定期購入と都度購入、成功するのはどちら?判断のポイントとは

定期購入を導入したものの、思うように定着しない──。多くの通販化粧品会社が直面する悩みです。「都度購入」との並走、割引や販促の見直し、情報提供のあり方など、影響する要素はさまざま。本稿では、実際の企業事例を交えながら、何が“定期”の成長を妨げているのかを探っていきます。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』11月13日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.119」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝定期購入と都度購入、成功するのはどちら?

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どちらの顧客を大切にするのか──まずは方向性の決定から

通販化粧品会社
担当者様

お客さまのLTVを拡大するために、他社でも導入している「定期購入」施策を取り入れました。しかし従来の「都度購入」のお客さまへの対応も並走しているので、なかなかうまくいきません。

「都度購入」を販促のメインにしておられた会社さまが、「定期購入」メインの戦略へと切り替えたことがありました。当社が販売データを分析して、お薦めしたからです。なぜ提案したかというと、「都度購入」のお客さまと「定期購入」のお客さまについてそれぞれ一人当たりの継続率及び累計LTVを算出し比較したところ、定期顧客の方が3倍程度の売上高があるという結果が得られたからです。

当時の定期購入顧客は全体の10%にも満たない比率だったので、全体集計では都度購入が圧倒的に大きな売上高を占めていました。

しかし当社では、この会社さまの将来を考えた場合、客単価の高い、定期購入のお客さまにシフトすべきだと考えて、あえて定期購入メインの仕組みを提案しました。お客さまが毎日使用する商材だったことも、そうした提案を行った理由の一つでした。

つまり「どちらのお客さまを大切にしますか?」という問題です。相談者さまの会社の商材や、お客さまの購入理由、購入頻度などを総合的に考慮し、判断すべきです。

これまでの販促スタイルを続けて「都度購入」メインで進めるか、お客さまのLTVを上げることのできる「定期購入」をお薦めするか、あるいは、コストは掛かるが、両方を並走させて、お客さまの利便性を追求するか─。まずは販売データを細かく分析して、その方向性を決めるべきです。

切り替えは“長期戦”。都度購入ユーザーへの配慮が鍵

事例にあげた、都度購入メインから定期購入メインに切り替えた会社さまは、その後の対応がとても大変でした。都度買いを楽しみにしているお客さまたちの期待を裏切らないように、少しずつ販促品を減らしました。一方で、常時まとめ買いや割引率をメイン訴求にしていた売り方を改めて、正常価格に戻しつつ、定期購入のお客さまが一番「お得に購入できる」仕組みに変えていったのです。

それも辛抱強く、長い時間をかけて、商品のリニューアルタイミングなどには別ブランドを立ち上げるといった手間暇をかけて切り替えていった長期作戦でした。その結果、今では定期購入比率が60%を超えて、安定した運営ができています。

定期購入で最も気を付けなければいけないことは、会社側が「お客さまが定期購入に申し込んでくれたから、これで安心」と思い込み、お客さまへの情報提供がおろそかになってしまうことです。

大切な定期購入のお客さまにこそ充実した情報をお届けすべきです。何しろLTVが高いお客さまたちなのですから。

定期購入は単なる「定期的に商品を買ってくれるお客さま」ではありません。商品と一緒に、お手入れの情報や、商品そのものについてもっと深く知るための情報などを、十分に提供する必要があります。定期購入のお客さまにお届けするべきなのは、商品だけではありません。「商品にひもづく、体験や共感の価値」がとても重要なのです。

企業都合ではなく“お客さま目線の定期購入”へ

さらに大切なことは、お客さま目線で「定期購入の価値」を見直すことです。

企業側の販促テクニックとしての定期購入ではなく、「定期的に届く便利なシステム、いつでも相談できて、融通も利く」「しかもちょっとお得な買い物ができる」といった、お客さまにとっての、定期購入本来のメリットをもっと訴求するべきです。

無理やり定期購入に誘導するのではなく、お客さまが仕組みを十分理解した上で、ストレスなく購入していただける「本来の定期購入の方法」に戻すことが大切です。それがお客さまに安心感と信頼感を与え、ストレスのない購買体験が実現し、継続して購入してくださるお客さまが増えるのです。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

お客さまが自然に選びたくなる定期購入へと導くには、“便利さ・安心感・お得感”という本来の価値を丁寧に伝えることが欠かせません。その積み重ねがブランドへの信頼となり、長く続く関係を育てていきます。フォー・レディーは、貴社の価値を高める仕組みづくりを一緒に進めてまいります。

深堀り!Q&A

定期購入を増やしたい時、まず何を改善すべき?

 “入口”の設計です。定期購入は、継続施策以前に「申し込み動機」が圧倒的に重要です。
・初回割引に頼りすぎて動機が弱い
・商品価値が伝わらず「安いから申し込んだ」状態
・初回セット内容が使いこなせず離脱につながる

こうした入口の課題が離脱率を押し上げます。定期の改善は “初回の体験価値” を最適化することから始まります。

定期購入の継続率をもっと高めたいが、何を指標にすべき?

“理由別離脱率” を見ると改善ポイントが明確になります。「効果を感じない」「余る」「価格が負担」「使い方がわからない」など、同じ離脱でも原因が全く違います。原因ごとに施策が変わるため、離脱理由を分類し、理由ごとの改善案を考えて一つずつ対応していきましょう。

定期購入の「お得感」を強く出すと、都度購入が落ちませんか?

 落ちます。だからこそ“お得以外の価値”が必要です。定期は価格競争ではなく、「使い方のフォロー」「相談チャネル」「安定して届く安心感」「ライフスタイルに合う柔軟性」など、“お得以外の理由” を積み上げることで初めて長期化します。価格だけで定期化したお客さまは離脱しやすい傾向があります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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