近年、「パーツケア」が人気を集めている。パーツケアとは、顔や体の特定の部分をケアすること。美容誌では毎年夏が近づくと、背中やヒップなどボディのパーツケア特集が組まれ、秋冬には目元ケア専用の美容液が新発売されるなど、特定の部分をケアする傾向が強まってきている。
近年スキンケアの分野で存在感を増している「目元ケア」。ローラー付き目元美容液「リバイタリフト アイ ロールオン(ロレアル)」、「ジェニフィック アイセラム(ランコム)」など外資系ブランドから次々と目元専用のアイテムが発売されるなど、目元ケアはもはや定番化している。これは目の下のクマや目尻のシワなど、目元のトラブルに悩む人が多いことを反映した結果ではないだろうか。
またボディケアでは、ドラッグストアやバラエティストアを中心に様々なパーツケア商品が販売され、その売上も好調である。「PLAZA GINZA」の2012年5月売上ランキングでは「ヒップや太もものザラつきケア専用スクラブ」が1位、「背中ニキビ対策石けん」が2位に入るなど、やはりパーツケア商品は人気である。目元ケア同様、ボディケアにおいても消費者の悩みが商品のヒットに結び付いている。
一方、メイクにおいてはパーツケアの新たな展開が見られる。昨年頃から、若い女性を中心に下まぶたのふくらんだ部分「涙袋」を強調するメイクが流行している。(涙袋がふっくらしていると瞳が潤んだような印象になり、魅力的に見えるとされている)雑誌で特集が組まれるほか、涙袋メイクのための商品が続々と発売され、ドラッグストアでは「涙袋メイクコーナー」が設置されている店舗まで見られる。これは「涙袋を強調すれば可愛く見える」という全く新たな美の価値基準が生まれた例といえる。
「時短」や「オールインワン」など手軽さへのマインドが高まる一方で、「パーツケア」にも関心が集まるのは、女性の美に対するニーズがより「細分化」しているからではないだろうか。実際、自分の肌や体を全体像で捉えることは難しく、部分的なところばかり気になりがちである。つまり女性の美への欲求は、「きれいになりたい」という漠然としたものではなく「目の下のクマを消したい」「背中をツルツルにしたい」など、ピンポイントで具体的なものなのだ。そのような「細分化されたニーズや悩み」を削り出し、ぴったりと寄り添う商品を開発することが、ヒット商品を生み出す一つの秘訣といえるかもしれない。
(Y.U)