価格メリットだけでは続かない―定期ビジネスを育てる本当の条件

定期購入1の顧客がすぐにやめてしまうのは、価格条件が理由なのか、それとも使い方や体験の問題なのか。長く続けてもらうための工夫は、どこに隠されているのでしょうか。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』11月28日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.59」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

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定期継続のカギは「使い方指導」と「楽しさ・感動の演出」

通販化粧品会社 担当者

定期購入の初回割引販売の条件として購入回数の縛りをなくしたところ、1,2回で離脱していくお客さまが増えています。理由を聞くと、「商品が余っているから」とのこと。割引サービスや継続プレゼントなどは行っていますが、お客さまを離脱させないために、他にどんなアプローチが必要でしょうか。

最近、同じような話をよく耳にします。
そのたび気になるのは、新規集客の方法はどうなっているのか、本当に定期購入を希望しているお客さまを集めているのか、ということです。本来の定期購入は、商品を使用してその良さを実感してから購入していただくのが理想です。

しかし、現実には「定期加入でもう1個プレゼント」「定期加入で初回半額」など、価格メリットを前面に打ち出した誘導が数多く見受けられます。このように価格メリットのみを目当てに購入してくださるお客さまは、本当に商品のファンになっているわけではないので、安定した定期顧客になりにくい傾向にあります。

各社それぞれの事情があるとは思いますが、定期加入の条件を長期的な視点で考えることが、離脱客を減らすことにつながるのではないでしょうか。

本当のスタートは、“使ってもらい効果を実感いただいてから”

定期購入を中止、または休止するお客さまに理由を尋ねると「商品が余っているから」という回答をよく聞きます。スキンケア化粧品なら一般に1,2ヵ月で1本使い切るように設計され、定期購入もそのペースで組まれているはずです。それが余るのは、お客さまが適格な使用方法や使用量を守っていないためと考えられます。

商品のお届けと同時に、正しい使い方や使用量などを分かりやすく解説した「使い方ガイド」などを同梱したいものです。適切な使用量、使用方法でお手入れし、効果を実感していただくことが、ファンになっていただく第一歩です。

人はなかなか習慣を変えられないものです。商品を変えても、季節が変わっても、あるいは若い時からのお手入れ方法から抜け出すことができず、自己流の使い方を続けているお客さまは、結構多いものです。早めに自社の推奨するお手入れ方法をご提案し、慣れていただきましょう。

お客さまに正しい使い方を求めるだけでなく、会社側からも正しく使っていただくための工夫が必要です。例えば、ジャーの内蓋に使用量や使い方をイラストで表示したり、スポイト式の美容液などに目盛りを付けたり……。化粧品会社の中には商品を買ってもらう販促の工夫は熱心なのに、使っていただく工夫にはあまり関心がなさそうな会社も見受けられます。

化粧品の仕事は「売って終わり」ではなく、お客さまに正しく使っていただき、キレイになったと実感していただくことを着地点とするビジネスだと思います。ぜひもっと正しく使っていただく工夫をしてほしいものです。

特別感ある体験が「この会社で良かった」をつくる

使っていただく工夫と併せて考えたいのが、定期購入のお届けを心待ちにさせるための演出です。誕生日の割引クーポンや継続プレゼントのようなお決まりの特典だけでは、お客さまにマンネリ感を与えてしまいます。もっとお客さまがワクワクして、幸せな気持ちになるような「おもてなし的サービス」を提供したいところです。

しかも、お客さまを感動させるのは、想定外のサービスです。
通信販売なら、商品を送る箱の中にひと工夫するのも良いでしょう。箱を開けたときに季節を感じさせる色やモチーフが飾られていたら、商品の到着が楽しみになるかもしれません。また時には飛び出す仕掛けのグリーティングカードや自社オリジナルの香りのプレゼントなど、特別感のある演出があったら、「この会社で良かった」「これからもずっと続けたい」と思ってもらえるのではないでしょうか。

商品力やコンセプトがしっかりしている化粧品であれば、丁寧な使い方指導、お手入れのモチベーションが上がるような工夫、おもてなし的なサービス2の3点を徹底することで、定期離脱は減少するとともに、ファン化が促進されるのではないでしょうか。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

定期制度を強化したい、離脱を防ぎたい。そんな課題に対して、制度設計からお客様とのコミュニケーション設計まで、フォー・レディーは一貫してサポートいたします。ぜひ、お気軽にご相談ください。 

用語解説

  1. 定期購入(サブスクリプション型販売)-同じ商品を一定の間隔で自動的に届ける販売形態。通販化粧品では1~2カ月に1本といったサイクルで組まれることが多い。企業にとっては安定した売上が見込め、顧客にとっては買い忘れ防止や割引特典などのメリットがある。 ↩︎
  2. おもてなし的サービス-顧客の予想を超える工夫や心遣いを込めたサービス。単なる価格メリットではなく、驚きや感動、特別感を与えることで、ブランドへの信頼と愛着を育む。 ↩︎

深掘りQ&A

なぜ「商品が余る」という理由で解約が多いのでしょうか?

スキンケア化粧品は通常、1~2カ月で1本使い切るように設計されています。しかし実際は、自己流のお手入れや使用量の誤りにより消費ペースが落ちることが多いのです。その結果、商品が余り、解約や休止につながります。

割引やプレゼントを強化すれば離脱は防げないのですか?

一時的に解約を先送りする効果はありますが、根本的な解決にはなりません。価格だけでつながるお客さまはブランドへの愛着が薄いため、よりお得な条件を見つければ簡単に離脱してしまいます。

 離脱防止とファン化は、どちらを優先すべきですか?

実は両者は表裏一体です。正しい使い方を伝えることが離脱防止につながり、ワクワクする体験を提供することがファン化につながります。どちらも同時に設計することが、定期ビジネスを安定成長させる近道です。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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