化粧品ブランドの信頼は「美容メソッド」で決まる─使い方がブレると顧客は離れる

同じブランドなのに、いつの間にか「使い方」が変わっている──そんな違和感を覚えたことはありませんか。化粧品は、ただ“使うもの”ではなく、“どう使うか”まで含めて価値が完成する商品です。では、その使い方が揺らいだとき、お客様はどのように受け取るのでしょうか。今回のコラムは、『週刊粧業』2022年9月5日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.77」です。ぜひご覧ください。

※本コラムは2022年当時の状況を前提に執筆しております。現在と異なる情報を含む可能性がありますが、課題の捉え方や発想のヒントとしてご活用いただければ幸いです。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

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使い方が変わると、なぜ違和感が生まれるのか

多くの化粧品会社のお手伝いをしていると不思議に思うことがある。その一つが「美容メソッド」についての考え方だ。

ずっと「化粧水はコットンでつけてください」と使用方法に記載していた化粧品会社が、商品が多くなるといつの間にかコットン使いを推奨せず、「手に取って、ハンドプレスしながらつけてください」という表記を使うようになった。

商品が変われば、テクスチャーも変わる。使い方も変わって当然。世の中のトレンドという変化もある。しかしかつては「手でこすると肌に刺激を与える」ので、コットン使いを推奨していたはず。

私はコピーを書く立場なので、ついつい「いいのかな?」と考えてしまう。

同じようなことは、多くの化粧品会社で頻発している。例えば「うちはオールインワンです。」と主張していた化粧品会社が、その後何の説明もせず、美容液や化粧水を推奨してくる。「オールインワンで、手軽なのが良い」と思っていたお客様にとっては、何か裏切られたような気持ちになってしまうのではないだろうか。具体的にクレームもあると聞く。

化粧品は「使い方」まで含めて完成する商品

このように化粧品は他の生活雑貨と異なって「使用して初めて効果を感じる商品」なので、モノとして販売するだけでは完成しない。正しくあるいは上手く使用していただくことで完成する商品だ。

そのため、「化粧品の使い方」はとても大きな意味を持つ。テクスチャーの肌触りから香りやつけ心地、つけた瞬間の心地良さだけではなく翌朝の肌状態まで、使用して初めて良さが分かる。だからこそメーカーが推奨する使い方は、商品そのものと同じようにとても大切な情報だ。

そのため自社の美容についての考え方を「美容メソッド」としてまとめているのだ。使用手順にも開発者のこだわりが出る。例えば3ステップでも化粧水→美容液→クリームと塗布するのか、美容液→化粧水→クリームとつけるのかは大きく異なる。美容液が通常タイプではなくて、「導入美容液」的な役割を果たすものだった場合は、当然最初につけるべきだと納得できる。

またシンプルケアを謳っている会社が、2ステップ使いを推奨するのも理解できる。ただしその後、様々なスペシャルケアアイテムを推奨する場合は、お客様が納得できる合理的説明が必要だ。

ブランドの信頼をつくる「美容メソッド」という芯

他にもクレンジングやクリームを使う時は「マッサージをしながらくるくると円を描くように、お手入れする」という会社もあれば、「なるべく手で触らない。刺激を与えない」とする会社もある。

一方「泡を自分で作る石鹸は、空気に触れるのでNG」という開発者は、空気中の雑菌を嫌うため、泡で出てくる洗顔フォームしか作らない。このように「美容メソッド」は商品開発にも深く関わってくる。

「美容メソッド」はそのブランドの根本美容の考え方を表したもので、考え方の「芯」ともいえる。ところがそもそも「美容メソッド」=やり方、方法を設定していない会社も意外に多いようだ。

もちろん「ごく一般的な使い方でOK」と決めても良い。ただし美容に対するこだわりが少しでもあるなら、自社のオリジナル「美容メソッド」を設定した方が消費者目線からも好感が持てる。

「美容メソッド」は、新発売する商品の事情に合わせて、コロコロと変化するようなものではなく、どんな女性になってもらうのか、どんな美しさを目指すのか、どんなお手入れをしてもらいたいのか、開発者の美容に対する根本的な考え方なので、簡単には変えられないために信用される。

今こそ、オリジナルの「美容メソッド」を打ち立てよう。それが納得できる内容なら、お客様にも長く支持されるはずだ。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

化粧品は、売って終わりではなく「使われて完成する商品」です。だからこそ、使い方まで含めた“ブランドの設計”が、顧客の信頼と継続を左右します。私たちは、消費者の本音をもとに、貴社ならではの「美容メソッド」とコミュニケーション設計を一緒に考え、長く選ばれるブランドづくりを支援しています。

深掘りQ&A

美容メソッドは、どのタイミングで設計すべきですか?

本来は商品開発の“前”から考えるべきものです。
多くの企業は、商品ができてから「どう使ってもらうか」を考えますが、本来は逆です。どんな使い方で、どんな体験をしてもらいたいかという“美容メソッド”があり、その実現手段として商品が設計されるべきです。この順番が逆になると、後から説明がつじつま合わせになり、違和感が生まれやすくなります。

美容メソッドがブレているかどうかは、どう判断すればいいですか?

 「商品ごとに説明が変わっていないか」で判断できます。
例えば、

  • A商品では“摩擦NG”と言っているのに、B商品ではマッサージ推奨
  • シンプルケアと言いながら、後からアイテム追加

このように、商品単位で説明が変わる場合は、メソッドが統一されていない可能性があります。ブランド全体で一貫した考え方になっているかを見直すことが重要です。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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