ECでの新規獲得が難しくなり、次の手立てを模索する企業が増えています。その中で、「紙媒体が効率につながるケースがある」という声も聞こえるようになりました。とはいえ、単に紙に戻ればよいわけではありません。自社の状況や顧客層を踏まえたうえで、どんな点に注意して取り入れるべきなのか──。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』6月12日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.115」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
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EC獲得の高騰で、紙媒体は“ニッチメディア”として再評価されている

担当者様
このところずっと新規獲得はECメインでやってきました。しかし最近は効率が悪くなり全く採算が合いません。紙媒体にも可能性がある……と聞いたのですが、どんなことに注意して取り入れたらよいですか?
ECで新規獲得を展開している多くの会社が、その獲得コストの高騰にあえいでいる現状は、あらゆるところから聞こえてきます。そのため各社は、少しでも安く新規を獲得できる方法を探しています。
例えば「イベント」や「紹介」などとともに、「紙媒体の見直し」も選択肢の一つとして挙げられます。紙媒体は、近年広告出稿が激減したために、広告料金が安く抑えられる傾向にあります。そのため媒体のターゲット層と獲得したい顧客層が合えば、効率の良い新規獲得ができるかもしれません。かつてのように「マス広告」として紙媒体を扱うのではなく、「ニッチメディア」の位置づけで媒体候補に含めるのもよいでしょう。
そのためには、自社のロイヤル顧客の特徴をしっかりとつかんでおく必要があります。そもそもどんなお客さまを獲得したいのかが明確でなければ、メディアを選択することもできません。特にニッチメディアならなおさらです。ECサイトがAIを活用して最適なSNSを選ぶように、紙媒体についても、ターゲット層にあった媒体セレクトをしたいものです。
紙をきっかけにロイヤル層が戻った企業の成功例

ある会社では長い間ECのみで新規獲得をしていました。さらに知名度の高いタレントのコメントも掲載していたため、1人当たりの新規獲得コスト(CPO)はかなり安く抑えられていました。しかし、2回目、3回目の離脱が多く、いつまでたってもロイヤル顧客が増えない状況がありました。一方、わずかに残っていた20年以上の愛用歴があるお客さまたちを調べてみたところ、最近の広告で獲得した顧客層とはまるで異なる、落ち着いた大人の女性たちであることが判明しました。
そこでロイヤル顧客層の方々に向けて、記事を多く掲載した簡単なDMを送ってみたところ、大変喜ばれて、掲載していた新商品の売れ行きも、予想以上の成果を上げることができたということです。お客さまからは、「手に取れるお知らせが久々に届いたことが嬉しかった」とのご意見をいただいたそうです。
その後、この会社では、長い間買い続けてくれているロイヤル顧客だけに、紙媒体のミニ会報誌を届けるようになりました。同時に、ティーパーティーのようなリアルイベント(お手入れ会)を実施し、その様子もこのミニ会報誌に掲載することにしました。すると次第にこのイベントは人気となり、参加希望のお客さまも増え、たいへん喜んでもらえるようになりました。紙媒体がきっかけで新たなコミュニティーができた事例です。
紙媒体は“特別なおもてなし”として機能する

効率を最優先させてお客さまを誘導しようとしても、そもそもどんな方に顧客になっていただきたいのかが明確でなければ、なかなか固定客として定着してもらうことはできません。ご案内する商品の特徴にもよりますが、丁寧に紙媒体でお知らせすることは、一部のお客さまからはもはや、「特別待遇」のおもてなしとして感じていただけるようです。手軽でコストもかからないメールのお知らせは、スピーディーにお得な情報をお届けするのには適していますが、おもてなし感を表現するには、やはり紙媒体が最適です。紙質やビジュアル、手元に届くリアルな感覚などを含めて、お客さまに特別感を感じてもらえるのです。
この会社はその後、お客さまの属性や傾向によってコミュニケーション内容を精査した結果、長年ご愛顧くださっている、シニア層のロイヤルユーザーさまとは、紙媒体とイベントへのご招待などを通してつながりを持つようになりました。
ミニ会報誌の記事は、創業時の思い出や、コールセンターに寄せられたお客さまの声などですが、読んでくださっているロイヤル顧客の方々は、会社に対する理解が深まり、商品のみならず会社にも関心を示してくださるようになりました。
お客さまとのコミュニケーションは、スピードやコストも大事ですが、情報を受け取った人がうれしくなるような、心の交流が最も大切だと思わされる事例でした。

鯉渕登志子
まずはロイヤル顧客を中心とした顧客調査をしてはいかがでしょうか。フォー・レディーは、その分析からコミュニケーション設計まで一貫して伴走し、“戻り・育つ”関係づくりをお手伝いします。

















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