化粧品通販は“好き”で選ばれる──感性に寄り添う戦略が成功の鍵

健康食品通販での成功経験をそのまま化粧品通販に活かそうとしても、なぜかうまくいかない——そんな声を多く聞きます。実は、両者は「売る構造」は似ていても、「買われる理由」が全く異なります。化粧品通販で成功するために必要な“美容部員的視点”と、顧客の感性に寄り添うコミュニケーションのヒントをお届けします。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』11月22日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.8」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝感性に寄り添う通販化粧品の戦略〟

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ノウハウが通じない理由——「必要」ではなく「好き」で選ばれる

化粧品・健康食品通販会社 担当者

健康食品通販から化粧品通販に参入して半年。健康食品の通販で培ったノウハウが全く通用せず、思うように売り上げが伸びません。化粧品通販と健康食品通販との違い、化粧品通販に大切なことについて教えてください。

化粧品も健康食品も、通販で売る場合は、「マス広告で新規のお客さまを獲得し、DM1やコールで継続購入を促進、徐々にロイヤル顧客2に育成して、時々離脱した休眠顧客を掘り起こす」というビジネス構造は同じです。しかし、売り方は全く違うと考えた方がよいでしょう。

“きれい”は実感よりも感情——使うこと自体が楽しいと思わせる仕掛け

健康食品は「膝が痛いから○○○を飲む」というように、購入する動機と製品の目的が強く結び付いています。さらに、「飲むのをやめると不快感がよみがえるのではないか?」という恐怖心も芽生え、一度飲み始めると継続しやすい傾向にあるのではないでしょうか。 

しかし化粧品は違います。健康食品に比べると効果効能が明確でなく、多くは「きれいになりたい」という漠然とした目的で購入されています。また、健康食品は多少飲みにくくても、痛みや不快感を払拭するため、飲む時だけ少し我慢すれば摂取し続けられます。

化粧品はそうではありません。「顔」という人間の最も敏感な部位で手触り、香り、お手入れの感触、使用後の肌の質感……とその製品と長時間付き合わなくてはなりません。

そのため、少しでも嫌な要素があれば、次第に手が伸びなくなってしまいます。そうすると「きれいになる」ことはできません。だから少しでも気に入らない要素があれば、いつでも使用を止め、他社製品に乗り換えるのです。止めたことによる、不都合(痛みや不快感)は健康食品ほど深刻ではありませんが、化粧品はなくては困るものだからです。

つまり化粧品通販を成功させるためには、お客さまにその製品を「好き」になっていただくことが最も大切なのです。

通販でも“美容部員的きめ細やかさ”を——顧客と感情でつながる販促とは?

「好き」という感覚を引き起こすには、機能(=効果)はもちろん、使うことが楽しくなるものでなくてはなりません。香りやテクスチャーは心地よいものに、パッケージデザインには夢を持たせ、お手入れの時間やきれいになる過程をも楽しんでもらうと認識すべきでしょう。

広告やDMは、それを使うことでどれだけきれいになれるか、どれだけ心が豊かになるかを伝える必要があります。もちろん、製品の独自性やこだわり、機能は十分にアピールしなければなりません。

DMを送るタイミングやその内容も「好き」を続けていただくための重要な鍵となります。また、ビジュアルやキャッチコピーも嫌悪感を抱かせないようにすること。サンプルを請求いただいた際に添えられる感謝のひと言、他に悩みはないかと問う気遣い、季節ごとに届けたいお手入れアドバイスや気分を盛り上げていただくためのキャンペーンなど、大事なポイントはたくさんあります。

考えられるあらゆる気遣いをして、まるでお客さまと対話している「美容部員」のようなきめ細やかさが不可欠です。それが化粧品を売る場合に忘れてはいけないポイントなのです。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

私たちフォー・レディーは、化粧品通販ならではの「感性マーケティング」を得意としています。ただ売るのではなく、使う人の気持ちに寄り添いながら、“好き”を育てる仕組みをご提案します。

用語解説

  1. DM(ダイレクトメール)-企業が特定の顧客に向けて送る広告や販促の郵便物やメールのこと。購買履歴や嗜好に基づいた内容で送付することで、リピートや新商品訴求に効果が期待されます。 ↩︎
  2. ロイヤル顧客-企業やブランドに対して高い愛着や信頼を持ち、継続的に商品を購入し続けてくれる上位顧客層のこと。LTV(顧客生涯価値)が高く、ビジネスの安定を支える重要な存在です。 ↩︎

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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