンケアシリーズ』として50代以上向けに「エファージュ」を発売している。
50~60歳代のかつてのイメージは、第一線を退いたという印象があった。しかし、今のシニア世代は見た目も考え方も若い。むしろ、「老いた」という認識は薄いと言っても過言ではない。
ところが、その若々しい気持ちとは裏腹に、肉体は確実に老いていく。先人たちを見ても、オシャレや美容の参考になるようなものは少ない。そんな中で、若々しくおしゃれでいたいという感覚と、現実的な肉体的衰えのギャップにとまどっているのが、今のシニア世代ではないだろうか。
つまり、この世代にものを売るには、「まだ若い」「おしゃれしたい」気持ちを盛りたてつつ、『この商品なら、そのギャップをこうやって埋められますよ』とリードしてあげる必要があるということではないだろうか。
これを通販のクリエイティブに落とすと、ポイントは次の3つ。
① いかにも「年寄り」のデザインはNG。洗練されたおしゃれ感は必須。
シニア世代は「若い」のである。今までのシニアのイメージを少しでも出そうものなら……。むしろ、30-40代の感覚に年齢分の高級感をプラスすべし。
② 文字は大きく、情報を詰め込みすぎない。が、おしゃれ感は保つべし。
気持ちは若いが肉体はそうもいかない。30-40代ではなんなく読めた文字も、確実に読みづらくなっている。シニア世代がストレスを感じない文字サイズ・行間は必須である。かといって、デザインが「年寄り」くさくなっては『私は老人じゃない!』と拒否反応をおこされてしまうので、微妙なバランスで若々しいおしゃれ感は保たなければならない。
③ 悩みを解決する方法を、手取り足取り、懇切丁寧に説明すべし。
今のシニア世代は、若々しくおしゃれでいたいのに、それにはどうすればいいのかという情報に飢えている。これまでのシニアにはない感覚なので、情報自体が少ないのは当たり前である。だからこそ、その情報を補ってあげることが重要。年齢による肌悩みをカバーする方法を指南するなど、シニア世代の悩みにしっかりと寄り添った情報を分かりやすく伝えることが必要なのだ。
言うは易く、行うは難し。ということもあるが、以上の現状とポイントを再度肝に銘じ、激化する化粧品業界の動向も注視しつつ今後の業務にあたりたい。