通販化粧品の「真冬」時代を乗り切るブランド力強化とは

通販化粧品はいま、かつてない変化と競争に直面しています。新規参入の増加や販売チャネルの多様化により、これまでの新規獲得中心の戦略では通用しなくなってきています。顧客の「数」で勝負するのではなく、これからは「質」を重視し、LTV1最大化を目指すのが得策といえるでしょう。通販で培ったデータ活用力に加え、顧客との接点を増やすコミュニケーション施策を強化し、共感を呼びブランドへの愛着を育てる取り組みが不可欠といえます。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』1月18日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.99」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ「“真冬時代”を乗り切るブランド強化策」

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

急激な変化を見極め、臨機応変に対応する戦術と体力を

通販化粧品会社
広告宣伝担当者

コロナ禍をうまく乗り切れたと思い、一気に巻き返しを図ろうと考えていたのですが、予想に反して新規客が一向に伸びません。広告宣伝費で予算がひっ迫し、このまま成果に結びつかなければ今期の赤字は避けられない状態です。オファーが悪いのか、商品が悪いのか、対策すべきことの正解がわからず途方に暮れています。

私は40年以上この業界にたずさわっておりますが、最近実感するのは通販化粧品にとって今はこれまでで一番厳しい「真冬」の時代ということです。それでも、これからの成長を見据えて現状を乗り切るための戦術と体力を身につけなければなりません。そのためには、いま起きている急激な変化の内容を分析し、対応策を考えましょう。

まず一つ目は、消費者と市場環境の変化です。二つ目は売り場環境の変化、三つ目は通販化粧品業界そのものの変化、四つ目は販売業態間の競争の変化、五つ目は世の中のおおきな潮流の変化です。

化粧品通販各社はスキンケアが主力商品の会社が多く、コロナ禍の初期は、堅調に推移したようです。一方、閉店を余儀なくされた店販や訪販の化粧品会社は、対応策としてオンラインを活用したカウンセリングやイベントなど、非対面のサービスを開始し、本格的に通販事業にまで乗り出すようになりました。

そして、ウィズコロナ時代となった今日では、店販と訪販の各社は、本業+通販の二刀流のビジネススタイルが定着しています。そのため化粧品通販市場は玉石混交のブランドがひしめき合っているというのが現状と言えます。

新規獲得至上主義からの脱却! “数より質”を求めてLTVアップを

そんな激戦の化粧品市場で生き残るためには、既存の通販事業会社こそ店販や訪販の強み、例えば五感に訴える顧客体験型の販売戦略や美容部員の優れた提案力、パーソナルなサービスを取り入れるべきでしょう。

そこに通販企業の得意分野であるデータベース・マーケティングを加えることで、マルチチャネル化2した化粧品販売の「売り場」の変化に対応できるのではないでしょうか。

次は、業界の変化です。これまで、通販化粧品会社にとって顧客を増やすことが業績アップのセオリーでした。ところが、前述のとおり多くの企業が化粧品通販市場に参入してレッドオーシャン化した現在は、顧客獲得単価が高騰し新規獲得が非常に厳しい時代になっています。しかも、新規獲得してもすぐに離脱される現状では多額の広告費を投資しても、回収するまでには長い時間がかかります。そのため、この業界の変化に対応するためには顧客育成の考え方を切り替える必要があります。いつまでも新規獲得で業績を伸ばしてきた過去の成功体験にしがみつくのではなく、一人一人のお客さまの購入金額をいかに上げるか、LTVを重視すべきなのです。

つまり、これからの通販化粧品事業の成長において要となるのは、顧客の数より質。そのためには、品揃えや販売手法も変化させていく必要があるのです。

コミュニケーションを増やし、「共感」を生み「愛着」を育てる

LTVアップのためには、より多くの商品をより長く使っていただけるロイヤル客を育てなければなりません。そのためには、高い商品力とサービス力が欠かせません。しかしそれだけでは十分とは言えません。

店販や訪販から参入してきたブランドは、通販にはない「対話力」を武器に売上を伸ばしてきた業態です。この新たな競合を相手に通販ブランドが戦うには、オンラインカウンセリングなどお客さま一人一人の嗜好やニーズに応えるパーソナライゼーション3を推進することが、顧客満足度を高めロイヤル化へつなげるポイントです。

店販や訪販のような個人プレーとは違い、組織的な販売力で成長してきた通販が、コミュニケーションスキルをアップすれば、全体を底上げする力になり得ます。

そして最後は、「世の中」の変化への対応です。インターネット時代になり、顧客とのコミュニケーションでもっとも大切なのは「共感」を得ることです。

お客さまが主役の時代にマッチした商品でなければ売れない4C(顧客価値・顧客コスト・利便性・コミュニケーション)時代の現在は、コミュニケーション(共感)にプラスして、いかにブランドや商品に対して「愛着」を抱いてもらうかが、成長の鍵を握ると思います。

これらの五つの変化を敏感に察知し対応することができれば、必ずいまの状況を乗り越えることができると思います。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

フォー・レディーでは、貴社の課題やお困りごとに寄り添いながら、お客さまの「共感」を得るブランディングや、「愛着」を育むロイヤル化施策などをご提案し、実務に即したトータルサポートをさせていただきます。

用語解説

  1. LTV(顧客生涯価値)―商顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益の総額。 ↩︎
  2. マルチチャネル化―複数の販売・接点手段を連携させて提供する仕組み。 ↩︎
  3. パーソナライゼーション―顧客一人ひとりに合わせてサービスや情報を最適化すること。 ↩︎

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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