ブランディングは見た目を変えることではありません。とりわけ通販化粧品では、既存顧客の愛着を守りながら新しい価値を提示する、繊細な舵取りが求められます。では、失敗しないためにはどんな視点が必要なのでしょうか――。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』11月20日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.23」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。
ロゴ刷新だけでは伝わらない。顧客に響くリブランディングの本質

通販化粧品を立ち上げて10年目になります。ずっとキャンペーン中心の販売促進策でやってきましたが、最近、新規集客もあまりうまくいかず効率が落ちています。業績アップを目的に、既存顧客にも受け入れられるブランディングをしてリニューアルをしようと考えています。
ブランディングは「思い」をカタチにすることです。
化粧品通販のリブランディング1はタイミングとリニューアルのレベルがたいへん難しいと思います。というのも、お客さまの中には、既存製品に対する思い入れが深くコミュニケーション内容にも愛着を感じている人も多いからです。
安易なロゴマークの変更やリニューアルを告知する大量の広告展開に対し、時には拒否反応を示し、「私の好きな○○ではなくなった」と感じるお客さまもいらっしゃいます。
リブランディングをしたいと考える要因はいろいろあると思いますが、単に会社側の目線だけで進めると、のちのち問題点を露呈することになると思います。
私はリブランディングをする時はまず、「私たちはお客さまに何を伝えたかったのか」からスタートすることがいいと思います。そもそも何を目的に通販化粧品事業をスタートしたのか再考し、あるいは考えを練り直す良い機会です。
また、リブランディングの作業プロセスに、社員とお客さまも巻き込むべきだと思います。社員の一人一人にも「自社はどうあるべきか」を考えてもらい、何度もミーティングを重ねるべきです。
お客さまには、ヘビーユーザー、ライトユーザーを問わず、丹念にヒアリングします。
要望に耳を傾け、発言内容を分析して、お客さまの目線から自社の事業を診断するぐらいのつもりがいいでしょう。その上で自社の通販化粧品がお客さまに約束できる価値は何かを定め、いわば「マニュフエスト」のようにブランドのコンセプトをまとめて、社員や関係する人々に配布します。
お客さま向けにはそれを分かりやすくかみくだいた内容をリリースするべきです。つまり、なぜ自社の化粧品をお客さまに提案し続けているのか、その「思い」をコンセプトという見えるカタチにして提案すべきですし、自分たちの行動を律するよりどころとすべきなのではないでしょうか。
失敗しないブランディングの核心は「思い」の一貫表現

新コンセプトの方向性を定めたら、あらゆる機会にそれを表現していくべきでしょう。
製品を送る箱や同梱物の情報ツールの隅々まで、あるいはコールセンターのお電話口でも、他社とは異なる自社の「思い」を突き詰めた言葉にして表現するべきです。またお客さまサービスのあり方もコンセプトやマニュフエスト2に沿ったものでなくてはなりません。
あるいはお客さまに配布する美容情報誌はそれこそ、なぜこの製品を提供するかが明確になった「美容の考え方」が十分伝わる情報になっていなくてはなりません。
提案する製品に明確な「思い」があれば、それらの情報リソースはあふれ出るほどにあるはずです。つまり「思い」の強さから多くの「話題や小話、感動のストーリー」が生まれるのです。しかし現実はOEM先に任せてモノづくりをしているだけでは、そのような物語はなかなか生まれないものです。
お客さまは化粧品に対し、単に物質としての役割だけを求めているわけではありません。お客さまの肌は「健康状態を映す鏡」なので一人一人の体調や精神的な変化にも影響されるのです。
そんなお客さま一人一人に満足してもらうためには、しっかりと自分たちの主張を提案し、それに賛同してもらえる深い絆で結ばれてこそ、ストレスのない「思い」を共有できるのだと思います。
失敗しないブランディングは、単にロゴマークやパッケージデザインをリニューアルするだけではなく、そのカタチや販売スタイルの原点となっている「思い」が大切なのだと思います。
したがって、ブランディングを成功させるためには、経営層や全社員を巻き込んだ、自社製品に込めた「思い」をカタチやビジネススタイルに込めて、その内容を明確にメッセージすることが大切なのです。そうすればお客さまは、必ずリニューアルを評価してくれるはずです。


鯉渕登志子
ブランディングの出発点は、御社が大切にしてきた“思い”です。私たちフォー・レディーは、御社の伝えたい〝思い〟を掘り起こし、分かりやすいコンセプトに磨き上げ、確かなストーリーとしてお客さまに届けるお手伝いをしています。ブランディングについてお悩みがありましたら、ぜひご相談ください。
用語解説
- リブランディング-度確立したブランドを、時代や市場環境の変化に合わせて再構築し直すこと。ロゴやデザイン変更だけでなく、企業理念や顧客とのコミュニケーション全体を見直す取り組みを指す。 ↩︎
- マニフェスト(ブランド・マニフェスト)-企業が「お客さまに何を約束するのか」「どうありたいのか」を宣言する文書やメッセージ。社員や顧客との共通認識を持つための指針。 ↩︎
















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