長く「新規獲得」を中心に成長してきた通販化粧品ビジネス。しかしここ数年、その前提が大きく揺らいでいます。広告コストの高騰、離脱率の上昇、そして“通販”が特別ではなくなった時代。では、これからの通販化粧品ビジネスに必要な視点とは――。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』10月31日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.108」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。
お客さまのLTVの高さが、真の実力&ブランドの評価に

長い間、新規獲得を中心とした販促に注力してきました。お陰さまである程度の規模にはなったのですが、このところ効率が落ちています。すぐに離脱するお客さまが多くなってきており、一方では新規獲得コストが高騰し続けています。今後はロイヤル客育成に舵を切りたいと考えています。
私も正直なところ、「通販化粧品のビジネスを取り巻く環境は大きく変わった」と思います。例えば「通販化粧品という業態そのものの位置づけが大変革を起こした」と言えるぐらいに変化しています。
特にコロナ禍を経たこの4年間に、別のビジネスのようになってしまいました。店舗閉鎖という体験を経て、大多数の化粧品会社は、「インターネットの通信販売」に参入しました。お客さまもスマートフォンが生活の一部になり、なんでも検索し、簡単に購入できる便利さを享受できるようになりました。 相次いで多くの企業や個人が通販化粧品ビジネスに参入したため、業界全体がレッドオーシャン化してしまいました。そうなると販売手法が変化するので、売れる商品も客層も変化します。通販は特別な購入手段ではなくなり、新規獲得にも膨大なコストが掛かるようになりました。そのため新規集客を一番に考えていた会社は、大きく方向転換をせざる得なくなります。単純に考えても、客数が伸びないと客単価を上げるしかないのです。
通販化粧品ビジネス、転換の時

しかし単に客単価を上げるだけではビジネスは成功しません。化粧品はあくまでも日用品であり消耗品。高級化にも限界があります。宝石やマンションを売る訳ではないので、どんなに高い商品を作っても、化粧品だけで年間何百万もの取引にはならないと考えるのが普通の感覚です。せめて客単価を上げるためには、1回限りではなく、継続して使用してもらうこと、なるべく上位商品を購入してもらうこと、少しでも使用アイテムを増やしてもらうことなどが考えられます。
それはもはやビジネスモデルの大転換をしなくてはならないということです。つまり、品ぞろえを変える、美容メソッドも変える、商品開発を変える、お手入れ方法も変えることになります。
“育成型ビジネス”へのシフトが企業を変える

ビジネスモデルを新規集客中心からLTVの拡大にシフトすると、お客さまへの訴求ポイントも変え、訴求方法も変えなくてはなりません。つまりお客さまとのコミュニケーション全体を変えなくてはなりません。レッドオーシャンの中で他社よりも優れた方法で訴求しなければならないのです。そして他社にはできない唯一無二のコンセプトを提示する必要もあります。そのためコンセプトに表現された効果を保証するエビデンスを開示する必要も出てきます。究極は会社の理念やパーパスも見直し、まったく新しいビジネスにしなければならない程の大転換です。
新規獲得でより多くのお客さまを集めるビジネスから、LTVの高いお客さまを育成するビジネスへの転換は、そんなとても大きな変革なのです。
ロイヤル顧客を育てる“信頼の仕組み”をつくる

そして最も大切なのは、ロイヤル客を育成するためのフローを考えるところですが、顧客のファンの度合いに応じたコミュニュケーションと情報提供が必要になってきます。
漫然とお客さまが買い続けてくれるのを持つだけでは、お客さまはついてきてくれません。
高い信頼を保つためには、大切な約束を守るブランディングを掲げて、理想のロイヤル顧客に育成する仕組みを作ることが必要です。その仕組みにおいては、前々からファンになってくれている現在のお客さまにどう対応するかを考えることも必要不可欠です。ロイヤル顧客こそが会社に利益をもたらす大切な存在であることは、どんな業態の化粧品販売でも変わらないと思います。

鯉渕登志子
お客さまとの関係を「一度の購入」で終わらせず、長く愛されるブランドへと育てていくために。フォー・レディーは、LTVを高める“ファン育成の仕組みづくり”を共に考え、ロイヤル顧客を育てるブランド戦略で企業の成長を伴走支援します。
















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