「美容は女性のもの」という価値観が変わり始めています。背景には、“若々しさ”や“清潔感”が仕事や人間関係にも影響する時代の変化があります。美容ビギナー男性のリアルな心理を通して、メンズスキンケア1市場拡大の背景と、“続けられる商品設計”の重要性について考察します。今回のコラムは、『週刊粧業』2026年4月27日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.117」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。
「美容は女性だけのもの」ではなくなった男性たちの意識変化

先日久しぶりに会った甥が「美容医療2でシミ取りをした」という報告をしてきた。年齢は50歳。仕事はお堅い銀行員。普段は美容に特別関心があるわけでもない彼が突然「美容医療!」と言うので、私は大変驚いた。しかも、いつも「シミシミ」と化粧品を探し回っている奥さんよりも早く……。
そもそも普段からスキンケアなどお手入れを全くしていなかったのでは…と気になったので「なぜ?」と尋ねたところ、「気になっていたから、ちょっとやってみようかと思って」という軽いノリの返事が返ってきた。
メンズスキンケアやメンズメイクなどの男性用化粧品は、ジェンダーレス意識の高まりにも後押しされ、ここ数年でより勢いを増してきている。あるリサーチ会社の調査では2024年男性化粧品の市場規模は堅調な拡大を見せ、2019年から比較して約1.8倍に伸長しているという。下は20代から上は70代まで、年代による凹凸もなく売上を伸ばしているようだ。スキンケアを始めたきっかけは年代によって差があるようだが、その中でも「自分磨きの一環」「年齢を重ね、肌のケアに関心が高まった」等の“他者から見た自分への意識”が色濃く出た回答が高い割合を示していた。
確かに、甥とは別に会社役員の友人(年代は70代)からも見た目のお手入れに力を入れていると聞く。彼いわく、「仕事で若い人と接する中で “おじさん”と認識されてしまうと、コミュニケーションも広がらなくなってしまう」とのことだ。
周囲との関係でいい印象をもってもらうためにも、見た目の若々しさ・手入れの行き届いた清潔さを保つことも必要だと考えたらしい。そういう意識はこれまで比較的女性に根付いていたものだが、男性の中にも「お手入れはマナー」という意識が広まりつつあるのだろう。
美容ビギナー男性が求めるのは「簡単」「時短」「続けやすさ」

とはいえ甥の話のように、普段のスキンケアはまったくしていないのにいきなり美容医療に飛びつく美容ビギナー男性がいるのも事実だ。美容医療はスキンケアと比べて短期間で結果が出るので、こまめなケアが苦手な男性にも受け入れやすい方法なのだろう。
では、そんな美容ビギナー男性のライフスタイルに併走するスキンケアとはどんなものがよいのだろう。メンズコスメの広告を見ていると「時短」「これ一つで」といったワードが多く見られる。毎日のスキンケアにありがちな「面倒くささ」を払拭するワードが選ばれていることが、このことからもわかる。
近年ヒットして販売が好調なサントリーウエルネスのVARONシリーズがいい例だ。一つでケアが完結するオールインワン美容液であり、美容にそこまで関心がない層でも「これなら続けられるかも」という期待で購入へ踏み切ってくれるだろう。
化粧品×美容医療のW使いが新しいメンズ美容習慣になる?

こうしたペルソナに合った心理をしっかりとくみ取る商品設計やPRができれば、私の甥のような男性層にも日々のスキンケアが定着するのではないだろうか。そしていざとなれば“美容医療が救ってくれる”という心強さがある。
化粧品では叶わないものを美容医療で叶え、その効果を長く維持するためにも日々のお手入れを休まない。つまり、化粧品と美容医療のW使いが面倒くさがり屋さんにはピッタリなのかもしれない。

鯉渕 登志子
「美容に詳しい人」ではなく、「美容に興味を持ち始めた人」が増えている時代。だからこそ今後は、“わかりやすい・続けやすい・始めやすい”設計が、より求められていくのかもしれません。フォー・レディーでは、そんな生活者心理に寄り添った販促・CRM支援を行っています。
用語解説
- メンズ美容-男性向けのスキンケア・メイク・美容医療・ヘアケアなど、美容全般を指す言葉。近年は20代だけでなく50代以上にも広がっている。 ↩︎
- 美容医療-シミ取りレーザーや医療脱毛など、医療機関で行う美容施術。短期間で変化を感じやすい点から、近年は男性利用も増加している。 ↩︎















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