通販でもできる“リアルの力”――おもてなしで信頼を築く顧客接点戦略

通販という販売形態では、お客さまとの接点は電話やネットが中心。便利さの裏で「顔が見えない」という弱点を抱えています。しかしその弱点を補い、顧客との心理的距離を縮める手段が「集客イベント」です。イベントは、ファンづくりや顧客理解にもつながる大きな可能性を秘めています。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』4月11日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.11」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

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通販の枠を超える! “集客イベント”で顧客との心の距離を縮める

中堅通販化粧品会社 担当者

「お客さまを集めたイベントを開催した」と聞きますが、当社では実施したことがありません。通販なのにお客さまと直接対面するのは違和感を覚えます。「集客イベント」は通販にとってどんなメリットがあるのでしょうか?

自分たちの販売形態が「通販だから」と、これはしてはいけないとか、このように販売すべきだとか、あまりに自主規制する必要はないと思います。「通販」という手段で販売しているのはあくまでも私たち売り手側の都合であり、お客さま目線でみれば、自分にとって便利で満足のいくサービスが受けられれば、好きな方法で買いたいはずです。私たちは通販という枠にとらわれず、お客さまにとって良いと思われることにはどんどんチャレンジしていくべきだと思います(もちろん企業コンプライアンスを遵守する事が前提です)。 

「メディアミックス1」とはもともと広告業界の言葉ですが、これが今や各業界で当たり前のように行われています。一つの形に固執せず、各方面の弱点を補い合う多彩な仕掛けが、今後の通販業界にも、もっと必要になってくるでしょう。

“顔が見えない”弱点をどう補う?

通販のメリットは、一つの拠点で全国や海外までも相手に、スピーディーな展開が可能なことです。

ところが、コミュニケーションの手段は電話やインターネットなどが主流で、お互いの顔が見えないという弱点があります。心理学の実験では、手紙や電話よりも、実際に顔を合わせて相手と話すことで、意志疎通の正確さが格段に上がるという結果が出ています。 

逆に言えば、顔の見えないやりとりでは「思い」がきちんと伝わらず、心理的つながり2を強化するのが難しいということになります。心の絆が大切な通販化粧品は、コミュニケーション部分にデメリットを抱えているともいえるでしょう。

お客さまと販売員がじかに会って話をする訪販や店販では、お客さまとの心のつながりがとても強くなります。化粧品販売にとって、これは大きな強みなので、ぜひ通販でも取り入れたい部分です。

とはいえ、通販という業態では、お客さま全員とじかにお会いするのは不可能です。そこで、通販の弱点を補完する手段のひとつとして、集客イベントを行ってみてはいかがでしょうか。

イベントは“おもてなし”と“感謝”を伝える場

イメージしにくいかもしれませんが、通販化粧品各社が実施しているイベントは、その場でダイレクトに商品を売るためのものではありません。お客さま感謝パーティーや座談会など、さまざまなイベントが催されていますが、基本となるのは「おもてなし」の心を表すことです。

参加したお客さまはもちろん、イベントの様子を情報誌などで紹介すれば、参加できなかったお客さまにも、その場の雰囲気を疑似体験していただけます。また、お客さまの代表の方々と直接会うことで、お客さまが何を考え、何を望んでいるのかが見えてきます。集客イベントは、こちらの気持ちを伝えるだけでなく、貴重な顧客情報収集の場でもあるのです。 

通販という垣根を越えた活動を積極的に行うことで、より強い通販会社へと成長できるのではないでしょうか。訪販や店販のノウハウや強みを研究し、どんどん新しいことにチャレンジしてみてください。その先に、真に強い通販化粧品会社の姿が見えるような気がします。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

フォー・レディーは、その課題を乗り越えるお手伝いをしています。座談会や感謝イベントの企画・運営はもちろん、お客さまの声を「聞き」「見せ」「伝える」ための仕組みづくりもご提案可能です。リアルな接点を活かした“心の通う通販”へ――ぜひ一度ご相談ください。

用語解説

  1. メディアミックス-複数の異なるメディア(テレビ・新聞・Web・リアルイベントなど)を組み合わせて、効果的に情報を発信する広告手法。「イベント×通販」もその一例。媒体の弱点を補い合い、相乗効果を狙う。 ↩︎
  2. 心理的つながり/心理的距離-企業とお客さまとの間に生まれる「共感」や「信頼感」のこと。通販は顔が見えないため、心理的距離が遠くなりがち。リアルイベントなどでその距離を縮めることが重要。 ↩︎

深掘りQ&A

イベントでは何をすればいいの?販売しないと意味がないのでは?

通販化粧品のイベントは、販売が目的ではありません。お客さま感謝会や座談会を通じて「おもてなし」や「想い」を伝えることが主目的です。その結果として、ブランドへの信頼や共感が深まり、長期的なファンづくりにつながります。

イベントを実施できるほどの規模や人員がいない場合は?

大規模なイベントでなくても構いません。小規模な地域別座談会や、オンラインでのリアルタイム交流など、できる範囲で“顔が見える”工夫を取り入れることで、心理的距離は確実に縮まります。外部のパートナーに運営を委託するのも一つの手です。

 リアルイベントの内容は、参加者以外にも役立てられる?

はい。イベントの様子を会報誌やSNSで紹介することで、参加できなかったお客さまにも“共感”を疑似体験してもらえます。また、会話の中から得られた「お客さまの声」は、商品改善やプロモーション施策にも大いに活用できます。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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