電話集中をチャンスに変える ― コールセンター待機時間の工夫

土日やテレビCMの直後、コールセンターに電話が殺到し「つながらない」「待たされる」と不満を抱かせてしまう――。通販化粧品ビジネスではよくある悩みです。人員を大幅に増やすことは難しくても、工夫次第でお客さまの不快感を減らし、むしろブランド好感度を高めるチャンスに変えることができます。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』3月19日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.25」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝コールセンター「待たせ」問題を逆転の発想で解決!〟

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「待たされている」と感じさせない仕組みが解決策

通販化粧品会社 担当者

土日やCMを放送した後にコールセンターへの電話が集中し、お客さまを待たせてしまうことや受電対応できないことがあります。架電率1が一定しないので、オペレーターの人員を多くそろえることも当社の規模では難しく、何か工夫できることはありませんか。

キャンペーン中やテレビCMの放送直後に電話が殺到してしまうことは避けられないことです。しかし通販では、「電話がつながらない」とか「待たされるのが嫌だから」という理由で注文をやめてしまったというお客さまが多いことも事実です。また、いつもつながりにくい会社は、口コミの評判も悪くなります。

コールセンターへの電話が極端に集中しないよう、販売促進は計画的に実施するべきです。CM放送後などは、人員をどのように配置したらよいか、綿密に計算し、正確な予測を立てることがまず基本の第一歩です。

しかし、それも経験の積み重ねがないと、通販をスタートしたばかりの会社には、なかなか難しいものです。でも、何か工夫はできるはずです。

お客さまを待たせない工夫 ― 他業界に学ぶ通販の接客力

他の小売業では、お客さまを待たせないために、さまざまな工夫と努力をしています。 

ファミリー向けのブティックでは、女性が買い物をする間、一緒に来店した夫や子どもたちが退屈しないように、ソファーとテーブルを設置し、キャンディーと一緒に折り紙や絵本、色鉛筆などを置く店があります。待合室の一角におもちゃや絵本がたくさん並べられている小児歯科も数多くあります。その場で待たなくてもいいように、順番になったら携帯に連絡してくれるレストランもあります。

また、行列ができる人気の洋菓子店では、キッチンをガラス張りにして、お菓子が作られるプロセスを、並びながら楽しんでもらう店もあります。

待ち時間を不快から“体験価値”に変える

待たされっぱなしにされれば誰でも不快に感じるもの。大切なのは、お客さまを待たされている気持ちにさせないことです。コールセンターでも他の小売業と同じように、待ち時間を利用してできることはたくさんあるはずです。

例えば、数種類の音楽を用意して、プッシュボタンで選んでもらい、好きな音楽を聴きながらお待ちいただくというのはどうでしょう。また、会社の理念や商品ができるまでの研究成果などをナレーションで伝え、音によって企業イメージをアップさせるための広告の時間とすることもできるかもしれません。商品の売り込みばかりだと、不快に思われてしまうかもしれませんが、商品にまつわるちょっとしたいい話を、ラジオを聞くように聞きやすい声で流すならば、退屈せずにお待ちいただけるのではないでしょうか。

あるいは、プッシュボタンで答えられる簡単で楽しいアンケート2を実施しても良いかもしれません。そして、電話がつながった後は、きちんと教育されたオペレーターが、店頭の美容部員のように、注文商品についての使い方や、お客さまのお悩み相談などのアドバイスをテキパキと行うべきです。

せっかくお待ちいただいたのですから、待ったかいがあったと思われるような対応ができるオペレーターを配置したいものです。長く待たされてイライラしながら注文電話をかけてくるお客さまへの対応に、オペレーターの負担も大きくなります。待ち時間を有意義に過ごしていただく工夫をすることで、コールセンターの業務もやりやすくなり、大切なお客さま情報を正確にヒアリングできるようになるはずです。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

待ち時間を工夫することで、お客さま満足と営業力の両立は可能です。フォー・レディーは、通販化粧品企業様の「顧客体験を磨く」施策を、現場理解と豊富な制作ノウハウでご支援します。コールセンターの改善や会報誌制作まで――ブランドとお客さまをつなぐ伴走パートナーとして、ぜひご相談ください。

用語解説

  1. 架電率(かでんりつ)—電話をかけた回数に対して、実際につながった割合のこと。コールセンターの指標で使われますが、現場経験がない方にはピンと来にくいかもしれません。 ↩︎
  2. プッシュボタンアンケート―電話機の番号ボタンを押すだけで答えられるアンケート方式のこと。 ↩︎

深掘りQ&A

架電率とは何ですか?

 架電率とは「電話をかけた件数に対して、実際につながった割合」を示す指標です。通販化粧品においては、架電率が一定しないと必要な人員配置が難しく、機会損失の原因にもなります。

コールセンターに“営業力”があるとはどういう意味でしょうか?

単なる受注窓口ではなく、お客さまの悩みや疑問に応えながら、使い方提案や関連商品の紹介などを行い、継続購入やLTV向上につなげる力を指します。

美容部員のように対応する」とは具体的にどういうことですか?

 店頭の美容部員は、商品の紹介だけでなく「肌悩みに合わせたアドバイス」を提供します。コールセンターでも同じく、お客さまの声を聞き、適切な商品利用法や生活習慣アドバイスを行うことで、満足度と信頼を高められます。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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