コラム
「日本流通産業新聞」7月4日号掲載2024.7.12(投稿日)
基礎講座Q&A vol.104 「Q.異業種から化粧品ビジネスに参入したものの…」

「日本流通産業新聞」7月4日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.104 「Q.異業種から化粧品ビジネスに参入したものの…」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

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Q.異業種から化粧品ビジネスに参入したものの…
これまでは異業種でビジネスをしていたのですが、最近化粧品事業を始めることになりました。商品開発までは順調に進んだのですが、いざ販売したところ、新規獲得数・リピート率ともになかなか振るわない結果です。どうすれば良いでしょうか。(中堅通販会社)

A.目的が明確でないビジネスは、お客さまに見透かされる!

 

◆「何のために」を共通認識に

 近年、製薬会社や食品会社、家電量販店などさまざまな業種で成功している企業の、「化粧品ビジネスへの新規参入」が相次いでいます。しかし、苦戦している企業も多いようです。
 その理由の多くは、参入目的が、「企業の都合」優先になってしまっていることにあるような気がします。その結果、お客さまにとっての便益(ベネフィット)が明確でなくなってしまっているのです。
 「何のために」化粧品を扱うのか、目的が不明確なまま、商品開発から販売まで、すべてを、コンサルタントやOEMメーカーに任せっきりにしている例もあるようです。それではどんなビジネスも成功しません。
 また、社長や役員などの幹部クラスにとっては参入目的が明確にあったとしても、それが現場のスタッフ全員に明確に届いていないケースもあるようです。現場は目の前の数値目標ばかりに気を取られ、がむしゃらに達成を目指します。しかし、目標は手段であって目的ではありません。その結果、短期的には業績を上げることができても、上層部が考える、大きな目的やコンセプトと、商品の売り方にズレが発生するといったことが起こりがちです。
 スタッフ全員に「何のためにこの商品を売るのか」を十分に納得させたうえで、進むべき方向性を示し、その目的を果たすための数値目標であることを伝える必要があります。

◆目標と課題を考える

 「何のために」というと、崇高な目的が必要そうに思われるかもしれません。しかし、そんなに大仰なものでなくていいのです。「この世の、自分と同じ肌悩みを持つお客さまたちを救うためのスキンケア」などというものでなくても、「開発した美容成分を世に広めたい」や「自信がある自社ブランドの認知を拡大したい」「失敗したビジネスを立て直したい」などでもいいのです。
 その中に少しだけ「お客さまの何の役に立つのか」=「お客さま便益」の要素が入っていれば、それで十分な目的となります。
 その目的を果たすために立案するもの、これが”目標”になります。例えば、「自社ブランドの認知を拡大したい」という目的には「売上高前年比120%」や「SNSフォロワー数増加」などの目標が出てくるでしょう。目標は、目的が定まって初めて考えられるものです。
 さらにそこから、目標を達成するための課題が浮き彫りになってきます。「売上高前年比120%」であれば、「LTVの向上」や「新規獲得拡大」など。その課題を解決するために、さまざまな施策を打ち出してトライ&エラーを繰り返す。これが通販会社のノウハウを蓄積する上で、あるべき姿ではないでしょうか。

◆思いは、お客さまに伝わる!

 「何のために」という便益が定まれば、ブランドのコンセプトや、企業としてのビジョン・方向性なども明確になります。
 例えば、「敏感肌で悩んできた自分のような方に使ってもらうために」という目的を定めたのなら、コンセプトは「肌へのやさしさにこだわったスキンケア」となり、敏感肌向け・ドクターズコスメのようなブランドになるでしょう。
 そうなるとおのずと、敏感肌でも使えるような、美容成分や植物由来の成分、無添加処方、肌への負担を軽減した使用方法、テクスチャーなど、コンセプトに基づいた商品が開発されるはずです。このようにすれば、商品や美容メソッドと「化粧品に参入した目的」との整合性が保たれます。
 商品のプロモーションでも、目的からブレがないかをチェックする視点が必要です。「何のために」の目的がないプロモーションは、その場限りのことを訴求しているだけに過ぎず、小手先のビジネスになってしまいかねません。
 「何のために」という目的があるうえでの失敗は、起きて当たり前のこと。それに対処することでノウハウが積み重なります。
 そもそもの目的がなければ課題に対応する方法も定まらず、闇雲に進めるしか手段がなくなってしまいます。企業・ブランド・人材、そのすべての成長のため、「何のために」という目的、つまり”錦の御旗”が必要だと思います。
 化粧品は、思いを伝えるビジネス。逆に言えば、思いがない化粧品はお客さまに見透かされてしまいます。全社員が同じ目的に向かう、強い姿勢。その強さがお客さまをも引き付けるのです。

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