コミュニケーションは社内から。強い通販組織のつくり方とは

新規獲得、リピート育成、商品開発――。どのチームもお客さまのために動いているのに、気づけば連携がうまくいかない。部署ごとにゴールがずれてしまうのは、通販企業によくある悩みです。でも本来、コミュニケーションの起点は“社内”にあるのかもしれません。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』11月3日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.86」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝お客様目線で情報共有し、顧客ロイヤリティを高める〟

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

「お客さま目線」が、チームをつなぐ共通言語になる

通販化粧品会社 担当者

社内組織が縦割りで、うまく情報共有ができていません。新規獲得チームとリピート育成チームの考え方もバラバラで連携が取れていません。どのような仕組みにすればもっと効率的に業務が進むようになるでしょうか。

部門を超えての情報共有がなかなかうまくいかないことは、多くの会社で見受けられます。

特に通販化粧品会社の場合は、商品開発と販売促進、新規獲得とリピート育成など、本来、最も情報共有が不可欠な部門間で、なかなかうまくコントロールできていないことが多いようです。

そのような場合、最初にすべきは、販売データの共有をスピーディーにできるようにすることでしょう。販売データといっても、単純な売り上げデータではありません。日々蓄積される販売データを分析してマーケティングに活用できる分析後の情報のことです。通販の会社はデータ蓄積が毎日行われているので、そのデータから読み取れるお客さまの動向分析を、全部門で見られるようにしておくととても便利だと思います。販売データをもとにした基本の情報分析が共有できれば、部門別の課題も明確になり、効果的な情報共有のための基本がそろうことになります。

「お客さまの声」こそ、最も価値ある情報資産に

次に情報共有したいのはお客さま情報です。販売データだけでなく、日々お客さまから寄せられる要望、クレーム、ご意見、感想などをできるだけデータ化して、誰でも見られる状態にしておくことも必要です。

電話が多く使われている会社は、モニタリングシステムが完備され、誰でもお客さまの「お声」を聞くことができるようになっているようです。今日ではウェブでの問い合わせや書き込みもとても大切な情報なので、書き込みやすいフォーマットにすることはもちろん、内容は社員全員で共有できるようになっているとよいと思います。お客さまからの声は、クレームや要望だけではなく、お喜びの声なども幅広く集めて分類し、情報共有したいものです。そうすることで、社員全員がお客さまをより深く知ることができます。

販売データを知り、お客さまの声を知れば、お客さまの立場でさまざまなことを考えられるようになります。

なぜこういう声が集まったのか、なぜこの製品が売れないのかなど、さまざまなことをお客さまの気持ちで考えることができるようになります。これは大切なことで、「お客さま」という共通のターゲットに向けて目的が明確になるので、社内の部門間の情報共有ももっと進むことになるでしょう。

情報を受け取るお客さまは一人一人なので、社内がバラバラでは、結局連携が取れていないアプローチを受けるお客さまにご迷惑をかけることになると気が付くはずです。お客さまのさまざまな要望に寄り添うためには、社内の情報共有を円滑にする以外にありません。部門を乗り越えてそれに気付いてもらうことが必要です。

形式より“会話”を。ミニ会議が連携を変える

お客さまの情報共有の次は、企画内容の情報共有です。企画立案の仕組みは各社ともまちまちだと思いますが、私がお勧めしたいのは、部門を超えた「ミニ会議」をひんぱんに開くことです。

どの会社でも部門内の企画会議はひんぱんに開いていると思いますが、部門を超えたスタッフとも、小さなアイデア会議をできるようにしたいものです。机の片隅で、あるいはお茶タイムを利用して……重々しい企画会議ではなく、いわば部門を超えた、良い意味でのグチを含めた「本音の言い合い」をすれば課題が明確になります。形式にとらわれず、スピーディーに軽い情報共有ができる、そんな「ミニ雑談会議」をすれば、部門の異なる相手の立場も理解しやすくなります。

これから企業とお客さまはますます円滑なコミュニケーションが必要になります。お客さまのファン化が課題になっている今日では、お客さまとの双方向のコミュニケーションが不可欠で、それがスムーズに行えれば、多くのロイヤルユーザーを育成することができるでしょう。

そのためにはまず、社内のコミュニケーションを円滑にして、お客さまにも受け入れられやすいコミュニケーション力を養う必要があると思います。社内がバラバラでは、お客さまに響くコミュニケーションなどできないはずです。「コミュニケーションは、まず社内から」ではないでしょうか。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

私たちフォー・レディーは、「お客さま視点」を軸に、社内をつなぐコミュニケーション設計をお手伝いしています。部門を超えた一体感が生まれれば、お客さまにも“ひとつのブランド”として伝わる。その仕組みづくりこそが、私たちの得意分野です。

深掘りQ&A

部門ごとに考え方が違い、なかなか“お客さま目線”が一致しません。どうすればよいでしょうか?

お客さまの声を「感情」として共有することが有効です。データや数値ではなく、実際のコメント音声や手書きのお便り、SNSの投稿などを社内で見せ合うと、“お客さまの気持ち”を共通体験として持つことができます。会議冒頭で1件の「お客さまの声」を共有するだけでも、議論の方向性が自然にそろっていきます。

“ミニ会議”をうまく機能させるコツはありますか?

目的を「決定」ではなく「共有」に置くことです。たとえば「最近感じたお客さまの反応」「現場での小さな気づき」を持ち寄るだけでも構いません。会議の議事録を残すより、終わりに“今日の学び”を一言共有し合うほうが定着しやすく、チームの雰囲気も前向きになります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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