スキンケアやメイクアイテムを購入する決め手に、従来の「ブランド信仰」や「広告のイメージ戦略」だけでは通用しなくなっています。情報に敏感で、自分の価値観に正直な“今どきの女性たち”が選ぶ理由とは?今回のコラムは、『週刊粧業』 1月31日号に掲載された「激変するコスメマーケット 第1回」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。
社員インタビューで見えたリアルなコスメ事情

先日、我が社の社員たちにグループインタビューをした。テーマは、「自腹買いしているお気に入りの化粧品について」。我が社の社員は、主に化粧品の広告や販促物の制作作業を行っている。
会社の方針として「担当する会社の商品を使うこと」をほぼ義務付けているので、表向きは「得意先の化粧品が好き」ということになっているが、今回は「本音で好きな化粧品は何か?」を、30歳前後の社員たちにインタビューをした。
あらかじめ予測はしていたが、ほぼ全員が朝と夜に全お手入れ手順で、自分の好きな化粧品を厳選して使用している。それも全員バラバラ。しかもラインナップで使用している者はほとんどいない。
また友人知人の口コミや@コスメの投稿レビュー、メーカーのHPを調べ尽くして、なおかつサンプル等を手に入れて、自分の肌で効果や使用感を実感してから選んでいる。さらに購入する時には、webあるいは人脈を駆使して、さまざまなセール(キャンペーンやファミリーセール)等を調べ上げ、もっとも安く便利な方法でお目当ての商品を購入している。
化粧品選びに妥協なし!情報収集力と購入術

もちろん職業柄当然だが、メーカーからの一方的なイメージ広告には踊らされない。成分表示もきちんと調べ、競合商品の内容もチェックしたうえで購入している。
我が社の社員たちは、日頃から化粧品に密着した仕事をしているので、仕方がないのかも知れないと思っていたら、「一般企業に勤務してる友だちもみんな同じようなものですよ!」との答え。
つくづく『化粧品の広告は本当にごまかしが効かない。難しいお客様を相手にする時代になった』と、社員の本音トークで、あらためて実感した。
今や女性たちの化粧品に対するブランド意識は、全く変化したといってもよい。とにかく、美容雑誌やwebやその他の媒体を通じて、さまざまな情報が瞬時に手に入る時代になって、次々と新しい情報や商品に触れる機会が多くなり、それを簡単に同世代の消費者と情報共有できる時代になった。
そして、素人が成分表示を読み解き、詳しく効果効能を調べて、価値と価格を厳しく問い始めたのである。もちろん「定価購入」など頭から信じてはいない。
旬のブランドには敏感だが、価値がないと思えば忘れるのも早い。購入チャネルは自分の都合にあった便利さ、価値や特典によって自由に選択している。
モノとしての価値だけでなく、プロダクツとしての使い勝手の良さや美容方法、お客様サービス等の情報も自分の都合に合わせて手に入れている。本当にわがままなお客様の時代になったものだと思う。
スキンケアの基本をどう伝えるか?が販促の課題

また、お客様の購入方法が変わったおかげで、売れる化粧品も変化してきた。
その1つが「インパクト」や「話題性のあるもの」、効果効能を強くアピールできる効果的なキーワード発信ができるものや、より専門性をアピールできる口元、目元など「部位」に特化したもの等とにかく「わかりやすい」「口コミに乗りやすい」ものが売れる。
またわがままなお客様たちには、「これ1つでOK!=オールインワン」等の簡単なものも評価が高い。つまり、使い方は簡単でプロフェッショナルな効果が出るものが売れるということ。そうなるとどうしても、デイリーケアよりスペシャルケアが優先されたり、ある部位だけに特化したものが注目されたり、本来のスキンケアからはやや逸脱したようなものが話題になったりということが起こりがちだ。そのため、お客様自身が毎日きちんとしなければならない
「基本のスキンケア」を伝えていく情報提供の場や、販促の機会が目立たなくなっているような気がしてならない。毎日肌に向き合い、手入れをして「自分の肌に関心を持ってもらうこと」こそが、化粧品の需要を伸ばす基本的な原動力であるし、それをきちんとお客様に伝えることが将来のための、大事な情報提供だと思うのだが、目先の売上に追いかけられていると、ついつい「売らんかな」のための販促に走ってしまう。
そんなことばかり続けていくともしかして、将来のマーケットを小さくしてしまうのではないか?と、自戒を含めて最近ふっと思う。

鯉渕 登志子
私たちは、お客様の声を丁寧に聞き、そこに隠れている“気づき”を発見し、貴社の売上につながる戦略へと組み立てること。それがフォー・レディーの役割だと考えています。女性たちのリアルな感性を軸に、成果の出る仕組みづくりまで、これからも真摯に伴走してまいります
















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