通販の未来はお客さまとの“深いつながり”にある

通販化粧品会社にとって、お客さまと直接顔を合わせる機会は少ないものです。ところが、座談会やグループインタビューを実施すると、思いのほか喜ばれ、「また参加したい」という声が寄せられることがあります。なぜお客さまはそのような場を求めるのでしょうか。そして、企業として今後どのように活用していけばよいのでしょうか。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』9月20日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.50」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝顧客を「ご意見番」に変える関係構築術〟

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

通販だからこそ、ファンと一緒にブランドを育てる参加型の仕組みを

通販化粧品会社 担当者

わが社は創業以来、通販のみで化粧品を販売してきました。そのためお客さまにお会いしたことがありませんでした。最近、お客さまのグループインタビューを行ったところ、参加してくださった人にたいへん喜ばれて、「ときどき開催してほしい」と言われました。今後どのようにしたらいいか、方法を教えてください。

化粧品通販各社のお客さま座談会やグループインタビューを数多く実施しているが、最近のお客さまはお誘いすると快く参加してくれる。しかも喜んで”本音トーク”をしてくれる。

その理由は「価格帯が同じ化粧品を使っていると価値観が近いので安心できる」「同窓会とはまた違って美容のおしゃべりを思いっきりできる」というものだ。そのためいつもお客さまイベントの待望論が出てくる。

私はこのようなお客さまの要望はとてもありがたいことだと思っている。「通販だからお客さまに直接対面せずに売るのがルールだ」とか、「一人一人のお客さまに対応していたらとても効率が悪いのでお客さまイベントなどは不要」と考えている化粧品会社がいたら、即刻考え方を改めてほしい。

これからの通販は、お客さまの数の多さを誇るのではなく、ダイレクトだからこそ、いかにお客さまと深いつながりを作れるかが、将来の差を生むと思う。顧客数を誇るのであれば、世界をターゲットにしたアマゾンのようにならなければならない。これはなかなか難しい。そうだとすれば、ダイレクトの強みを生かして、一人一人のお客さまにもっと深く関わることができると思う。

耳の痛い声もブランドを強くする“育成のヒント”に

化粧品で言えば、一人一人の肌状態はメンタル状態にも左右されるので、千差万別の悩みがあるはずだ。そんな中で、なるべく一人一人の肌悩みに近い対応策、製品、お手入れ方法を提供することが化粧品会社の役割なので、お客さまの声は会社にとって「宝の山」のような情報だ。だとするならば、もっとダイレクトの強みを生かして、お客さまの要望や、声にならない潜在ニーズを探ることはとても大切なことだ。そのため弊社では、お客さまとの直接対話を各社にお勧めしている。

方法はいくらでもある。定期的にお客さまに集まっていただき、座談会やイベントを開催してもいいし、アンケートもいい。とにかくいつでも会社にアクセスできて、意見を言える「参加型1」の体制を整えておくことだ。
いまのお客さまは、意見を求められたら、遠慮せずにはっきりと自分の考え方を発言できる人が多い。繰り返すが、この本音の意見こそ会社にとっては「宝の山」。

耳の痛い言葉も全部を集め、その奥に潜む「お客さまの本音ニーズ」を解決してあげる方法を考えること。これこそが会社のノウハウになるので、お客さまの本音は会社を育てる栄養剤のようなものといえる。

参加型は工夫とルール次第で未来の基本スタイルになる

とは言っても、お客さまの中には「接客されたくないし、かかわりたくない」ために通販という方法で購入している人もいる。そのため、「参加型」の方法を無理やり押し付けても、反感を買うだけだし、嫌がられて離脱されてしまう危険性もある。

それを防ぐためには、まず「参加してみたい」と思ってくれるお客さまを集めることだ。具体的には、お客さまの購入名簿(会員)とは別に、「ファンクラブ2」のような組織を立ち上げてはどうか。いわば会社に対する「ご意見番」の組織である。もちろん化粧品を使っているお客さま限定で、積極的にアンケートに答えてくれたり、会報誌などの紙面にモデルとして登場してくれたり、イベントなどに参加してくれたり、あるいは品開発のためのモニターを務めてくれたり、いろいろな協力項目を設定しておくといいのではないか。

また協力してくれたら、そのつどお客さまにもメリットや特典が付与できるような仕組みにできれば、参加意欲も高まると思う。これができるのがダイレクトの強みだと思う。

インターネットのさまざまな仕組みが、地域や時間を飛び越えて、いまこの「参加型」を大きく後押ししている。 「参加型」は一定のルールを定めないと、諸刃の剣にもなりかねないので、さまざまな工夫が必要だが、これからの通販は「参加型」が基本になってくると思う。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

お客さまの声を力に変える「参加型の仕組みづくり」は、一度形にすればブランドを大きく育てる資産になります。フォー・レディーでは、座談会・ファンイベントの企画から、会報誌やアンケートの仕組みづくり、ファンクラブ的な組織化まで一貫してご提案が可能です。御社ならではの“ファンを育てる仕掛け”をご一緒に作りませんか。

用語解説

  1. 参加型-企業と顧客が双方向で関与し、顧客自身がブランド活動や商品開発に主体的に参加できる仕組み。従来の「一方的な販売促進」から進化し、LTV向上やロイヤル顧客育成のために注目されている。 ↩︎
  2. ファンクラブ組織-既存顧客の中から、ブランドへの共感や参加意欲の高い層を組織化する仕組み。モニター協力、座談会参加、会報誌への登場などを通じて、コミュニティ的な関係を強化。CRM施策の一環として位置づけられる。 ↩︎

深掘りQ&A

ファンクラブ的な組織をつくる場合、対象者はどのように選定すればよいですか?

会報誌や商品に参加者募集のチラシを同梱し、自主的に応募していただくことで前向きなお客さまが集まります。そうすることで、「熱量の高いお客さま」が核となり、ファンクラブも活性化しやすくなります。

参加型施策を実施する際に、コストや運営負担をどうコントロールすればよいですか?

全顧客を対象にする必要はなく、まずは少人数で始めるのがおすすめです。例えば年2回の座談会やオンラインアンケートからスタートし、効果や反応を確認してから規模を広げると、無理なく継続できます。

お客さまの「耳の痛い声」をどのように社内に活かせばよいでしょうか?

個別対応で終わらせるのではなく、一定数の声が集まった段階で「改善テーマ」として社内で共有・議論することが大切です。特に商品開発部門やコールセンターと連携し、KPIや改善施策に落とし込むと、組織の学びにつながります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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