通販化粧品の売上を左右する“社内ファン”づくりの重要性

通販化粧品企業の中には、社員やコールセンタースタッフが自社製品を愛用し、熱意をもってお客様に伝えている会社があります。彼女たちの実感のこもった言葉や肌の変化こそが、信頼を生み出し、ブランドの魅力を伝える力になる。“好き”という気持ちが仕事の原動力となり、組織の空気を変えるのです。社内で製品を体験・共有する文化は、これからの通販化粧品ビジネスにおける最大の競争力になるのではないでしょうか。今回のコラムは、「週刊粧業」1 月29日号に掲載された「激変するコスメマーケット 第37回」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

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社員の愛用品から会社の活気は生まれる

私は通販化粧品会社から仕事を依頼されると、必ずといってよい程コールセンターのスタッフに「自社の化粧品を使っていますか?」と訊ねることにしている。なぜなら、自社製品の愛用者が多いコールセンターほど活気があって売り上げも好調だからだ。中には、「競合の製品を使って比較し、自社製品の特徴を話せるようにしている」「休日にはデパートのカウンターで美容部員さんの接客を研究している」というようなスタッフもいる。

研究熱心なスタッフが多い会社は、コールセンターだけではなく様々な場所で自社製品に触れる機会も多い。たとえば洗面所には自社化粧品のテスターが設置され、食堂には自社のサプリメントが常備され、いつでも試せるようになっている。中には外注先スタッフにも製品を配布して試用を依頼している会社もある。

通販化粧品に必要なのは「伝える力」より「信じる力」

正直なところ通信販売で化粧品を販売するのは、対面販売よりもハンディキャップが多い。対面販売ならばお客様の肌状態を見て確認し、場合によっては機器類で計測し、生活スタイルをお伺いしてから製品を選んでおすすめすることができる。通信販売の場合はその場で見たり、計測したりすることはできない。

そのため販売スタッフには、お客様からヒアリングする力と、製品の特徴をお伝えする力、もちろんDM類などで表現するクリエイティブ力(コピー力、デザイン力)も不可欠だ。そしてそれらの根底にあるのは、製品に対する信頼と自信だ。

社内ファンづくりがブランドの信頼をつくる

長年化粧品の販売促進の仕事に携わってきて感じるのは「知らないものは売れないし、関心のないことは表現できない、好きでないものは情熱をこめて説得できない」ということ。

そう考えるとコールセンターだけではなく、社内のあらゆる部門で自社製品を愛用する社員が多いことは、会社にとって大きな財産である。企業と消費者が「共感1」でつながる時代を迎えて、単なる「仕事だから、業務の役割だから」かかわるのではなく、「好きなもの」にかかわる社員が多いことは、これからの企業にとってとても重要になる。

化粧品のビジネスでは、毎日業務に携わっている女性社員たちが、自社製品をどれだけ使用して綺麗になっているか? ということに会社はもっと関心を持ってもよいのではないか。

女性を綺麗にすることが化粧品会社の使命ならば、一番身近にいる女性たちが、自社の製品を購入し、美容理論と提唱するお手入れ方法を実践して、「綺麗になってもらう」ことができなくては、見ず知らずのお客様を説得することなどできない。

強制的に自腹買いを勧めても意味はない。社員一人ひとりが本音で自社製品に対する評価をもっと言いやすく、納得できる考え方とお手入れ方法を提案できなければいけない。まずは改善策を「身内から」見出し、それを全社員で徹底的に追求していけば、必ず業績がよい方向に回り始めるのではなかろうか。

社員は化粧品メーカーの一員としての自覚が強くなり、日常業務に責任感も出てくるし、自分が改善・改良に携われば、販売トークも生き生きと説得力が増すようになるはずだ。販売施策のテクニックだけが売り上げを拡大するのではない。「思いを売るビジネス」の通販化粧品会社は、社内にいる「自社製品に愛情」という思いを持つ女性たちが一番の「広告塔」であり、何よりも大切な販売戦力だと思う。

お客様は「美容のプロ」として化粧品会社の女性たちやその肌に関心を持って見ているので、彼女たちの生き方も含めて「綺麗にする」努力を惜しまないことが会社側に求められている。その時に今と同じように圧倒的支持で、日本の製品を購入してくれるだろうか?

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

フォー・レディーは、通販ビジネスを「点」で捉えるのではなく、マーケティングの視点を取り入れながら「線」で捉え、お客様調査から顧客育成まで通販事業を一気通貫でサポートすることが最大の特長です。

用語解説

  1. ブランドの“共感”ーお客様が企業や商品に対して「自分と同じ価値観を感じる」「信じられる」と感じること。単なる機能や価格ではなく、理念・想い・体験によって信頼や愛着を生む要素。 ↩︎

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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