アンケートの答えを真摯に取り入れた商品が、必ずしも成果につながらない――。そんな経験をしたことはありませんか?“声”の先にあるものを見落とすと、企画は空回りしてしまうのです。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』1月16日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.60」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
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「声」ではなく、その後ろにある“思い”を読み取る

アンケートの結果をもとにお客さまの声に応えた商品を企画しました。要望に応え、価格を下げてパッケージも変更しましたが、思ったほど売れ行きが伸びません。どうしてなのか、何がいけないのか分かりません。お客さまの意見を取り入れた商品で、成果を得るにはどうすればよいのでしょうか。
お客さまの声を取り入れて商品を企画することは大切です。でも、お客さまの言葉をうのみにしてはいけません。お客さまは、「もっと値段を安く」「サービスを充実して」と主観的に意見を言うだけで、全てを俯瞰でみているわけではありません。
取り入れるべきお客さまの「声」は、言葉ではなくその後ろにある「思い」や「隠れた不満」「なりたい自分の願い」などです。
なぜそういう意見なのか、本当の理由を知ることで、お客さまの深層心理が見えてきます。今回は、定量調査のアンケート結果だけで結論を得ようとしたことに無理があったのではないでしょうか。アンケートの裏に隠れているお客さまの気持ち、理由の裏付けを取る定性調査が必要だったように思います。
調査は「売りたい相手」に絞り込むことが最優先

アンケートを行う場合、大切なのは、サンプル数の多さよりも「売りたい人」を対象に実施することです。通販化粧品の場合、既存客ならばデータが充実しているのですから、年齢層、1回当たりの購入金額などで対象者を容易に絞り込むことができるはずです。アンケートは、「売りたい相手」、つまりターゲット層の絞り込みが最も重要になります。
誰に売りたいのかがあいまいなまま、人数だけで調査するのでは意味がありません。どういう顧客層に買ってもらいたいかというターゲットが明確に設定された上で、その人たちを対象に意見を聞くから意味があるのです。
アンケートの設問設計はできるだけシンプルにします。あまりたくさんの質問項目があると、回答率が下がってしまいます。できれば選択回答形式を中心に設計し、一部、記述回答を入れた場合は、テキストマイニング1などで分析するといいでしょう。
アンケート調査で大まかな傾向をつかんだ後は、対象者の代表に集まってもらうグループインタビューやデプスインタビューで定性調査を行うといいでしょう。
定性調査で「理由」と「本音」を深掘りする

インタビューでは、回答の背景にある「理由」や「本音」を探ります。定量調査では、なぜ価格にこだわるのかが見えません。「もっと値段を安く」ということであれば、それはなぜなのか、定性調査でそこを深掘りしていく。このことで、生活費のレベルや美容費の予算、本当にほしいサービスの内容、使い方の知識、満足/不満足の内容などが詳細に分かるので、解決策を考えることができます。
ただし、インタビューでの質問があまりストレートだと、お客さまが正直に答えてくれないこともあります。見えを張ることもあるでしょう。思いを言葉にできないこともあります。言葉として表面には出てこない心理を探るには、話の進め方にも工夫が必要になります。
さまざまな企画を考えるとき、お客さまの声がヒントになることは多々あります。しかし、その言葉をそのままお客さまの本音であると勘違いして企画を進めてしまうと、本質を見誤ることになりかねません。お客さまの声をきちんと聴いて企画に反映させることは、シンプルなようで、実は非常に難しいことなのです。

鯉渕登志子
私たちフォー・レディーは、アンケート調査だけでなくグループインタビューやデプスインタビューなど、定性調査のノウハウを数多く蓄積しています。お客様の“声”の奥にある“本音”を自然に引き出し、次の戦略づくりに役立てていただける――その点は得意先様からも高くご評価いただいています。
用語解説
- テキストマイニング-アンケートの自由記述回答や口コミなど、文章データをコンピュータで解析する方法。頻出する単語や共起関係を分析し、傾向や特徴を見つけ出す。 ↩︎
















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