コラム
「日本流通産業新聞」8月31日号掲載2023.8.31(投稿日)
基礎講座Q&A vol.95 「Q.通販化粧品業界であと何年もつか不安でなりません」

「日本流通産業新聞」 9月4日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.95 「Q.通販化粧品業界であと何年もつか不安でなりません」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

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Q.通販化粧品業界であと何年もつか不安でなりません
 単品通販でやってきた主力商品の売り上げが右肩下がりで回復の兆しが見えません。売上の7割近くを占めているので、当然業績も下がり続けています。広告投資をしても新規獲得が増えるとは思えず、クロスセルも効きません。正直あと何年この業界でやっていけるか不安な毎日です。何か打開策はないものでしょうか。(中堅通販化粧品会社)

A.顧客に寄り添うパーソナルカウンセリングが必要

◆万人受けする化粧品はない

 以前、このコラムで「通販で高級化粧品は売れるのか?」という質問に対し、そのためには店販と同等、もしくはそれ以上の商品価値と情報提供、サービス、イメージ戦略が必要だと回答しました。加えて今回は「パーソナルカウンセリングが必要だ」と伝えたいです。
 化粧品は他社と明確に差別化されたオリジナリティーと、商品にマッチした美容理論が不可欠です。その上でお客さま便益(ベネフィット)に応えていくには、万人受けする化粧品はないはずです。
 お客さまは一人一人、肌状態も異なれば、肌悩みも、なりたい肌も異なるはずです。そんな多くの選択肢の中で「私にぴったりの化粧品だわ」と思える商品こそがお客さまにとって良い商品なので、万人に支持される商品などあり得ないのです。
 そのように考えると、ご相談のように一品だけを訴求する単品通販ビジネスに陰りが見え始めたというのも、ある意味当然といえるのではないでしょうか。
 通販化粧品業界全体で新規獲得が難しくなっている今、単品通販からラインアップを揃えてクロスセル重視に移行したり、さまざまなスペシャルケア商品をリリースするブランドも出てきています。

◆カウンセリング型価値の提供

 化粧品は本来使う人の肌悩みを解消したり、理想の肌を叶えたりするお手入れの手助けをするためのものです。そのためには、一人一人のお客さまの肌に向き合って、どんな商品でどんなお手入れをすることが必要かを提案する販売員の存在が不可欠です。
 これまで百貨店などの対面販売では、個別の「カウンセリング」がサービスとして根付いていました。しかしコロナ禍後、各化粧品メーカーは、スマートフォンのアプリを使ったAIによる肌分析など、高度なIT技術で、店販のカウンセリングに匹敵するようなサービスをオンライン上で提案できるようになりつつあります。
 化粧品販売のカウンセリングとは、まずお客さまの肌状態を把握するために、肌質(乾燥肌・普通肌・脂性肌・混合肌・敏感肌)、肌悩み(目もとの小ジワ・シミ・くすみ・たるみ・乾燥・ゆらぎ・毛穴の開きなど)、肌の特徴(赤ら顔や血色が悪いなど)を診断したり、ヒアリングしたりしながら、そのお客さまの状態にぴったり合う化粧品や生活習慣にマッチしたお手入れ方法をアドバイスことです。
 販売する側が不特定多数のお客さまに向けて一方的に商品を売るのではなく、一人一人のパーソナルに迫った体験型価値を提供することが必要なのです。

◆生き残るための準備

 一人一人のカウンセリングに不可欠なのは、単品通販からの脱却と、目的に合わせたブランド独自の美容メソッドを確立させ、肌悩みに寄り添って課題解決できる商品を用意することと、必要なお手入れ方法を提案できることです。
 当然ながら”単品”だけではそれぞれに異なるお客さまのパーソナルニーズに応えることはできないでしょう。さらに自社の美容メソッドを正しくお客さまに伝えられる人材の育成も必須といえます。しかも販売現場の人材だけでなく全社員の意識と知識レベルを統一することで、カウンセリングにおける接客トークはもちろん、商品開発や広告戦略まで、お客さまに一貫した情報をお届けすることができるのです。
 お客さまに対して曖昧な対応をしたり、スタッフごとにバラバラの見解を示したりすると、いつまでもブランドの価値が定着しないだけでなく、お客さまの信用を失いかねません。
 つまり、これからの化粧品通販で生き残るためには、(1)美容メソッドを確立する(2)カウンセリングができる機器類やツールを用意する(3)カウンセリングできる人材を育てる。(コールセンターや美容相談員)─この3つの準備を進めなければならないと考えます。
 いま、お客さまはさまざまな手段で情報を得られる状態になっています。そのようなお客さま一人一人に合ったアドバイスができるようになるには、今後の化粧品販売にふさわしい事業改革に取り組まなければ、生き残る道はないと考えなければならないでしょう。

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