シニア化粧品がズレてしまう理由とは何か?

日本では近い将来、「超高齢社会」を迎えます。そのため、シニア層に向けた化粧品市場は今後ますます重要なマーケットになっていくでしょう。しかし実際には、シニア向け化粧品を企画・販売する際に、「本当にシニアの気持ちや美容習慣を理解できているのか?」と疑問に感じるケースも少なくありません。今回のコラムは、『週刊粧業』2022年5月16日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.74」です。ぜひご覧ください。

※本コラムは2022年当時の状況を前提に執筆しております。現在と異なる情報を含む可能性がありますが、課題の捉え方や発想のヒントとしてご活用いただければ幸いです。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝 シニア層に化粧品を売る前に〟

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シニア化粧品市場の拡大と違和感のある商品づくり

近い将来、日本人は3人に1人が65歳以上1になるようだ。そのためシニア層に化粧品を売ることは、とても重要なビジネスになる。先輩シニアがたくさんいるので、65歳以上になってもなかなか老け込むことができない。いつまでも若々しく見せないといけなくなってくるからだ。

実際、通販化粧品のビジネスに関わっていると本当にシニアマーケットが活況を呈していることがよくわかる。新聞広告やテレビのインフォマーシャルで化粧品を購入してくれるお客様は、ほとんどが70歳代。60歳代はまだ「若い方だ」と思えるくらいだ。そしてシニア向け化粧品をよく見てみると、「えっ!」と思うようなことも多い。一番驚くのは、凝ったネーミングのアイテム。「若い頃はそんなアイテムはなかったけどなあ~」と、思ってしまう。シニア層にそうした違和感を抱かせない工夫は必要だと思う。

私は常々、シニア層に化粧を売る時は、まずシニア層が自ら商品開発や販売促進に参加することが大切だと思っているが、各社とも今の組織体制ではなかなかそうはいかない。若い世代が企画しても、的外れな結果にならないために、まずは現在のシニア層のニーズをきちんと理解する必要がある。

シニア層の“いま”を理解することが第一歩

その1つ目のポイントは、シニア層の“いま”を知ることだ。シニア層の肌悩みといえば、シワやたるみ、老け顔。このシニア特有の肌悩みから脱し、若々しくありたいと願う人がとても多い。こうしたニーズの背景には「いつまでも元気な姿で社会に参加したい」という願望があることを知って欲しい。

2つ目のポイントは、「若々しくしていたいが、そのためのお手入れの方法を知らない」ということだ。若い頃に習ったスキンケアやメーキャップの方法を長年続け、今の年齢に合ったお手入れや化粧方法があることすら知らない。つまりシニア層は若い頃に学んだ美容情報が更新されていないのだ。

そのためシニア層の“いま”を知るだけでは、本当に理解しているとは言えない。彼女たちの美容習慣を知るためにも、シニア層の“昔”の美容経験を知ること、美容体験の歴史を同じ目線でたどることも大切だ。例えば、現在では当然のUV対策も、彼女たちの若いころは肌を焼くことが流行した世代。「日焼け」はオシャレの一環として推奨されていたのだ。化粧用具も今ほど発達していないのはもちろん、メークアイテムももっと少なかった時代である。現在の美容情報を取り入れていないシニア層が多い中で、「何を知っていて、何を知らないのか」を把握するためにも、こうした美容経験を若い社員が把握しておくことも大切だ。

シニア化粧品は「簡単・正しい使い方・共感」が鍵

そんな肌悩みが多いシニア層でも、アンケートでは「お手入れは簡単な方が良い」と答える。「難しいのは面倒くさい」、「若い人のようにたくさん手間ひまを掛けたメークはできない」という返事が返ってくる。シニア層も元気で忙しいために「簡単」「スピーディー」に仕上がるものが好まれるようだ。そのためメーカーが推奨する使用量、使用手順を無視して慣れた自己流お手入れをしてしまう人も多い。化粧品は正しく使ってもらって初めて効果や価値を発揮する。「正しい使い方」をお客様にしっかりと伝えることも大切なことだ。

また情報伝達は、店舗とイベントの対面の場合、テレビや紙媒体など情報の場合と、それぞれのコツを押さえながら組み合わせることも必要だ。そのうえで、シニア層に寄り添い、悩みに「共感」を示せば、それはやがて「ファン化」へとつながっていく。

大切なのは、「正しい方法を続ければ必ず結果が出せる」ことを伝えること。美容インストラクターとして、それぞれの個性に合わせて、励まし、あきらめずに伴走していく姿勢が理想的だと思う。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

シニア層の気持ちを理解する第一歩として、実際のお客様の声を聞くグループインタビュー2を実施してみてはいかがでしょうか。フォー・レディーでは、消費者の本音を活かしたマーケティングで、通販化粧品企業の顧客育成をサポートしています。

用語解説

  1. 2026年現在、日本の高齢化は新たな局面を迎えています。いわゆる団塊の世代(1947〜49年生まれ)がすべて75歳以上となり、後期高齢者人口は過去最大規模に達しています。これに伴い、医療・介護ニーズの増大など、社会保障への影響が一層顕在化しています。
    一方で、65歳以上の人口は大きな増加局面を越え、横ばい傾向にありますが、総人口の減少が進んでいるため、高齢化率(総人口に占める割合)は引き続き上昇しています。
    こうした背景から、シニア層、とりわけ後期高齢者を含めた多様な価値観やライフスタイルへの対応が、これまで以上に重要になっています。 ↩︎
  2. グループインタビュー
    グループインタビューとは、複数の消費者を集めて座談会形式で意見や体験を聞く調査手法のことです。アンケートでは見えにくい本音や生活習慣、商品への感じ方などを深く理解できます。 ↩︎

深掘りQ&A

シニア層ほど「高機能」な化粧品を求めているのでしょうか?

必ずしもそうとは限りません。シニア層は「若返り」や「エイジングケア」への関心は高いものの、それ以上に重視しているのは「使いやすさ」や「続けやすさ」です。複雑なステップや高機能すぎる商品は、かえって負担に感じられることもあり、「簡単に効果が実感できること」が選ばれるポイントになります。

なぜ若い世代が企画したシニア向け商品はズレてしまうのでしょうか?

大きな理由は「美容体験の前提」が異なるためです。シニア層は若い頃の美容常識をベースにしている一方で、企画側は最新の美容情報を前提に考えています。このギャップにより、「当たり前」が共有されておらず、結果として違和感のある商品や表現が生まれてしまいます。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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