長年、通販のみで事業を展開してきた企業にとって、リアル店舗への出店は大きな挑戦となります。お客さまからは「実際に手に取って試したい」「対面でアドバイスを受けたい」といった声も多く、出店の誘いを受ける企業も増えています。とはいえ、通販と比べると店舗ならではの課題も少なくありません。では、通販との違いはどこにあるのでしょうか。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』5月11日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.39」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。
通販と店舗を一体化させる〝想像力〟と〝総合力〟

ずっと通販のみで販売してきましたが、最近あるファッションビルから「お店を出してみませんか?」という誘いを受けました。とても光栄なことだとは思っていますが、初めてのことなので‥‥注意点を教えてください。
通信販売で化粧品を購入しているお客さまに「店舗があったら行くか?」ということを聞くと、ほとんどのお客さまが、「行きたい!」と即答する。
その理由は「お店なら対面でお手入れを教えてもらえる」
「実際に手に取って試してから購入できる」
「メイクの色は、肌につけてから買いたい」などである。
そして最近、企業側も店舗を持つ会社がとても多くなった。前に「通販で化粧品を買ったことのないお客さまはほぼいなくなった」と書いたが、つまりお客さまにとってはもう通販であろうと、店舗販売であろうとあまり区別せず、たまたま通販しか販売していない、たまたま店舗でしか買えない商品だから購入しているだけだ。それならば本来は、自分の好きな方法で、あるいは便利な方法で、あるいは適切な方法で買い物したいと思うはずだ。
出店成功の鍵は「立地」「条件」「人材」への備え

業態による差別化というのは企業側の勝手な都合なので、今後は1つの販売方法でしか買えない商品は、よほど強いブランド力がないと通用しなくなるだろう。その意味では、いま店舗販売に進出するのは適切な判断だと言える。出店の際に注意しておかなければならないことは、ターゲット層に合った立地か、出店する施設かを確認することとデベロッパー1側の条件をよく確認しておくことだ。
通信販売のみで運営してきた会社にとって、店舗は直接的な運営コストが高いと感じさせる業態なので、通販とは異なる経費の構造を理解しておく必要がある。また店舗は、接客力のある販売員が必須なので、その人材教育も重要だ。しかも販売地域が限定されるので、多店舗化も視野に入れておかなければならない。
①立地・出店施設の確認 ②デベロッパーとの条件確認 ③経費構造の違い
④接客販売員の教育 ⑤多店舗化の視野
求められるのは「発想の自由さ」と「顧客目線」

一方、最近は店舗の方も集客力を高めるために様々な工夫をしており、単なる物販というより「体験型ショールーム化」しており、アドバイス型のコンサルティング力が求められる。つまりお客様が通販と店舗を区別しないで利用するようになったことで、それぞれに求められる情報発信機能や販売機能に変化が出てきているということだ。 店舗はショールーム化2し、通販は便利にスピーディーに、いつでも自宅まで届けてくれる。
お客さまはそんな使い分けをしているので、会社側も使い分けニーズに不都合にならないように、サービスをフル装備しておかなければならない。まずはお客さま名簿の一本化、サービス内容の一体化など、これまでの商習慣にとらわれない自由な発想で、しかもお客さま目線で販売方法を再構築するべき時が来ている。
つまりこれからは企業の規模に関わらず、通販(電波媒体、紙媒体、Web)でも、リアル店舗でも販売力を発揮できる企業の「総合力」が求められているといえよう。

鯉渕登志子
フォーレディーは、御社の強みを最大限に引き出し、接客対応マニュアルや人材育成の支援を通じて、通販と店舗をつなぐ新しい顧客体験を実現します。
用語解説
- デベロッパー-商業施設やショッピングセンターの開発・運営を行う企業のこと。店舗を出店する際は、立地や条件をデベロッパーと交渉して決めることになる。 ↩︎
- ショールーム化-商品を販売する場というより、体験や情報提供を重視する店舗の形態。購入はECサイトや後日の注文に誘導するケースも多い。 ↩︎

















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