お客さまの声を、ただの「対応」で終わらせていませんか?

日々寄せられるお客さまの声1。ときには厳しいご意見やクレームに感じられることもあるかもしれません。けれど、その一言の中には、商品やブランドへの“期待”や“信頼”が隠れています。その声をどう受け止め、どう次につなげるか――。実はそこに、企業の成長を左右する大きなヒントがあるのです。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』4月14日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.80」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝通販化粧品ビジネスを成長させる「宝の山」〟

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お客さまの声を集め、共有し、経営判断に生かす仕組みを

通販化粧品会社 担当者

経営トップから「もっとお客さまの声を聞いて業務に活用するように」という指示があるのですが、正直なところお客さまが連絡をくださるのはクレームがほとんどで、どのように業務に活かしたらよいか分かりません。

通販化粧品のビジネスは、お客さまから寄せられる”さまざまなお声”が全ての基本だと考えてよいと思います。だから多くの声が集まっているブランドは、それだけ将来の可能性が高いビジネスをしていると考えられます。

ある会社では、「すべての経営判断の基準をお客さまのお声にする」と経営者が決めたといいます。そのくらい”お客さまのお声”は重要だということです。

そのため通販化粧品をビジネスにしている会社は、意識してお客さまの声を多く集める方法を考えるとよいでしょう。

お褒めの言葉や感謝の言葉だけではありません。お叱りやクレーム、要望、意見などをお客さまが簡単に発言しやすく、問い合わせしやすい環境をつくるべきです。

各社とも声を集めるはがきを同梱したり、問い合わせ先を案内したりしていますが、これらをもっと気軽に、書きやすくするべきです。

例えば回答しやすい質問を多くしたり、選択式回答にしたり、回答を寄せてくれた場合にはささやかなプレゼントをしたり、方法はいくらでもあります。回答はがきの宛先が社長の名前になっている会社もありますが、それだけ届いた声に対し、真摯に向き合うという姿勢を表しています。

通信販売は対面で接客しているわけではないので、お客さまの声は商品、接客、サービスに対する評価なのです。この声の反応を確認しながら業務改善をする必要があると思います。

声を活かす第一歩。全社で共有し、すぐに改善へつなげる

このようにして集めた声は全社員で共有し、いつでもお客さまの声を確認できるような体制が必要でしょう。また声の内容は項目別に分類してデータ化し、すぐに業務改善に生かしましょう。情報不足や分かりにくい表記などはすぐに改善できるはずです。

お客さまに多くの声を寄せていただくためには、まず注文時のファーストアクセスから一言コメントをいただけるような工夫をすることもよいでしょう。購入理由などを聞いたり書き込んだりしてもらえれば、その後の販促施策にも活用できます。

既存顧客になってもらえたら、「お声募集」を目立つ形でご案内し、どんなことでも声を寄せてほしいという姿勢を見せることです。それでもクレームがある場合は別として、何もないときにわざわざ問い合わせしてくださるお客さまはあまりいません。

そのようなときは、簡単なアンケートを実施してみてはどうでしょう。多少コストはかかりますが、意見を言うことでお客さまに業務に参加していただくのは、とても有意義なことです。なにしろ、お客さま目線の反応がリアルで戻ってくるので、対応不足の課題がたくさん出てきます。

また、直接的なご指摘やご要望でなくても、回答の裏に潜むお客さまの気持ちを読み取ることがとても大切です。一方、アンケートなどを実施した場合は、結果を公表し、対応策についての方針なども公表すべきです。お客さまにお寄せいただいた回答がどのぐらい業務改善に役立ったかということを、感謝の言葉とともにお知らせする必要があります。そうすれば好感度は高まり、次回も協力してもらえるはずです。

アンケートが集まるようになったら、インタビューや座談会、イベントなどにも出ていただけるようになります。通販だから直接お会いしてはいけないという理由はないはずです。直接お会いすることで理解が深まり、その後のLTVが拡大したというお客さまも大勢いらっしゃいます。

“リアルなつながり”が、共感を生み、ブランドを育てる

通信販売はメディアや媒体を通じてお客さまと接するために、どうしても関係性は希薄になりがちです。ただし一度でもリアルな接点がありパーソナルな交流があると、思いが伝わってより親しくなることができます。

また製品や会社のことを深く知ることで理解が深まり、お手入れの励みになったり、お客さまにとっても、会社にとっても本来の目的が達成されることになります。

そしてきれいになった生き生きしたお客さまが増えれば、きっとその姿を見た周りの方々も刺激を受け、美しく生きる共感の心が拡散していくことでしょう。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

お客さまの声を“資産”として活かせば、ブランドはもっと強く、もっと愛される存在になれます。フォー・レディーは、声の集め方から活かし方まで、実践的な仕組みづくりで伴走します。

用語解説

  1. お客さまの声(VOC)-「Voice of Customer(ボイス・オブ・カスタマー)」の略。
    アンケートや問い合わせ、SNSなどを通じて寄せられるお客さまの意見・感想・要望のこと。商品開発や販促、サービス改善など、経営全体の判断材料として活用されます。 ↩︎

深掘りQ&A

集めた声をどう社内に浸透させればいいですか?

声をデータとして蓄積するだけでなく、“感情のあるストーリー”として共有することが大切です。たとえば週1回の朝礼で「今週のお客さまの声」を紹介したり、社内掲示板やイントラに「ありがとうボード」を作って投稿するなど、社員が“生の声”を感じられる仕組みをつくると良いでしょう。経営会議でも、数値報告だけでなく「お客さまの声から見えた課題」を議題にすることで、組織全体が“お客さま起点”の思考に変わっていきます。

声を経営に活かすと、どんな成果が期待できますか?

最も大きいのは、“顧客ロイヤリティの向上”と“新しい商品のヒント”です。多くの通販企業では、お客さまの声をきっかけにリニューアルや新商品が生まれています。また、アンケートや座談会に参加したお客さまは、ブランドへの理解が深まり、その後の定期継続率やLTVが上昇するケースが多く見られます。つまり、“声を聞く”ことは短期の改善だけでなく、長期的に「ファンを育てるCRM活動」そのものなのです。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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