通販化粧品のビジネスにおいて、コールセンターは今も欠かせない接点です。しかし現場では、注文処理やクレーム対応に追われるあまり、日々寄せられるお客さまの声を十分に拾いきれていないのが実情です。実はそこに、商品開発や販促企画のヒントが眠っているとしたらどうでしょうか。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』1月19日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.38」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。
クレーム対応だけで終わらせない“情報の拠点化”に

コールセンターでは注文やクレーム対応ばかりに気をとられ、お客さまの生の声を十分に拾いきれていません。商品開発や販促に生かすために、コールセンターをもっと活用するには、どうしたらよいでしょうか?
通信販売はお客さまに直接商品をお届けし、お客さまからの反応もダイレクトに返ってくる業態です。小売業のシステムとしては「ダイレクト」なことが最大の財産です。お客さまと双方向の情報交換をできることが強みなのです。
ところが現実は、商品を出荷するのに精一杯で、情報交換どころか、十分なデータ活用もままならないケースがほとんどです。今売れているデータは掌握していても、将来の顧客創出に利用することは、なかなかできていないのではないでしょうか?
また、通販企業は顧客のデータベースづくりやクレーム対応にはスピーディーに動きますが、クレーム以外のさまざまなお客さまの声を十分にヒアリングできていません。電話では注文を聞くのみで、お客様の真意をヒアリングすることが徹底できていない例がたいへん多いと思います。
中高年層には声のコミュニケーションが効果的

通販企業がお客さま一人一人に対応していくコミュニケーションツールは、コスト効率を考えると、いまのところ電話かWebしかありません。コールセンターを単にクレームや商品の受注だけの手段にしておくのはもったいないことです。お客さまのご意見・ご要望をすべて聞き取る情報拠点1にしなければなりません。
特に中高年向けの通販では、コールセンターでのコミュニケーションが重要です。安心できる電話=声で一人ひとりのお客さまに対応すれば、お客さまが今どんな悩みや問題を抱えているのかといった情報が集まってくるからです。
一方、お客さまの方は、オペレータが親身になって話を聞いてくれれば心を開くようになり、ご自分のお悩みをお話ししやすくなります。
つまり、お客さま一人ひとりのことを考えて思いやりのある対応をしていけば、お客さまの情報をお聞きし相互交流が可能になります。そして、コールセンターに集まったお声のデータを全社員で共有することができれば、小売業としてはたいへん強い武器を持つことになるのではないでしょうか?
顧客の声が次の一手を示す道しるべになる!

お客さまとのやり取りは、良いことでも悪いことでも全部記録してデータベース化し、すべての業務に活用すべきです。
私がお奨めしているコール情報のまとめ方は、お客様からヒアリングした内容を相談、クレーム&お褒め、サービス関連等の種類別&ボリューム別にまとめることと、商品別に評価内容、ご意見・要望をまとめることです。少なくともこれらの情報をデータベース化して、瞬時に業務に反映して改良・改善していく方法を講じるべきです。このように、お客さまの声に耳を傾けることで、会社の問題点や改善策が明らかになり、おのずと次にやるべきことが明確になってきます。化粧品通販会社が進むべき道は、お客さまが教えてくれると言っても過言ではありません。
今や通販会社以外でも、コールセンターのモニタリング2が経営の大きなテーマになっています。お客さまの声を貴重な財産ととらえ、それを徹底して活かすシステム構築を再度考えてみるべきだと思います。


鯉渕登志子
お客さまの声を「一過性の対応」で終わらせるのか、「未来をつくる資産」として活かすのかで、企業の成長は大きく変わります。フォー・レディーは、通販化粧品企業の現場に寄り添いながら、声を拾って整理し、経営に生かす仕組みづくりをお手伝いしています。お客さまとの対話を、次の成長戦略へと変えていきませんか?
用語解説
- 情報拠点-単なる受付や処理の場ではなく、顧客の声や要望を集約する“企業の情報ハブ”として機能する場。コールセンターを情報拠点化することで、顧客インサイトの蓄積につながる。 ↩︎
- コールセンターモニタリング-コールセンターでの顧客対応を録音・記録し、その内容を分析する仕組み。応対品質の確認だけでなく、顧客のニーズや課題を把握する経営判断の材料としても活用される。 ↩︎

















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