無料サンプルを配布しても、本品購入につながらない――。通販事業に参入したばかりの企業が直面しやすい課題です。実は、成功している企業には「サンプルから本品購入へと導くストーリー」が必ず存在します。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』4月16日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.26」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。
サンプル請求後の一手が決め手 ― 引き上げ率を高めるシナリオづくり

当社はもともと化粧品のメーカーなので商品には自信がありますが、通販事業に参入したばかりで認知度が低く、とにかく多くのお客さまに知ってもらうことが第一と考え、商品の無料サンプルを配布しています。サンプル請求自体の反応は好調なのですが、そこからなかなか本品購入につながりません。どのような対策が考えられるでしょうか。
サンプルやお試しセットを目的にアクセスしてきた見込み客を、本品購入へと導く仕掛けは、化粧品通販では王道ともいえる手法です。中でも幅広いお客さまに商品を知ってもらうことを目的とした「無料サンプル」と、本当に欲しいお客さまをセグメントしたいための「有料サンプル」と、大きく分けて2通りの方法があります。
当然、有料サンプル請求者の方が、その後の本品購入に結び付く確率が高いということは予測できます。通販化粧品ビジネスが好調だった時代には、なかなか本品購入に結び付かないと言われていた「無料サンプル」から本品購入率が3ヶ月で30~40%台というような優秀な企業もありました。それが現在では、いろいろなフォロー施策をしてもせいぜい10%台という状況が多いようです。
過剰サービスに慣れてしまった消費者意識や景気の低迷などにより、その厳しさはますます大きくなるばかりです。しかし現在でも、同じ無料サンプルからでも、高い本品購入率を誇る会社もあるようです。
好調企業と不調企業を分ける“対応の差”

弊社では、大手通販化粧品企業を対象にサンプル取り寄せの「ミステリーショップ調査」を行っていますが、売り上げが好調な企業とそうでない企業には、顧客対応に明確な差があることが分かります。
売り上げが好調な企業は、サンプル請求から本品購入に誘導するまでのストーリーがしっかりとシナリオ化されているのです。一方、売り上げが伸びていない企業は、電話をかけても、お客さまにただ送付先を聞き、ただサンプルを送るだけで終わってしまっています。
通販化粧品が絶好調の時代であればそれでも本品購入につながるケースがあったかもしれませんが、今はそんな時代ではありません。
サンプル請求してくるお客様は、肌悩みを抱えているはずです。その悩みに徹底的に寄り添い、手厚いフォロー1で悩み解決に導かなくては、お客さまは本品購入に動いてはくれないのです。
無料サンプルを“育成の入口”に変える発想を

では、本品購入へ導くストーリーとはどのようなものでしょうか。

これらのストーリーがお客さまの立場に立って心地よい情報提供になってこそ、お客さまは初めて本品を購入したい、使ってみたいという気持ちになるのです。通販はリストビジネス2ですから、無料サンプルをたくさんの消費者に配布し、見込み客リストを入手することは、とても意義のあることです。
しかし、そこで終わってしまっては、それは単なる「無料奉仕」です。
御社では、サンプルから本品へとつながるストーリーをしっかりと築いていますか?まずはそこから見直し、考えられる施策をどんどん試してみてください。お客さまの肌悩みに寄り添うおもてなしの心があれば、解決の道はおのずと見えてくるはずです。

鯉渕登志子
お客様の肌悩みに寄り添い、納得感のある本品購入へと導くこと。フォー・レディーは、そのためのシナリオ設計とコミュニケーションづくりを得意としています。まずは、お気軽にご相談ください。
用語解説
- フォロー施策―サンプル送付後にDM・電話・メールなどで行う追加アプローチ。商品理解や購入意欲を高め、本品購入へ導くために欠かせない。 ↩︎
- リストビジネス―見込み客の住所や連絡先などを集め(=リスト化)、DMや電話などで継続的にアプローチして売上につなげる通販特有のビジネス手法。 ↩︎

















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