読まれる会報誌と、読まれない会報誌。その違いはどこに?

同じようにキャンペーンを紹介し、同じように美容情報を届けていても、手に取ってもらえる会報誌と、そうでないものがあります。両者を分けるのは、デザインでも分量でもない“ある視点”です。今回のコラムは、『日本流通産業新聞4月6日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.90」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

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「きれい」をゴールにしていませんか?――その先を描けるかが鍵

通販化粧品会社 担当者

毎月顧客に向けて会報誌を発行していますが、特集や記事の打ち出し方がマンネリ化して、このままでは費用対効果の面からも、継続発行が見込めません。もっとお客さまに役に立つ、読まれる会員誌を作るにはどうすればよいでしょうか。

毎月、会員情報誌を発行されているとは尊敬に値します。最近では紙媒体を発行する会社が少なくなり、とても残念です。ぜひ継続してほしいと思います。先日、現在発行されている通販化粧品各社の会員情報誌をテーブルに広げて比較してみました。

多くの会社はキャンペーンのお知らせや商品の使い方がメインの記事で、購入に困らないようにカタログページが添えられています。購入履歴の浅いお客さまにはたいへん役に立つのですが、長く購入してくださっているお客さまはよく知った内容なので飽き飽きしてしまいます。

もちろん多くのお客さまは、キャンペーンは見逃したくないので必ずチェックしますし、使い方は必要不可欠な情報です。しかし、毎回同じようなことを繰り返し伝えられると関心がなくなってしまいます。その他、商品の効果効能をアピールする記事や、いかに優れた美容成分が配合されているかなどを長々と解説されたところで、お手入れの前に「勉強させられている」感じになってしまうのではないでしょうか。

正直なところ、通販化粧品各社の情報誌や冊子、DMは会社側から発信したい情報があふれており、お客さまにとっては必要な情報だが、わざわざ見たい、読みたい情報ではありません。もちろんお得な情報やキャンペーンなどは知らせてもらわないと困る情報です。メルマガの開封率も「お得な情報」があると跳ね上がります。

しかし、私はこのままでは、通販化粧品会社の情報発信力は衰えるばかりではないかと心配しています。

売りたい情報より、“知りたい情報”を

記事内容が会社の都合ばかりなのは、発行目的がレスポンス獲得(注文を取る)中心になっているため、どうしても企業目線になってしまうことは仕方がないことだと思います。

まして無料で配布している会員情報誌ならば当然とも言えます。ところがこれが販売目的の有料の雑誌になると、お客さまが欲しい情報を届けなければ雑誌そのものを購入してもらえないので、お客さま目線の情報発信は必須です。これが大きな差になります。

現在人気のシニア向け雑誌「ハルメク」などがその典型です。雑誌が売れて発行部数が増え、並走する通販ビジネスも好調のようです。ハルメクにはシニア女性が知りたいこと、やりたいことがあふれており、具体的な教則本になっているのです。その後から商品が付いてくるイメージなので、自然に受け入れやすいのです。

通販各社の情報誌は最初に商品ありきで、売り込むための情報発信や無理やり納得させようとする印象があり、どうしても拒否反応が出てしまいます。

美しさの先にある、“暮らしの楽しみ”を届けよう

通販化粧品会社の情報提供について、そんな考えを巡らせていると、ある健康食品会社から届いたパンフレットが良いヒントになりました。歩くことに違和感を覚え、ある健康食品の会社から、「歩く」ことをサポートするサプリメントを定期購入し始めました。最初は大量に同梱されてくるパンフレット、冊子類に辟易してしまいました。内容的には成分の解説、他のお客さまの声、サービス案内、クロスセル商品、歩き方まで。まるで懇切丁寧に歩くことを強要されているような印象でした。

ところが最近届いた小冊子はとても好感が持てました。歩くことでどんな楽しみが発見できるかが記事になった小冊子なのです。例えば違う道を歩いてみよう、散歩がてら近くの街を探索しよう、新しいお店や街角に行こう、歩くことで季節の花に出合おう、風景を見つけよう……などなど、つまり歩くことでどんないいことや出合い、発見があるかを提案しているのです。これはどんなにいい成分が入っていると言われるよりよほど効果的です。歩くことによって得られる楽しみがすぐにイメージできるため説得力があるのです。

化粧品ならば、お手入れをして、メークをして、きれいになった自分が、久しぶりに街に出かけたり、観劇や美術館に訪れたり、親しい友人とお食事に出かけたり、他人に褒められたり、とにかく「きれいになった後にどうするか、どうなるか」を提案しているようなものです。

お客さまに、そんな「きれいになった後の自分」をイメージしてもらって、生活の楽しみを提案できれば、情報提供のコンテンツとしては、とても価値があるものだと思います。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

お客さまが“読みたい”と思う情報誌には、商品の先にある暮らしを描くストーリーが必要です。フォー・レディーは会報誌やDMの制作を通じて、「伝える」から「共感される」コンテンツづくりを得意としています。ぜひご相談ください。

深掘りQ&A

そもそも、なぜ会報誌が今も重要なのですか?

 SNSやメールが主流の今でも、「紙で届ける情報」には信頼感や安心感があります。 特に通販化粧品のように“肌に触れる商品”では、お客さまが手に取って読む時間そのものがブランド体験になります。会報誌は「企業とお客さまをつなぐ心の接点」として、いまも高い価値を持っています。

どんな内容なら“読まれる記事”になるのでしょうか?

商品や成分を説明するだけでなく、「お客さまの暮らしや気持ちの変化」に寄り添うことが大切です。たとえば、“きれいになった後の時間”を描くストーリーや、同世代のお客さまの声・体験談を紹介することで共感が生まれます。記事のテーマを「どう役立つか」から「どう気持ちが動くか」へと変えてみてください。

内容がマンネリ化しないようにするには?

企業内で“編集会議”を設け、 企画テーマを「商品」ではなく「お客さまの生活課題」から発想するのがおすすめです。さらに、実際のお客さまに登場してもらう座談会・インタビューを定期的に実施すると、誌面が生き生きとしてリアルになります。フォー・レディーでは、こうした“お客様参加型の企画づくり”もサポートしています。

会報誌づくりを外部に依頼するメリットはありますか?

客観的な第三者視点を取り入れられることです。企業内だけで作ると、どうしても“伝えたい情報”に偏りがち。外部の専門パートナーは、読者の目線で構成を整理し、ブランドの魅力をより自然に伝える企画へ導くことができます。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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