「お届けの接点」を磨く――配送品質でブランド価値を高めるには

通販化粧品にとって、お届けの瞬間はお客さまがブランドと接する大切な接点です。しかし配送会社の切り替えや社内の出荷ミスが重なると、小さな不満が大きな不信感につながりかねません。では、どうすればお届け体験を改善し、ブランドの信頼を守ることができるのでしょうか。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』10月26日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.43」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝顧客満足度を高める「おもてなし配送」戦略とは〟

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配送会社と協力し、クレームを改善に活かす

化粧品会社 通販事業担当者

配送会社と協力してサービスの質を上げたいのですが、どうしたらいいでしょうか?最近、配送会社を変えました。社内の出荷ミスもあるのですが、なんだかお届け(配送)に関するクレームが多くなったようです。このままではわが社のイメージも悪くなってしまうのではないかと心配しています。改善できることはありますか。

このところ大手配送会社が配送料の値上げや配送時間帯の変更を実施、あるいは計画をしています。そのため、通販各社はコスト削減のために配送会社を変えるところが出てきました。急な変更のために配送関連のクレームが少し増えたという声も聞くようになりました。 

しかし配送会社のミスばかりではなく、通販会社側のデータ処理ミスや、部署間の連携ミスも相変わらず後を絶ちません。店舗販売と違い、対面販売をしない通販では、たとえ小さなことでもお客さまとの信頼関係を損ねてしまう要因になりかねません。

まずは自社の出荷ミスや社内で改善できることは完璧に解決する方法を考え、改善しましょう。

化粧品だからこそ〝届き方〟がブランド価値を左右する

化粧品通販のお客さま座談会で、いつも配送に関する要望・苦情を聞いています。そうすると、配送会社や地域によってサービスに大きな差があることが分かります。主な内容は時間帯指定の通りに届けられず、お客さまが待たされる、商品の箱を郵便受けの外に置いたままにされた――などです。また箱の中で商品やサンプルがバラバラになっていることも少なくないようです。

化粧品は女性のお客さまに届ける商品が多く、またイメージをとても大切にする商品です。届くのを楽しみにしていた商品が、期待外れの状態で届くのは、商品そのもののイメージも「期待外れ」で価値が下がってしまいます。お客さまから受けたクレームはきめ細かにチェックして、必ず配送会社にフィードバックし、一緒に改善するように努めたいものです。

柔軟な発想で付加価値のある「お届け体験」をつくる

ほとんどの通販会社は配送を運送業者に任せていると思います。そのため、なかなか詳細なサービスまで検討しにくいのかもしれませんが、「うちの商品は化粧品なのでこのように扱って欲しい」という申し入れをして、お届け体制を改善してはいかがでしょうか。

ある通販会社は外注のコールセンタースタッフに「美容&接客マニュアル」で教育を実施し、その化粧品ブランドにふさわしいお客さま対応を徹底しています。同様に商品の配送に関しても、訪問の態度やお礼の仕方、捺印のいただき方、言葉遣いなどを徹底した、料金の高い「おもてなし配送1」があってもよいのではないでしょうか。

例えば、定期購入のロイヤルユーザー様には厳選された配送会社がお届けする「プレミアム配送2」などで付加価値の高いサービスがあってもよいと思います。

また、お客さまが配送料を高く払っても、品質の高いサービスを選ぶことができる選択肢があっても良いのではないでしょうか。通販化粧品会社は商品をお客さまのお手元に届けるまで、さらには正しく使ってもらう情報提供もサービスの一環です。

もっとサービスを柔軟に考え、お客さまに対して価値の高いサービスを届けるということも考える時期に来ていると思います。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

通販化粧品にとって、配送は「最後の物流」ではなく「お客さまとの大切な接点」です。フォーレディーは、配送品質の改善にとどまらず、商品がお手元に届くまでのサービス全体、さらにはお客さまとのコミュニケーション設計までを一緒に考えます。ブランドの価値をお届けする仕組みづくりを、ぜひ私たちにご相談ください。

用語解説

  1. おもてなし配送-訪問時のマナーや心配りを重視した配送スタイル。捺印の受け方やお礼の仕方など、細かな接客品質まで標準化し、配送を“接客の一部”として扱う考え方。 ↩︎
  2. プレミアム配送-通常の配送よりも丁寧さや付加価値を高めた配送サービスのこと。配送員の態度や言葉遣い、梱包の質などブランド基準を反映させ、顧客に特別な体験を提供する。 ↩︎

深掘りQ&A

なぜ配送品質がブランド価値に影響するのですか?

通販ではお客さまと対面する機会が少なく、商品を手にした瞬間が「ブランド体験」の大きな場面になります。梱包の丁寧さや配送員の態度まで含めて「商品イメージ」として受け止められるためです。

 配送会社任せではなく、自社でできることはありますか?

 出荷データの処理精度や梱包ルールの徹底など、社内で改善できる部分は多くあります。まずは自社の出荷ミスを最小限に抑えることが、配送会社との協力体制を強化する前提となります。

付加価値型の配送サービスはコスト面で難しくないですか?

すべてのお客さまに提供するのではなく、ロイヤルユーザー向けや追加料金を希望する顧客向けに限定すれば現実的です。プレミアム配送を選べる仕組みは、むしろ顧客満足度やロイヤルティを高める投資となります。

配送改善以外に考えるべきことは?

配送はあくまで顧客接点の一部です。会報誌やサンクスカード、フォローアップの情報提供なども含め、ブランドらしいサービスとコミュニケーション全体で「一貫した体験」を提供することが求められます。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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