化粧品の商品開発は、もはや作り手の想いだけで完結するものではない。情報がオープンになり、個人が自由に意見を発信できる今、消費者は「選ぶ側」から「参加する側」へと確実に変化している。参加型社会の流れを背景に、化粧品業界における顧客参加型の商品開発の可能性を考える。今回のコラムは、『週刊粧業』1月12日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.19」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。
参加型社会が当たり前になった時代と、企業に求められる姿勢

最近ニュースで、香港の学生たちが道路に座り込み、反政府デモをしているのを見た。座り込みは何か月も続いたようだ。抗議活動家たちはインターネットを利用して、多くの参加者を動員させたとのこと。
世の中はつくづく「参加型」の社会になったと感じる。政府や企業の情報はインターネット上でつぶさに閲覧できるし、ブログやSNSを利用して個人が意見を発信することはもちろん、ネット上で議論をし、同志とつながり、具体的な行動も起こす。
企業活動も例外ではなく、情報はいつの間にか漏れているし、いったん世間からの逆風が吹けば、立て直すのに膨大な時間とコストがかかる。どうせ隠していてもわかってしまうのなら、いっそ企業側からうまく情報を公開して、消費者と一緒に商品を作り上げていくほうがはるかに成功するように思う。
ある自動車メーカーでは、ホームページ上で新製品の開発状況を公開したり、ファン限定の発売前試乗会を開催して意見を募ったり、ファン同士が交流できる掲示板を提供したりしていた。ホームページの更新をチェックしていた人たちは、発売が近づくにつれ思い入れが強くなり、受注数は目標の数倍にもなったそうだ。このように消費者を巻き込んで味方にすれば、ものすごい大きなパワーを発揮できる。
参加型社会の中で、化粧品の商品開発はどう変わるべきか

化粧品業界でも、商品の新発売やリニューアルが頻繁に行われる。化粧品はお客様に使ってもらって初めて価値が出る商品なので、商品の改良はとても重要だ。しかし、新商品開発やリニューアルにお客様の声は十分に反映できているだろうか。作り手側が勝手にターゲットのお客様を思い描き、成分や処方を変えただけというのでは、本当にお客様の心の内側にある潜在ニーズ1に寄り添うような商品開発はできないと思う。
我々がまず行うべきことは、変化しつつある「女性を取り巻く環境や生き方」を徹底的に研究して、商品の企画段階からお客様の意見を取り入れることだ。
お客様のセグメントはますます細分化せざるを得なくなっている。一人ひとり肌の状態が違うのはもちろん、季節感も四季だけでなくさらに細かく分けられる。化粧品の使い方と密接な関係がある一人ひとりの社会的立場、収入や時間のゆとりなど、生活状況も様々だ。商品コンセプトの礎となる「どんな女性になりたいか、見せたいか」という将来の人生ビジョンや自分の演出方法にいたってはそれこそ千差万別だ。
しかし、そこに共通するのは「私に合った化粧品を使いたい」という思いだ。細分化されているからこそ、「私に合っている」「私のブランド」という気持ちが大切。そうだとすれば、お客様が商品開発に参加できる仕組みを作ることは、さらに愛着が増し、ブランドの成功につながるのではないか。
お客様参加型の商品開発が、ブランドの愛着と成長を生む

弊社は化粧品の開発をお手伝いする機会も多いが、なかなか徹底してお客様の声を取り込む仕組みができていないのが現状だ。
例えば、商品開発のプロセスを見せられる部分だけ公開して、消費者も意見を言える部分を作ることも有効だし、工場の一部を見学できるようにするのも一つの手だ。顧客を獲得する手段の「モニター募集」ではなく、本当の「お客様参加型2」にして協力を仰ぐ時代に来ていると思う。
お客様が商品開発に参加することで商品に対する思い入れやブランドに対する愛着が育ち、ブランド自体も育っていく。そんな気持ちで商品開発に取り組みたいものである。

鯉渕 登志子
商品開発がうまくいかない理由は、技術や成分ではなく、お客様の声が企画に届いていないことかもしれません。フォー・レディーは、その整理から伴走します。
用語解説
- 潜在ニーズ―お客様自身も言葉にできていない、本音や期待、違和感のこと。 ↩︎
- お客様参加型―今回のコラムの場合、企業が一方的に商品をつくるのではなく、企画・検討段階からお客様の意見や視点を取り入れ、ともに商品を育てていく開発の考え方。 ↩︎

















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