ブランドリニューアル成功の鍵は「お客さまの声」

Branding Marketing Strategy Ideas Concept

ブランドのリニューアルや訴求の変更は、成功すれば大きな飛躍につながりますが、一歩間違えれば固定客の離反を招くリスクも。そこで重要なのが「お客さまの声」と「インナーブランディング」です。社内の意識統一から始め、お客さまに真摯に耳を傾けながら進めることで、共感を得るブランド改革が実現します。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』9月19日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.107」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ「顧客離れのリスクを防ぐ“リブランディング”の進め方

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

インナーブランディングで“内部”から改革を

通販化粧品会社
マーケティング
開発部部長

10年ほど通販化粧品でビジネスを展開してきたお陰で、固定客も多くそれなりの規模になってきました。最近伸び率が落ちてきたので、リブランディング1をしたいと考えています。注意すべきポイントは何でしょうか?

40年近く通販化粧品業界で多くの事業会社さまのお手伝いをしてきましたが、その間に様々なリブランディングや商品のリニューアルを見てきました。大胆なリブランディングをきっかけに、大きな話題となって徐々にファンが増え大成功したブランドもあれば、人気ブランドが訴求を変えたとたんに、大量の固定客が離れてしまって青息吐息になり、すぐに再リニューアルしたというケースもありました。

「その成功と失敗の要因は何か?」と問われれば、一言で言うと「お客さまに寄り添う路線変更か、会社都合が優先の路線変更か?」ということだと思います。お客さまに寄り添うリニューアルならば、お客さまの意見を真っ先に聞き、お客さまの利益(ベネフィット)を考えます。会社都合のリニューアルの場合は、先に売上拡大やビジネス効率、投資効果などを考えるでしょう。どちらも必要なことですが、長い目で見て、結果として成功しているのは、前者の方が多いように思います。

“万人受け”ではない、ユニーク性を求めた思い切りも大事

単なる商品のリニューアルではなく、リブランディングの場合は、もっと大掛かりな準備が必要でしょう。ブランドはリリースしてから、ある程度の時間的経過と規模になると、伸び率が落ちて顧客離れも起きてきます。拡大を続けるために、また企業のユニークさを維持するためにも「リブランディング」が不可欠になります。成功と失敗の差がより大きく出てしまうのは、この場合です。

それまで、効率重視・数値重視のみのマーケティングを推進してきた人たちは、なかなかお客さまに寄り添う価値提供型のブランディングに舵を切ることは大変だと思います。まず、体制を整えることからブランディングをスタートさせなければなりません。つまり、対外的なブランディングの前に「インナーブランディング2」を採用する会社が多いようです。成功している多くの会社は、「内部から改革」しているのです。

すでに多くの固定客を持っている中で、多くの人から賛同を得られるような新たなコンセプトを打ち出すことは一筋縄ではいきません。またユニーク性を強く打ち出すことはなかなか難しくなります。なぜなら現在のお客さまを裏切ることはできないからです。これまで大衆受けするようなざっくりとしたコンセプトで運営してきた場合はなおさらです。

最も大事なことは、売り上げとユニーク性のバランスです。個性的な中堅ブランドとして、ユニークなポジションを維持するためには、好きな人半分、嫌いな人半分、くらいの思い切った打ち出し方が必要です。

お客さまの声に耳を傾け、軸をブラさない!

さて、そんなブランドリニューアルを控えた時に、ぜひおすすめしたいのは、「迷った時は、お客さまに聞く」というシンプルな手法です。現在のお客さま、将来買っていただきたいお客さま、残念ながら離れていってしまったお客さま、それぞれのお客さまに徹底的に話を聞くことが不可欠だと思います。私はお客さまの声は、すべての課題を解決してくれる「宝の山」だと考えているので、いつもその原点に返ることにしています。お客さまは何でも教えてくれます。例えばたった一人のお客さまの声にも真実が含まれていることはあります。

さらにこれをもう一歩進めて、常にお客さまに参加してもらい身をもって「顧客体験価値3」を享受してもらうことこそ、とても大事なことだと思っています。お客さまの声に真摯に耳を傾け、ひたすらお客さまの役に立つことを願って業務のすべてを組み立てれば、ブランドの進むべき道はおのずと開かれるはずです。

このようなビジネスのあり方こそ、お客さまに寄り添うことが可能な通販化粧品ビジネスの王道なのではないかと思います。弊社が「お客さま参加型」を強くお勧めする理由は、こんなところにあるのです。「お客さまとともに歩むビジネス、それが通販化粧品ビジネスである」と主張したいです。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

フォー・レディーでは、貴社の商品リニューアルやリブランディングのご提案はもちろん、顧客調査の実施から運営まで、実務に即したトータルサポートをさせていただきます。

用語解説

  1. リブランディング-ブランドの再構築。既存ブランドのイメージやメッセージ、商品・サービスの方向性を見直し、刷新する戦略。市場環境の変化や成長停滞、ターゲット層の変更などに対応するために行われる。 ↩︎
  2. インナーブランディング-社内向けにブランドの価値や目指す方向性を共有・浸透させることで、社員一人ひとりがブランドの担い手となり、一貫した対外発信が可能になる。 ↩︎
  3. 顧客体験価値(カスタマー・エクスペリエンス/CX)-商品やサービスを通じて得られる一連の体験の価値。購入前、使用中、使用後のすべての接点において、顧客が感じる満足度や感動の総体。ブランドの評価やリピートにも直結する。 ↩︎

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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