コラム
「日本流通産業新聞」8月29日号掲載2024.9.3(投稿日)
基礎講座Q&A vol.106 「Q.マルチチャネル化の波をどう乗り切るか?」

「日本流通産業新聞」 8月29日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.106 「Q.マルチチャネル化の波をどう乗り切るか?」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

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Q.マルチチャネル化の波をどう乗り切るか?

 販売ルートを広げたいと考えています。これまではD2Cらしく、自社のECサイト+ウェブ広告のみで販売してきましたが、なかなか新規獲得も難しいので、店頭販売やショッピングモールへの出店を考えています。(中堅通販会社)

A.「価格ではなく価値で売る」鉄則を守ってマルチチャネル化を!

◆マルチチャネル化は不可欠

 あらゆる企業が販売ルートを広げている中で、自社サイトやウェブ広告のみで販売していてもなかなか認知度は上がらないので、新規獲得は難しいと思います。知名度を上げるためにも、販売ルートを広げることは必要だと思います。
 例えば、大手のショッピングモールに出店する、ビューティーの専門ECへの卸や、リアル店舗への卸を検討しても良いでしょう。そうすることで、少しでもお客さまの目に触れる機会を多くできれば大成功です。
 販売チャンスを増やすだけなら、モールへの出店も、店舗への卸も、歓迎すべきことですが、商品の価値や会社の魅力を知っていただくためには、それだけでは不十分です。

◆自社サイトでブランド力を

 現在のお客さまは、商品を購入するだけなら、お気に入りのモールでも、近くの店舗でも不便はありません。それが単なる受け渡しだけであれば、割引やポイントなど、サービスがあるお店を選ぶことでしょう。
 しかし、化粧品の購入に必要となる、「使い方」や「成分」などの十分な情報は、企画し開発した化粧品会社にこそ、オリジナルの資料があるはずです。
 自社のウェブサイトにはそのような価値ある情報を掲載して、ブランディングの発信源とするべきです。

◆D2Cの価値を守る

 D2C本来の価値は、「モノづくりをした人たちが、直接消費者に届ける」ということなので、ショッピングモールへの出店や、店舗への卸は、本来のビジネススタイルと相いれないかもしれません。しかし、これだけあらゆる業態がEC・通販に参入し、店舗展開も並走しているとなると、頑固にEC・直販だけに頼っていても多くの商品に埋もれてしまいます。なかなか知名度も上がらず、新規獲得も難しいのが現状です。
 そのため、D2Cの基本である「他社にはないブランド価値」は、自社サイトで徹底して発信する方向に切り替えてはいかがでしょうか。つまり、自社サイトは、「モノを売るよりも価値を売る」サイトとして位置付け、ブランディングやPRにまい進するべきではないでしょうか。
 それらの体制を整えた上で、販売ルートのマルチチャネル化を推進するのであれば、ブランディングとしての価値を崩さず、販売の間口を広げるということになるので、お客さまにとっても便利になることは間違いありません。
 その基本方針を曲げずに販売戦略を構築できれば、とても効果的だと思います。

◆不信ネットとは一線を画す

 そんなECの活用方法ですが、最近気になるのは、お客さまがネットの情報を「信用していない」ということです。
 こんなに便利で、生活に根付いているネット情報、スマホ一つでなんでもできる身近なメディアですが、お客さまは精査しながら利用しています。
 当社が毎月のように実施しているグループインタビューでは、多くのお客さまから「信頼できないサイトの情報は見ない」「そのサイトが正しい情報を発信しているかを先に調べる」といった声が相次ぐことが多く、「ネットへの不信」がたいへん大きいことがよく分かります。特に中高年世代はこの傾向が強く、まだまだ旧来のマス広告信奉者が多いようです。

◆信頼される自社サイト発信

 そんな状況の中で、自社サイトはますます発信力の強化が求められるでしょう。そもそもECサイトが信用されていないのならば、徹底的に正しい情報を発信して「信頼される企業」になることがブランディングには不可欠なのかもしれません。
 マス広告でも、ネット上の広告でも、「作られた情報」ではなく、「あるがままの情報」を正直にさらけ出せば、信用されたり、果ては「推し活」してもらえたりすることもあるようです。
 お客さまから「信用される」ためにも各社は、当社が勧める「お客さまを巻き込んだ参加型」を多く取り入れてはどうでしょうか。まじめで真摯(しんし)な取り組みや、運営方法を公開するなどの姿勢を示せば、受け入れられるのではないでしょうか。
 いまや会社は、あらゆる方向からお客さまに見られています。「推し活」を期待するためには、自分たち身内の「愛社精神」も見られています。お客さまにも、社員にも、愛される会社を目指したいものです。

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