通販化粧品の新ブランド立ち上げ—「作ったあと」に差がつく理由

ここ数年、通販化粧品市場への新規参入は一気に増加したが、同時に「立ち上げたものの伸び悩んでいる」という声も多く聞かれるようになった。製品やパッケージに問題があるわけではないのに、なぜ売上が伸びないのかについて深堀りする。今回のコラムは、『週刊粧業』10月30日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.17」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝通販化粧品が売れない根深い理由

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

通販化粧品市場は成熟期へ

ここ数年、雨後の筍のごとく増えた通販化粧品への新規参入も、ようやくひと段落した。既存の販売ルートがなくても参入が可能なだけに、他業種大手から小さなメーカーまで、実に多種多様な分野からの参入があり、通販化粧品は今や飽和状態だ。マーケットは本格的な成熟期に突入し、「本物」だけが生き残るサバイバル時代が始まりつつある。

そんな中、せっかく立ち上げたブランドが伸び悩み、業績低迷に苦しむ声を聞く機会が増えてきたように思う。

活気あふれる勝ち組の通販化粧品業界に参入したのに……。低迷に悩むブランドの多くがそう感じているだろう。パワーと勢いに満ちた立ち上げ作業が終わり、製品が完成して世に出した瞬間、「やりきった!」という満足感を味わったものの、デビュー後の低迷は思いがけないことで、驚き落胆しているという話はとても多い。

伸び悩んでいるという化粧品を実際に試用してみると、中身は決して悪くない。パッケージデザインもきちんとしており、製品としては何ら問題がない。ではいったい何が悪いのか。いくつかの企業の例を見て、共通の問題点があることに気づいた。

問題は製品ではなく「売る体制」にある

伸び悩みの原因は、製品そのものに問題があるわけではなく、「商品を売る体制」ができていないことだ。

製品が出来上がったことで満足してしまい、売るための戦略ができていない。「既存の販売ルートはいらない」とは言っても、通販化粧品ならば、「通販」という販売方法と、「化粧品」の販売という二つの課題をクリアする必要がある。

まず、2つの「商売」のセオリーに沿った販売戦略を立案し、その上で自社のオリジナリティーや参入目的に応じた条件をプラスした戦略を実施していくべきだと思う。

つまり製品開発やブランドの立ち上げは「ゴール」ではなく、スタートラインに立つための準備が整ったということなのである。

勝ち組通販化粧品会社に共通する実行フローとは

多数のブランドが林立する今の化粧品業界は、製品力さえあれば売れるほど甘くはない。製品力と販促力はビジネスの両輪で、どちらか一方でも欠ければ成功しない。

開発した製品をどう売っていくのか、明確な販売のビジョンを持ちそれを実行していくパワーがなければ、すでに始まっているサバイバル時代を勝ち残ることはできないと思う。

「新規顧客開発」から「ロイヤル顧客育成1」までのフローがしっかり実行できる勝ち組の通販化粧品会社になるためには、商品開発、販促企画、顧客分析、フルフィルメントなど、重要なビジネスポイントで確実に実績をあげなければならない。

それらがすべて連携し、きちんと回るようになって初めて、新ブランド立ち上げプロジェクトは軌道に乗ったといえる。

付け加えるなら、このプロジェクトに「完了」はない。時代とともに変わっていくお客様のニーズを的確にとらえて、製品・サービスともにブラッシュアップを続けていかなければならない。

ブランド立ち上げに満足してしまうことなく、ぜひ「進化」を続けていってほしいと思う。それが成功への道だと思う。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

フォー・レディーは、通販化粧品事業において新規獲得からロイヤル顧客育成までを一つの流れとして設計する支援を行っています。ブランド立ち上げ後の伸び悩みや、「次の一手」をどう描くべきか迷ったとき、事業を俯瞰して整理するところからお手伝いしています。

用語解説

  1. ロイヤル顧客育成―単に購入回数が多い顧客を指すのではなく、ブランドや商品に共感し、長期的に関係を築いていく顧客を育てる考え方。継続購入、口コミ、ブランド支持などを通じて、事業の安定成長を支える存在。 ↩︎

深掘りQ&A

ブランド立ち上げ直後に、最初に整えるべき「売る体制」とは何ですか?

広告や販促ツールより先に、「誰に、何を、どの順番で伝えていくのか」という顧客との関係設計を明確にすることです。多くの企業は、広告表現、LPやパッケージから着手しがちですが、それらは本来、関係づくりの設計が決まってから考えるものです。立ち上げ直後ほど、「初回購入のあと、顧客はどんな不安を感じるか」「どのタイミングで信頼が深まるか」といった視点が重要になります。

ブランド立ち上げ後に「うまくいっていない」と気づくサインはありますか?

売上数字よりも、次のような状態が続いている場合は注意が必要です。

  • お客様の声が、社内で十分に共有されていない
  • 販促施策が「点」で終わっている
  • 次に何を改善すべきか、感覚論になっている

これらは、商品・販促・顧客対応が連携していないサインでもあります。早い段階で立ち止まり、全体を整理することで、軌道修正がしやすくなります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

BACK TO INDEX