シニア向けエイジングケア化粧品の市場は今後の成長が期待される分野です。しかし、販売現場では売上が伸び悩むケースも少なくありません。最新技術を駆使した商品であっても、リアルな悩みや価値観に共感しなければ、心には響きません。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』1月17日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.9」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。
「響かない」理由は、社内にシニアの視点がないから

通販事業担当者
今後の、市場の拡大が見込まれている「シニア向け化粧品の通販」事業に参入しました。若手社員がいろいろと考えて企画していますが、期待したほど売れ行きが伸びていません。「シニア向け化粧品」の販売戦略で注意すべきことは何でしょうか。
最近、シニア世代1に向けた「エイジングケア化粧品」が相次いで発売されています。商品開発には最先端の技術や有効成分2が使用されていることが多く、期待も高まるところです。
しかし正直なところ、各社とも「シニア世代の研究は十分なのだろうか」と、時々不安になることがあります。本当にシニア世代の女性たちの心に響く、商品企画や販売戦略が構築されているのでしょうか。
響かない、間違ったコミュニケーションを防ぐには?

エイジングケア化粧品は、シニア世代の女性にアプローチする化粧品なのに、ほとんどの会社が「シニア世代の女性がかかわっていない」のが現状ではないでしょうか。
私自身もこの年齢になって初めて、シニア世代のカラダの悩みや肌の悩みを実感し、やっと先輩たちが訴えていたことを理解できるようになりました。
それ以外にもシニア世代の過去の化粧体験や現在の生活実態を知らないと、本当に役立つ化粧品は作れないと思うのです。
どんなに有効成分がたっぷり入っていても、圧倒的に支持される完成度の高い製品にはならないような気がします。また販売戦略に関しても、シニア世代が「なるほど」と思ってもらえるような訴求や、彼女たちの美容情報ルートを知らないと、適切な販促活動はできないような気がします。つまりシニア世代に化粧品を売るには、彼女たちの「本音」をよく理解することが大切だと思うのです。
ところが化粧品に限らず、日本の企業では女性たちが定年退職時期まで勤め上げることは稀です。まして戦略立案に参加したり、判断する地位に就くことも多くありません。つまり発言権のあるシニア世代の女性が、企業の中に残っていないのです。お客さまのリアルなニーズを代弁できる人たちが会社の中にいないまま、シニア世代に支持される商品を生み出すのはたいへん難しいと思います。このままでは、実際のお客さまとの間に感覚のズレ、「間違いコミュニケーション3」が起きてしまうのではないでしょうか。
それを補うためには、何らかの形でターゲット世代の女性を参加させ、商品開発はもちろん、サービスやコミュニケーションなどあらゆる面に「シニア世代のリアルな本音」を取り入れる必要があります。
年齢にとらわれない、“前向きな美”への共感を呼ぶ提案を

最近のシニア世代は見た目も考え方も非常に若く、自分を年寄りだと思っていません。美意識も高く、自分磨きを怠らない人たちです。しかし肉体は確実に老いていくため、いかに若々しさを維持するか、またさまざまな悩みの解決法方や新しい情報を伝えて「こうすれば若々しくおしゃれでいられる」という、さらに前向きな気持ちになっていただくことが大切です。
そんなシニア世代の年齢に合わせた「高品質感」「ゆとりある高級感」を感じさせる商品やサービスを徹底すれば、必ず支持を得られることでしょう。
そのためにも、早急にシニア世代のお客さまの「本音の声」を集められる体制づくりをするべきです。

鯉渕登志子
フォー・レディーでは、ターゲット世代へのインタビューや座談会を通じて、お客様の“本音”を見える化。商品開発からコミュニケーション設計まで、一貫して生活者視点に立ったご提案が可能です。
用語解説
- シニア世代-一般的には60歳以上の方を指すことが多いですが、マーケティングや化粧品業界では、「年齢」よりも「ライフステージ」や「価値観」でとらえる傾向が強まっています。 ↩︎
- 有効成分-医薬部外品などで、効果効能が認められている成分。美白・抗炎症・保湿・シワ改善など、目的に応じた成分が配合されている。 ↩︎
- 間違いコミュニケーション-想定していた顧客像や伝えたい価値と、実際の顧客の感じ方やニーズとの間にズレがある状態。販売戦略が空回りしやすい。 ↩︎

















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