コラム
社員コラム2019.9.30(投稿日)
増税対策で問われる企業の真価

 

今年の7月、会社のすぐ近くに大手ピザチェーンの新店舗がオープンした。
「Mサイズが半額以下の600円!」
店前ののぼりにあるキャンペーン訴求が気になって、さっそく同僚と行ってみた。

「ピザが600円で食べられるなんて、テイクアウト限定でしょ…?」と、半信半疑で注文してみると、店内で食べても本当に600円だった。銀座店のオープンは、国内でちょうど600店舗目にあたるらしく、「600店だから600円!」という 記念のキャンペーンだったようだ。

このピザチェーンのブランドコンセプトは、「HUNGRY TO BE BETTER(よくすることにハングリー)」。顧客満足のためのサービス向上や改善には、どん欲に最良を追求するということだろうか。

10月からの軽減税率導入を前に、そのハングリー精神を見たような気がした。

オープンしたばかりの銀座店では、顧客に1秒でも早くピザを届けるために、新しい試みを始めたという。それは、「ランナー」というポジションの新設だ。ピザ屋なのにランナー? 主な業務は、厨房でピザが焼きあがると、バイクに乗ってスタンバイしている配達員のもとまで猛ダッシュ! 荷台にピザを積み込んだら任務完了だ。たったこれだけ。といっては失礼だけど、本当にこれだけらしい。

時間短縮のために、厨房からバイクに運ぶまでの時間を限りなくゼロに近づける作戦だというのだ。これまでも、店舗数を増やし、各店舗が担う配達エリアを狭くすることで徹底したスピード配達を目指してきたという。

それにしても、どの業界でも人材の確保が難しく、AI導入などによる「省人化時代」に、あえて“走るだけ”のスタッフを増員するとは、なんとも強気だと思いませんか? 

明日から始まる軽減税率。飲食業界ではテイクアウト需要が加速し、生き残りをかけた熾烈な競争が始まりそうだ。
そんな中で、「こんがりと焼けた熱々のピザを味わいたい」という、消費者の当たり前のニーズに応えるために、ピザ屋として原点回帰した策で差別化を図ろうとする彼らに学ぶことは多い。

増税前の駆け込み需要を見込んだキャンペーンと、増税後の割引だけではあまりにも芸がない。増税によって消費者財布の紐が固くなるなんて理不尽だと嘆いてもはじまらない。
「価格ではなく価値で売る」ということを、改めて考え直す機会としたい。

(M・A)

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