ロイヤルユーザーへの取材から見えたのは、長期愛用を支えるのは“商品”よりも“ブランドの姿勢への共感”だという事実。お客様は肌悩みだけでなく、「このブランドが好き」「信頼できる」という視点で選んでいます。ブランディングの本質は、きれいの先にある“生き方の提案”。理念を貫く姿勢が、真のファンを育てる鍵です。今回のコラムは、『週刊粧業』9月4日号に掲載された「激変するコスメマーケット 第34回」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。
30年来の愛用者が語る“変化”と“本音”

最近立て続けに、幾つかのブランドで愛用者のグループインタビューを行った。しかも5年、10年と長く愛用しているロイヤルユーザーばかり。中には30年来の愛用者だとおっしゃるお客様まで出席してくれた。
じっくりお話を伺っていると、長い期間愛用し続けてくれる理由に共通項があると気づかされる。さすがに30年来の愛用者ともなると、製品は何度かのリニューアルを経ているので、
「前のシリーズの方が好きだった」とか、
「なくなってしまったけど○○が良かった」などの話題も出てくる。
それでもお客様たちが使い続けてくれる根本的な理由は、「このブランド、あるいは会社が好きだから」ということだ。
好きな理由はいろいろある。「自然な感じが好き」とか、「他社にはない美容の考え方が好き」とか、「女性社長の生き方に興味がある」とか。
ブランドの姿勢がファンを育てる時代へ

そもそも化粧品は、「肌悩みを解消してきれいになりたくて買う」ことや、「テクスチャーの心地よさが好き」だとか、「シンプルケアが時間のない私にあっている」などの理由で最初は選ばれているものだと思う。
ところが長く続けているロイヤルユーザーは、それらの条件はクリアした上で、もっと根本的な「ブランドの考え方や主張」のようなものに賛同しているのだ。今各社で盛んに言われている「ブランディング」の時代に、いよいよ突入したのだと感じさせられた。
会社やブランドの主張は、ロゴマークや訴求キーワードを変えるだけでは構築できない。もそもの考え方やコンセプトは表面的な表現を変えるだけではすぐに見破られる。ブランドを価値あるものにするためには、基本の考え方を再度しっかりと固めて、商品企画、販売促進、顧客サービス、システム開発、フルフィルメント1まで徹底させる必要がある。
しかも本気で自らの主張を明確にしておかないと、言葉の端々や写真撮影の方法など表現演出のトーン&マナー2にまで表れてしまう。そのため一過性のものではなく、常日頃から本気で考えている価値を表現しないと、本当のファンは育成できない。
化粧品ブランディングは“生き方”の提案へ

今から20年以上前の話だが、ある化粧品メーカー様の依頼で、「10年後、20年後の日本の女性たちの意識はどう変化するか?」という予測レポートを依頼されたことがある。
自分自身も若かったので、仕事であることを忘れてレポート作成に没頭した記憶がある。データを元に予測レポートを書いたが、私自身が「こうなったらいいなあー」とずっと考えてきたことを多く盛り込んでしまった。すなわち「女性がもっと自立して、社会の中で発言権が増し、男女平等がもっと進む‥‥」というようなことを書いたような気がする。
振り返ってみると半分当たっている気もするが、予測とは大きく離れていることも多い。このレポート作成を通じて私は、「化粧品を販売するということは、女性たちの生き方まで考える姿勢がないとダメだ」と教えられた。
そして今改めて考えてみると、化粧品メーカーの「ブランディング」とは、結局のところ、「女性たちにどんな生き方をして欲しいのか」、その理想の姿をバックアップするような姿勢がないとダメだと思う。
だからこそ、長い期間愛用してくださっているお客様は、その会社やブランドの姿勢を見ているのだと思う。最近のお客様の動向を見ていると、単に安く買える商品に手を出すだけでなく、しっかりした生き方を提案しているような広告には安定した反応があることが分かる。
つまりお客様はすでに、ブランドのコンセプトや主張、考え方をしっかり見比べて化粧品メーカーを判断しているようだ。そのような賢い消費者に、その場限りの付け焼刃のコンセプトやテクニックだけの販売促進は通用しない時代が近づいている気がする。

鯉渕登志子
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