スキンケア商品企画に学ぶ“楽しさ”が生む顧客ロイヤルティ

近年、スキンケアを中心とした通販化粧品の市場が拡大を続けています。「なぜ今、通販コスメが選ばれるのか?」──その背景には、単なる時流ではない、着実な戦略と進化がありました。
今回のコラムは、『週刊粧業』 3月14日号に掲載された「激変するコスメマーケット 第2回」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝通販化粧品の強さの秘密〟

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

販売チャネルとして確立された“通販”

通販化粧品の売上が堅調らしい。
大手広告代理店、大広の「通販スキンケア化粧品ユーザー分析調査(2010年)」によると、通販でのスキンケア購入経験者は67.6%に上り、使用している商品を「通販で購入している人」は42%にも達している。

また、通販ユーザーは、非通販ユーザーより1カ月のスキンケア化粧品平均購入金額が805円も高いという分析結果が出ている。さらに、ポーラ文化研究所の「女性の化粧行動・意識に関する実態調査」によると、「もっともよく購入する販売チャネル」は、「インターネットに代表される通信販売」が3年連続で伸びている。

買いたくなる仕掛けはマーケティング×商品力

なぜ、今このように通販化粧品はお客様の支持を得ているのだろうか。
そして伸びている通販化粧品会社は、何が強みなのだろうか。そこで強い化粧品通販会社に見る5点の「強くなった要因」を挙げてみたいと思う。

その1つは、通販化粧品の新規顧客開発はマス媒体を中心とした広告宣伝からスタートしなければならないので、まずは客層を明確に定めなければ、広告を出稿することもできない。

通販化粧品会社は、その研究を怠ると新規顧客開発の力まで弱めてしまうことになるからだ。つまり強い通販化粧品会社は、対象を明確に絞り込んだ「マーケティング戦略」を実施しているということになる。しかも通販は毎日が売上分析に追われる「統計のビジネス」なので、顧客の反応は正確な販売データに裏づけられる。必然的に「マーケティング力」が強くなるというビジネス構造になっているのだ。

2つ目は、スペースや時間の限られた中で、お客様に商品を理解してもらわなければならないため、商品内容もインパクトのある、他社との差別化が明確なものが、目立ちやすいということから、「エッジの立った、他社との差異が明確なもの」が売れるということになる。

さらにいうと通販化粧品会社は、常に会員顧客のニーズをヒアリングし、お客様のニーズに合った商品に改良し続けている。そのため、他社にはない個性的な看板商品を持てるようになる。結論として伸びている通販化粧品会社は、「商品開発力」も強くなるという良いスパイラルを生み出しやすい。

一人ひとりに届く最適な販促でファンを育てる

3つ目を挙げると、「顧客育成力」である。
延びている通販化粧品会社は、リピーター顧客、ひいてはロイヤルユーザーの育成をとても重要視している。顧客一人ひとりの住所や買い物歴を保有しているので、育成ストーリーも作りやすい。自社の顧客育成のゴールデンストーリーを見つけて、パターン化し、もっとも効率のよいロイヤルユーザーの育成を実施している会社はとても強い。そのうえダイレクトな通信手段を持っているのでお客様の声も集めやすく、一人ひとりの顧客と直接的に結び付くこともできる。

ポイントの4点目は「販売促進の企画力」である。一人ひとりのお客様とダイレクトに結び付いているので、販促施策もお客様に応じた内容を設定することができる。これは、小売業として究極の「個別対応ができる」ということなので、販売促進としてはかなり効果的だ。このほか伸びている通販化粧品会社は、毎月・毎週のように、大小の販売施策を実施している。これらを全国規模で一斉にスピーディーにできるので、強い販促施策を実施できるインフラが整っているという訳である。

さらに5点目としては「接客力」である。もともと通信販売は、対面販売できないことが最大の弱点になっていたのだが、最近は、webやコールセンターの対応力が優れた会社が多くなって、コールセンターのオペレーターが肌悩みのカウンセリングをしたり、ホームページで肌診断をしたり、お客様にとって役立つ情報を得ることが、とても簡単になった。また、商品の配送も1日~2日で可能になり、運送会社も丁寧な配送ができるようになった。代金回収についても様々な方法を選択できるようになるなど、とても便利になっている。

成長企業に学ぶ5つの成功要因

1.マーケティング力 2.商品開発力 3.顧客育成力 4.販売促進企画力 5.接客力

このように考えると、伸びている通販化粧品会社は、マーケティング力、商品開発力、顧客育成力、販売促進企画力、接客接遇のサービス力のいずれの業務でも、強いパワーを発揮できる体制を築いていることがわかる。通販化粧品が強くなったのは、単にトレンドとしての追い風だけでなく、ほかの業態でも日常的に進化させなければならない業務を、丹念に強化していった結果だと考えることができる。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

フォー・レディーは、通販ビジネスを「点」で捉えるのではなく、マーケティングの視点を取り入れながら「線」で捉え、お客様調査から顧客育成まで通販事業を一気通貫でサポートすることが最大の特長です。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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