スペックでは売れない時代へ―化粧品販売は「目的」から考える

どんなに優れた成分やデータを並べても、化粧品は思うように売れない──。その背景には、「商品説明」から始まる販売スタイルそのものの限界があるのではないでしょうか。本コラムでは、コンサルティングセールスの考え方をもとに、スペックではなく“目的”から提案することが、なぜリピートや継続につながるのかを掘り下げます。『週刊粧業』1月26日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.71」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝 化粧品の売り方を変える「なりたい自分」の正体〟

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スペックでは動かない理由

コンサルティングセールスを基本にしている機器類会社の販売員と話をしたところ、「私は最初に商品のお話はしません。お客さまが何をしたいのか、もともと何がしたかったのか目的から伺って、何をすべきかに落とし込み、最後に商品のお話をします」とのこと。その方がお客さまも「あきらめずに商品を使用してくれて、リピート購入もしてくれる」らしい。確かに自分の買い物行動を振り返ってみても、どんなに良い商品だとデータやスペックを連呼されても、「ああ、そうなの」程度の反応しかできず、たいていは「私には関係ない」と考えて、購入には至らない。

化粧品販売に必要なのは「なりたい自分」のストーリー

ところが「いつまでも若々しくしていたいでしょう」や「同世代からうらやましがられることは、うれしいですよね」とか「孫や子供の世代から褒められて、尊敬されますよ」とか、「すっきりとした体形で、動きも若々しくなりますよ」など、様々な私の欲求を刺激されると、ついつい「もしかして」と思ってしまう。つまり美容もダイエットも、それを成し遂げられた時のイメージや夢を描くことが、具体的なアクションの動機付けには、大きく役に立つのではないかと思う。

化粧品販売も、「どんな目的で」「どのようになりたいか」「そのためにどんな商品で、どんなお手入れ」をするべきかのストーリーをもっと明確にして販売する必要があるのではないか? 商品の効果効能を表示するスペックよりも、適切な使い方を伝達するよりも、まずは「何の目的で、どうなりたいか?」をつかんでいただく必要がある。それがコンサルティングセールスのプロが言う「何がしたいのか、目的から紐解く」ということなのだ。これこそ小売業の醍醐味であり、販売者の喜びではないかと思う。

モデルパターンが行動を定着させる

マーケティングの基礎を学んでいた若い時代に、『マズローの欲求階層説』を教えられたが、今まさに「生理的欲求」や「安全の欲求」が満たされつつある中で、「自我の欲求」や「自己実現の欲求」など、より高度で、人の心の中まで入り込んだ欲求が大事になると、従来の仕組みでは、細分化されたニーズには応えられない。

美容についても商品を薦める前に、あるいは使用を促す前に、「何をしたいか」心の奥底にある「私はどうなりたいか」を紐解いて、その目的をかなえる手段としてお手入れや提案商品があるのではないか。つまりお客さまに商品を販売するためには、「なりたい自分をイメージできるような」モデルパターンを示す必要がある。それは仮想の作りものではなく、リアルな状況を示すような生きたモデルパターンでなくてはならない。通販化粧品のインフォマーシャルでも反応率が良いのは、想定客層より少し若々しく、生き生きしたトータルのライフスタイルが垣間見えるような人に登場してもらうと、レスポンス率が良い傾向がある。紙媒体でも本当の顧客で、生き生きとして生活を楽しんでいる人に登場してもらうと同様の結果が出るようだ。

人は目的を明確にして、自分の望む方向性が決まれば、何かのアクションをスタートさせ、おおよそ3週間実行すると、行動が定着するという理論もあるようだ。それならばまず、化粧品のスペックで訴求するではなく、「こんな女性の生き方をしませんか?」と人生の歩み方や理想のライフスタイルなどで説得して、美容へのチャレンジを始めてもらった方が良いのではないか? そうすることによって単に商品の効果効能だけではなく、「素敵な生活を楽しむための化粧品」ということになれば、パートナーとしての化粧品の価値も上がると思う。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

フォー・レディーは、化粧品を「何を売るか」ではなく「どうなりたいか」から考える会社です。スペックではなく目的を共有することで、化粧品が“続く存在”になる仕組みを支援しています。

深掘りQ&A

なぜ「スペック訴求」だけでは売れにくくなっているのですか?

成分やデータ、効果効能といったスペック情報は、比較材料にはなりますが、「自分に関係があるかどうか」を判断する決め手にはなりにくいからです。人は商品そのものよりも、「それを使った結果、どうなれるのか」という未来のイメージに動機づけられて行動します。

モデルパターンは、なぜ“リアル”である必要があるのですか?

作られた理想像では、「自分には無理」と感じられてしまうからです。実在する顧客や、少し先の未来を感じさせる人物像のほうが、自分ごととして想像しやすく、行動につながりやすいのです。

この考え方は、通販やCRMにも活かせますか?

むしろ通販やCRMこそ、「目的の共有」が成果を左右する分野です。初回購入で終わらせず、「この化粧品と一緒に、どんな生活を続けていくのか」を伝え続けることで、商品は単なる消耗品ではなく、生活の一部になっていきます。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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