化粧品ビジネスの差別化を生む発信力―顧客に選ばれるための考え方

近年、化粧品市場では、商品や広告の「同質化」が進んでいると言われている。こうした時代に、化粧品メーカーが改めて向き合うべきなのが「情報発信力」。化粧品ビジネスにおける情報発信の役割と、顧客から信頼され、長く選ばれ続けるために必要な考え方とは?今回のコラムは、『週刊粧業』5月7日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.14」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

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化粧品ビジネスで進む「同質化」と情報発信力の低下

最近、『化粧品メーカーの情報発信力』について、改めて考えることが多くなった。

理由は、化粧品ビジネスは本来、女性を「キレイにする」「美しくみせる」という夢を売るビジネスであったはずだが、近年、その情報発信力が薄れたのではないかと感じることが多くなったからだ。

背景のひとつには、様々な異業種からの新規参入が相次いだことによる「化粧品の同質化」が挙げられる。

そもそも化粧品販売会社の多くは、OEMメーカーに製造を委託しているため、どうしても似た処方の商品が多く出回る傾向がある。

同時に、販売促進や広告に関しても広告代理店などに頼ることが多くなりがちである。ましてや化粧品ビジネスに新規参入したばかりの化粧品会社は、道程もそのようなパートナーに頼ることが多くなりがちなのではないだろうか。

そうすると消費者にとっては、商品も広告も似たようなものばかりが溢れているように見えて、「同質化」を招いているように思われる。これでは、消費者に商品選びを迷わせるだけでなく、「化粧品なんてどれも一緒」と、化粧品そのものの価値を著しく低下させることにつながっているのではと思う。

化粧品メーカーにとって本当に大切な2つの視点

では、化粧品メーカーの差別化はどうあるべきなのかを考えてみると、私は化粧品ビジネスにおいて大切なことは大きく2つあると考えている。

一つは「お客様に商品を長く使い続けてもらうこと」。二つ目は、「化粧品メーカーとしてお客様からの信用を得ること」だ。化粧品はそもそも、商品を販売しただけでは完成しない「半完成品1」であり、お客様に商品を使い続けてもらい、「キレイになっていただく」ことで本来の目的を完了する。

だから商品を使い続けてもらうためには、お客様からの信頼を勝ち得ることが大前提だ。

そのためには各企業が他社とは異なる「個性=ブランディング2力」を持つことが必要である。自分たちがどんな理念を持ち、どんなこだわりのもとで商品作りをし、その結果お客様はどんな肌になれるのかを丁寧に伝え、さらには正しい使用方法やお客様の肌悩みに寄り添ったお手入れ方法などを、絶えず情報発信し提案しつづけていくことで、お客様との絆をゆるぎないものへと強めていくことができるのである。

信頼を育てるための情報発信とコンテンツ設計

もちろん、これらの情報を発信し続けていくためにはお客様を飽きさせないための「工夫=コンテンツ開発」も不可欠である。

情報ネタの作り方は、素材や処方、商品コンセプトなどによる「化粧品まわりのネタ」、季節やライフスタイルに合わせた「化粧品の使い方のネタ」、実験や検証データなどによる「エビデンスのネタ」、使用後の感想やお客様座談会、お悩み相談などの「お客様の声のネタ」などなど。

そして、それらを伝える「表現手法」には文章、写真、図・イラスト、データ、Web、紙、動画などがあり、「演出方法」にはレポート、論文、セミナー、座談会、Q&A、アンケート、モニターなどがある。

これらの要素を組み合わせて、絶えず飽きさせない情報を提供していくことで、お客様はいつも新鮮な気持ちで情報を受け取り、キレイになる意欲を持ち続け、化粧品を使い続けてくれるのだ。

化粧品メーカーの使命は、単に化粧品を「物」として販売するだけではなく、女性の美しさを導き出すサポートのための情報発信力にあるのだと思う。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

フォー・レディーは、企業様が「何を伝え、どう伝え続けるか」を整理するところから、取り組ませていただいています。商品や施策を増やす前に、まずはお客様に届けるべき価値やメッセージを言語化する。その積み重ねが、信頼され、選ばれ続けるブランドづくりにつながると考えています。

用語解説

  1. 半完成品-化粧品は使い続けることで価値が完成する商品であり、情報発信や使い方提案が重要となる。 ↩︎
  2. ブランディング-理念や姿勢、情報発信の積み重ねによって形成される企業の個性や信頼。 ↩︎

深掘りQ&A

情報発信を強化すると、売り込みが強くなってしまいませんか?

情報発信=売り込み、ではありません。むしろ本来の情報発信とは、「売る前に信頼を育てる行為」です。商品の良さを一方的に伝えるのではなく、お客様が自分の肌や生活を理解し、納得して選べる材料を提供することが、結果として長く使い続けてもらうことにつながります。

情報発信はどのくらいの頻度で続けるべきなのでしょうか?

頻度よりも大切なのは「一貫性」です。毎回新しいことを言おうとする必要はありません。同じ考え方や価値観を、季節やテーマ、切り口を変えながら繰り返し伝えていくことで、お客様の中に少しずつ理解と信頼が積み重なっていきます。

情報発信にそこまで力を入れる余裕がない企業はどう考えればいいですか?

最初から多くのことをやる必要はありません。まずは、「自分たちは何を大切にしているメーカーなのか」「お客様にどんな存在でありたいのか」を整理することから始めるだけでも十分です。情報発信は、その延長線上で少しずつ形にしていくものです。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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