団塊世代を動かす!シニア向け化粧品通販の成功ポイント

今後の成長が期待される「シニア向け化粧品通販市場」。中でも団塊世代は、自立心と学習意欲が高く、まだまだ社会とのつながりを求めている“若々しいシニア”です。しかし、彼女たちの心をつかむには、画一的な高齢者像では不十分。では、どのような仕掛けが成功カギとなるのでしょうか。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』6月20日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.13」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝シニア向け化粧品通販の成功ポイント〟

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「老けこみたくない」がキーワード──団塊世代の“本音”に応える

通販化粧品会社 担当者

今後有望だと予測されている「シニア向け化粧品通販」事業に新規参入したいと考えています。以前このコラムで、シニア層の「本音」を取り入れることが不可欠と書かれていましたが、具体的にはどのような点に留意するべきでしょうか。

シニア向け商品に限らず、化粧品通販を成功させるには、ターゲット層であるお客さまのニーズを熟知した上で、商品開発、販促企画、フルフィルメントの整備をすることが必要です。

しかし、特にシニア向け化粧品メーカーの現場では、シニア世代1ではない若い人たちが商品を開発し、販促プランを立てているため、なかなか顧客層の本音のニーズを捉え切れていないように思います。 そもそも、「シニア世代」の定義はあいまいです。明確なターゲット層が定められていないのではないでしょうか。シニアといっても5歳違えば、体力も、意識も、消費意欲も、必要なものまで異なってきます。

シニア市場参入、なぜ今「団塊世代」なのか

化粧品通販で今後大きく市場が拡大する可能性のある「シニア世代」とは、1947年~1949年生まれの団塊の世代2だと私は思います。

そもそも人口が多い世代です。この3年に810万人が生まれ、他の年に比較すると、2~3割多いのです。戦後のさまざまのブームはこの人々が中心になって生み出してきました。

いま、この世代がシニア層に突入したとはいえ、現役組も存在します。まだまだ世間と関わっていたい、「老けこみたくない」と考えている若々しい老人たちといえます。

戦後の合理主義的な教育を受けたこの人々の特徴は、子どもたちに頼りたくないという自立意識が強く、学習意欲もまだまだ旺盛。また正義感が強く、社会に貢献したいと考えている人も多い。

こうした女性たちにとって、化粧品は自分磨きの手段として、手が届く「プチ贅沢」を楽しめる最適なアイテムなのです。「最後のゆとり世代」ともいわれている世代なので、お客さまとして取り込めば、今後も拡大の望める市場といえます。

「買い続けたくなる仕掛け」で信頼関係を育む

では、この団塊世代の女性たちが求めているものは?

それは常に「若々しく」あること、「老けこみたくない」ということです。具体的な肌の悩みを聞くと、シミ、シワ、たるみなどが上がってきます。もちろん化粧品なので「これを塗ったら即解決」というものは無理なので、「老けこまない」「若々しさを保つ」ために使い続けていただくことを意識した商品開発が必要でしょう。そのためには「使用感3」にこだわることが大切です。これこそ、肌感覚的なので、団塊世代の意見を取り入れる方法を考えなくてはなりません。

もう一点重要なのが、使い続けていただくための仕掛けづくり。お客さまを励まし、使い続けていただくための説得力のある販売システムを整備する必要があります。単に化粧品の使い方や効果説明だけではなく、「若々しさ」を保つためのライフスタイル提案など、知識欲を刺激し、納得させる情報を提供することが不可欠です。

まだまだ社会と関わりたい世代ですので、友達ネットワークの生まれる仕掛けも必要でしょう。フルフィルメント4も、丁寧親切に、お客さまが「自分は大切にされている」と思っていただけるように配慮する必要があります。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

フォー・レディーは、シニア女性のリアルな声をもとに、商品開発からコミュニケーション設計まで一貫してご支援。シニアの前向きな想いに寄り添い、「使い続けたい」と思われる化粧品通販を一緒に盛り上げます。

用語解説

  1. シニア世代(シニア層)-定義があいまいと書いたが、一般的には60歳以上を指すことが多い。このコラムでは特に「団塊の世代」(1947~1949年生まれ)を指しており、従来の高齢者イメージとは異なる価値観やライフスタイルを持つ層を意味する。 ↩︎
  2. 団塊の世代-戦後の第一次ベビーブーム期(1947~1949年)に生まれた世代。人口規模が大きく、消費・教育・就労などあらゆる分野で社会に影響を与えてきた。現在は70代後半で、他のシニア層と比べて自立志向や知的好奇心が強いのが特徴。 ↩︎
  3. 使用感-化粧品を使用した際の肌ざわりや浸透感、香り、仕上がりなど、使用中~直後に得られる感覚的な満足度。特にシニア層では「肌に合う」「心地よい」といった安心感が継続使用の鍵になる。 ↩︎
  4. フルフィルメント―通販ビジネス用語で業界外にはなじみが薄い。受注から発送、カスタマー対応までを含む通販ビジネスの実務オペレーション全体。シニア層を対象とする場合は、丁寧で安心感のある対応体制が顧客満足度に直結する。 ↩︎

深掘りQ&A

若い開発チームではシニア向け商品開発が難しいのはなぜ?

シニア世代が求める“使用感”や“納得感”は、数値化しづらい肌感覚や心理的満足が大きく関わります。若い世代が想像だけで開発を進めると、的外れな商品や訴求になるリスクがあるため、実際のシニアの声を取り入れる仕組みづくり、シニア世代が育ってきた時代背景や文化を理解することが不可欠です。

使用感以外に、団塊の世代に好まれる要素はありますか?

商品の「信頼感」「わかりやすさ」「生活に役立つ知識」「社会貢献性」なども重要です。特に学ぶ意欲が高いため、「なぜこのケアが必要か」といった根拠説明や、ライフスタイル提案をセットにすることで、納得して使ってもらえます。

フルフィルメントの中で、シニア向けに特に配慮すべき点は?

丁寧で安心感のある対応が基本です。たとえば、
・わかりやすい商品同梱資料
・問い合わせ時の親切な電話対応
・パッケージの開けやすさ
・「自分が大切にされている」と感じられる気遣い
など、細部に心を配ることで長期的な信頼関係につながります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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