「ネット注文の顧客には情報誌を送らない」――効率を重視すれば合理的に見える判断です。しかし実際には「紙媒体で選びたい」という声も聞こえてきます。顧客接点1の多様化が進む中で、本当に正しいアプローチはどこにあるのでしょうか。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』7月30日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.30」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。
ネット顧客にもリアル媒体を ― 選択肢を与える重要性

弊社では、通常インターネットからご注文いただくお客さまには、情報誌2を送っていません。ところが、先日ネット注文のお客さまから「商品は情報誌を見て選びたいから、送ってほしい」と要望がありました。今後ネット注文の方にも情報誌は送っておくべきでしょうか。
ぜひ「送るべき」です。
なぜなら、いつもインターネットで注文しているお客さまが、毎回ネットを利用するとは限らないからです。ネットは検索性の高いツールとして、幅広い年代の方々が活用するようになりました。とはいえ、商品を探すときだけ利用して、実際の注文は郵送や電話でするという方もまだ多くいます。特に中高年の女性はその傾向があります。
また、ネット通販をメーンとする会社では、最近リアル媒体を発行して、お客さまの定着率を上げようとする動きが多いようです。検索性が高いだけに、ブランドスイッチしやすく離脱も早いので、顧客育成のためのツールとして情報誌を活用しているようです。
配送会社を選べる会社があるように、サンプルや商品の申し込み時に、情報誌、DM3、メールマガジンの配信など、どのようなルートで情報を入手したいかを、お客さまに選んでもらうと無駄がないでしょう。
一方的な情報提供は顧客離れのリスクに

大切なことは、お客さま自身に選ぶ権利を与えることです。
もし、一方的な判断で、「ネット利用者だから」とメールマガジンのみを配信していると、中には読まない方もいますし、最悪の場合は受信拒否される可能性もあります。
ネット以外でも同様です。注文後に電話によるフォローを行っている会社も多いと思いますが、電話に出られる時間帯は、お客さまごとに異なりますし、中には商品を購入していることを家族に知られたくない方もいるでしょう。その場合、事前に電話の可否について確認しておけば、お客さまに迷惑をかけることもなく、電話での情報提供を必要としている人にだけ、必要な情報をお届けすることができます。
求められるのは“役立つ情報を、適した形で”

つまりネット、情報誌、DM、電話と分けて考えるのではなく、「お客さまはコンテンツの内容やご自身の都合で複数の情報ルートを併用することもある」という認識を持つことです。実際、弊社で情報誌のコンテンツの一部を、メールマガジンに流用して情報提供したところ、利用者から「役立った」「もっと読みたい」という声が多くあがりました。
これはお客さまが情報提供のルートより、情報が「自分にとって役立つかどうか」を重視していることを示しているのではないでしょうか。つまり、お客さまが求めている情報コンテンツを、その人に合った情報ルートや形態で提供することが、最も重要なのです。そのため会社側はあらゆるルートで情報を届けられるように整備するべきです。そしてその情報ルートはお客さま自身に選択してもらうことが良いでしょう。
多くの情報が氾濫する時代だからこそ、自分の意志で得た情報であれば、お客さまも内容に関心を持ち活用してくださるはずです。それがお客さまとの関係を深める第一歩になるのではないでしょうか。

鯉渕登志子
お客さまに寄り添う情報提供は、企業が一方的に決めるのではなく、選択肢を用意することから始まります。フォー・レディーは、情報誌やDM、Webやメールなど多様なチャネルを組み合わせ、御社に最適な顧客コミュニケーションを設計します。「役立つ情報を、自分に合った形で」届ける仕組みづくりを通じて、ファンを育て、ブランドの価値を高めるお手伝いをいたします。
用語解説
- .顧客接点(タッチポイント)—顧客と企業が接するあらゆる場面や媒体のこと。情報誌、Web、DM、電話、SNSなど、多様な接点の質をどう設計するかが顧客育成に直結する。 ↩︎
- 情報誌(会員情報誌・会報誌)―通販化粧品会社が顧客に向けて定期的に発行する冊子。商品情報や美容法、ユーザーの声などを掲載し、顧客のファン化・定着を目的とする。WebやDMと並ぶ重要なコミュニケーションツール。 ↩︎
- DM(ダイレクトメール)―個人宛てに直接届けられる郵送物。キャンペーン案内やサンプル同梱などに活用され、顧客の関心喚起や購入促進に寄与する。 ↩︎

















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