先日、韓国・仁川空港DFSの某オーガニックブランドのカウンターにいたところ、
20代前半と思しき男性がおとずれ「BBクリーム~~~」とBAさんに声をかけた。
わたしは「彼女に頼まれたのかな?」とほほえましくその様子をみていたが、
それは誤解だったようだ。BAさんは、いくつかのBBクリームを彼に紹介し、
男性は自らの肌色にあわせてBBクリームを選んでいた。
その男性は、躊躇したり恥ずかしがったりという様子もなく、
またBAさんが驚くこともなかった(プロですから当然なのだが)。
2018年9月、「THREE」を運営するアクロが
業界初のメンズ総合コスメ「FIVEISM × THREE」をデビューさせた。
ファンデーションやコンシーラー、アイシャドウ、ネイルまでをそろえている。
同ブランドのアイテムは、スティック型なのがポイントだ。
男性の行動心理をから、髭をそる動作でメイクアップできることで、
抵抗感をなくすのが狙いとのことだ。
またすでに9月に韓国で先行発売されていた「CHANEL」初の男性用メイクアップライン
「BOY DE CHANEL」が11月、日本でも発売開始となった。
コンプレックスをナチュラルにカバーしてくれるファンデーション、
リップクリーム、アイブロウペンシルの3種類がラインナップ。
サイトには「自分らしくあるために」というコピーが掲げられている。
メンズのメイクアップ製品の充実を見て、
そしてBOY DE CHANELの「自分らしくあるために」というコピーを目にして、
「私たちは、本来なんのためにスキンケアやメイクをしているのか」ということを考えた。
社会人女性が「メイクアップ」をして装うのは、
最低限の身だしなみ、社会人としてのマナーと考えられている点は無視できない。
もちろんメイクを人生の喜び、楽しみ、趣味と考える人も多いことも分かっている。
しかし、昨今「社会における女性の役割」を描いて
思いがけず炎上したアパレル企業や商業施設のCMをみても
働く女性なら男並みに働くことと、女性を捨てずに「若々しく」「明るく」「かわいらしく」あることの
両方が求められていることへの違和感を隠さずに発信する女性が増えてきたようだ。
「人にどう見られるか」ではなく、「どんな自分でありたいか」。
男性のメイクアップやスキンケアは、よりそこに近いと感じさせられたのだ。
数年前に大流行した「○歳若見え!」というコピーがあった。
「人から」「若く見える」ことは価値があると考える人は多いだろう。
「若さ」そのものは紛れもなく素晴らしいことだが、
少なくとも人が「若くないと価値がない」という考えはあまりにもさみしい。
しかし、日本の美容広告や雑誌のキャッチコピーにはこの手のものが数多く存在する。
コピーを制作するものとしては、「若さ=価値」という方程式が若い世代に刷り込まれ、
価値観をゆがませているのではないかという心配もある。
「自分が」「好きだ」「嬉しい」「楽しい」「気持ちがいい」「清潔でいたい」
「自分らしくいたい」ということこそがスキンケアやメイクアップの原動力だといい。
そして美容は、すべての性別と年齢にふさわしいベネフィットを与えることができると信じている。
それが「美容」の素晴らしさだと思う。
「5歳若く見えること」に価値であることを強調して、
コスメを売る時代はそろそろ終わりを迎えるのではないか。
来年には「それ平成ぽいよ(笑)!」と揶揄されるようになるかもしれない。
(S・K)