通販化粧品事業を始めて10年、固定客も増え、ようやく安定期に入ったはずなのに、最近は新規顧客の獲得が難しくなり、離脱も目立つ――そんな声をよく耳にします。競争の激化やお客様の「ブランドを渡り歩く傾向」といった市場要因だけでなく、実は組織の内側に原因があるのかもしれません。では、その課題とは何なのでしょうか。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』9月7日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.42」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。
停滞の背景に潜む社内の課題を解決するのを優先して!

化粧品通販の事業をスタートさせて10年目の会社です。これまでは無我夢中で走ってきてやっと固定客もつくようになり少しほっとしたところです。しかし最近、新規顧客もなかなか思うように獲得できず、離脱客も多くなってきて勢いがなくなってきているように感じています。何か打開策は無いでしょうか?
最近、中堅の通販化粧品会社様で、創業時の勢いがなくなり、「やや停滞気味」とおっしゃる会社様が多くなったように思います。その理由としては、通販化粧品ビジネスの競合状態が激しくなり、差別化が難しくなってきているため新規顧客獲得が難しくなっていることがあげられます。
またお客さまも様々な商品を次々に試して「ブランドを渡り歩く」方が多くなっているので、固定客化1が難しいことも原因の1つと考えられます。しかし伸び悩んでいる会社様によくよくお話しを聞くと、幾つかの共通点があるようです。
まず第1に問題点と思えることは、お客さまの声を徹底して聞く体制(システム)になっていないことです。注文してくださった時のヒアリングも十分でないため、何の目的で買ってくれたかという理由や、お客さまの肌悩みも理解できていないこともあるようです。またその後のお手入れの状況やご不満、ご意見等を徹底して集め、データ化して業務に活かすことがきちんとできていないようです。
これではお客さまの肌悩みに「寄り添う」ことはできないはずですし、様々な改善策も出てこないはずです。
過去の成功体験に縛られ、新しい挑戦が止まっていないか

2番目に問題だと思うことは、お客さまは日々新鮮な情報に触れて、新しいお手入れ方法等に関心を示しているのに、会社側が過去の成功体験や思い込みに固執して、新しいチャレンジが出来なくなっているのではないでしょうか?
会社も創業から時間が経過すると、組織体制が整ってくることと相反して、個々人の発言や発信が少なくなり、「効率」や「数値」重視の仕事になっている場合が多いようです。
そうなると新しいアイデアが次々に生まれるような環境ではなくなります。過去の「思い込み」が支配して、お客さまから見ても新鮮さのない会社になってしまいます。
通販化粧品は「夢」や「思い」を売るビジネス

そのような状況が長く続くと、本来はベンチャー企業だったはずなのに、「やらされ感満載」の仕事ぶりになり、大企業病のように業務内容を「他人事」と考える人が多くなります。
本来通販化粧品会社は、商品開発、新規顧客開発、リピート育成、販売促進、システム開発、フルフィルメント2、カスタマーセンター、マーケティングなどの各部門が、フル稼働してそれぞれの役割を果たすことで、役割分担のピースが埋められ、完成していくはずなのに、部門ごとの連携も取り難くなくなります。停滞感や業績の悪さは、決して市場環境のせいばかりではありません。
通販化粧品は少し大胆に言えば、ある意味「きれいになる夢」や「思いを売るビジネス」なのに、提供側が「思いを共有できる組織」を作れないのでは、低迷するのは当たり前だとも言えます。
関わる人々の「思い」を1つにして邁進する組織ができれば、おのずと停滞感は払拭できると思います。

鯉渕登志子
通販化粧品は「きれいになる夢」を届けるビジネス。フォー・レディーは、その夢をお客様と社員が共有できるよう、調査から施策設計、クリエイティブまで伴走型で支援いたします。
用語解説
- 固定客化-一度購入した顧客が継続的に購入してくれる状態をつくること。リピート率や定期購入率の向上を通じて、企業の売上・利益の安定に直結します。 ↩︎
- フルフィルメント-通販ビジネスにおける受注から配送、在庫管理、返品対応までの一連の業務を意味します。顧客満足度を左右する重要な領域であり、カスタマーサービスと表裏一体の機能です。 ↩︎

















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