「面白くなければ、通販じゃない」──会員誌づくりの原点に立ち返ると見えてくること

会員情報誌をもっと魅力的にしたいのに、読まれる企画がなかなか浮かばない──そんな悩みを抱える企業は少なくありません。キャンペーン中心ではお客さまに届かないと分かっていても、では何を届ければよいのか。通販が歩んできた歴史や成長の過程をひも解くと、会員誌づくりのヒントとなる“通販ならではの価値”が見えてきます。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』7月17日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.116」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝「面白さ」の正体は思いやりだった

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

「この情報が届いたらどう感じる?」を起点にコンテンツ設計する

通販化粧品会社
担当者様

お客さまに役立つ情報を提供するため、会員情報誌のリニューアルを検討していますが、なかなか面白く役に立つ内容が浮かびません。キャンペーンばかりのDMのようになってしまっては、読んでもらえないのは目に見えています。何かヒントをいただけたらありがたいです。

冒頭から、今このタイトルを掲げることに、少しばかり躊躇(ちゅうちょ)しました。例の某TV局の最盛期のキャッチフレーズで、最近では諸悪の根源のように言われているからです。

実は、国内通販も総合通販としてスタートした草創期には、同じような合言葉で、面白く、楽しく、楽な買い物手段としてアピールされていたように記憶しています。

初期の頃は、ほとんどの会社が商品を並べて掲載しただけの「カタログ(冊子)」で販売していました。そのうち多くの商品を掲載した分厚いカタログを出す会社や、商品の解説が面白い会社等、いろいろなタイプのカタログが全盛の時代になりました。しかしそれでも、国内の通販チャネルで買い物をするお客さまは、10%にも達しませんでした。1990年代の頃です。

そのうちTV通販やラジオ通販が登場し、紙媒体だけでなく動画や音声で通販も大きな影響力を持つようになりました。

メディアが異なれば表現方法もバラエティーに富む演出ができるようになり、コンテンツの幅は広がったのです。さらにその後、アッという間にインターネットの時代が到来します。WEBの登場は、通販だけでなくすべてのコミュニケーション方法を大きく転換させました。今やWEBなしではわれわれの生活は成り立ちません。

メディアが増えても変わらない、通販ならではの価値

通販ビジネスは、この50年ほどの間に激変しました。
すべてのメディアが通販を扱い、コロナ禍以降はすべての小売業が通販機能を持っています。今や通販はわれわれの生活と切り離すことはできないビジネスモデルなのです。

しかしどんなにメディアが増えても、「通販でモノを売る」ということは、「対面販売にはできない付加価値」を出さなければ評価されません。

「スピードが早い」「どんなに遠方でも届けられる」「多くの商品を比較できる」等の機能的なメリットはもちろんですが、それにプラスして不可欠なのは「通販だからこその面白さがある」こと。つまり求められるのは究極、「面白くなければ、通販ではない!」ということになります。

面白さとは、単にお届けするだけではなく、注文の時でも、商品が届いた時でも、なおかつ使い始めてからも、お客さまに「楽しく、面白い!」と感じてもらえる何かを提供しなければいけないということではないでしょうか。

お客さまが喜ぶ瞬間を思い描き、コンテンツに落とし込む

コンテンツのアイデアが思い浮かばないというご相談ですが、サービスは相手に対する「思いやり」が原点です。お客さまを喜ばせたい、元気にさせたい、楽しくさせたい、笑顔にさせたい等、どんな些細なことでも良いのです。自分の家族や親しい人にしてあげたいと思うことを、リストアップして、できることからお客さまにしてあげることが重要です。大切なのは、こちら側の都合で考えるのではなく、お客さまの立場になって、あるいは自分に置き換えて、やって欲しいことを考えることです。そう考えれば、商品開発もサービス内容もさまざまなアイデアが浮かぶはずです。一番に大切なのは、お客さまのメリットをナンバーワンに据え、深く思いを巡らせることなのです。

その上で、お客さまの表情を思い浮かべて、どんな提案をしたら喜んでくれるか、どんなお届けをしたら楽しんでくれるか。それを追求し続ければ良いのです。場合によっては、お客さまにヒアリングし、どんな方かを知ったうえで、喜んでもらうには何をしてあげれば良いかを想像する必要があるでしょう。

お客さまが「通販で買い物をしたら楽しかった」あるいは「通販で買い物をしたら面白かった」などの気持ちになっていただければ成功!次回も購入してくれるはずです。つまり「面白くなければ、通販ではない!」のです。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

お客さまに長く愛されるブランドづくりには、日々のコミュニケーションの積み重ねが欠かせません。フォー・レディーでは、会員誌・DM・WEBを通じて「読みたくなる情報」と「関係性が深まる体験」を両立させる企画をご支援しています。もし会員誌リニューアルでお悩みでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。貴社のお客さま像に寄り添いながら、最適な形をご一緒に考えます。

深堀り!Q&A

会員誌の“面白さ”とは、結局どんな要素のことを指すのですか?

本文では「楽しい」「面白い」という言葉が出てきますが、実務として分解すると次のような要素になります。
✅新しい発見がある(「知らなかった!」が生まれる)
✅生活の中で役立つ
✅ブランドや商品に“自分ごと感”を持てる
✅思わず誰かに話したくなる
✅読み終わった後にポジティブな気持ちになる など
ワクワクさせる要素を盛り込むことで、会員誌は読まれ次の購買にもつながるはずです。

キャンペーン情報を載せるのは悪いことなのでしょうか?

悪いことではありません。ただし、「情報誌である前に販促ツールになってしまう」のが問題です。読者は“買わせるための情報だけ”が続くとすぐに飽きてしまうため、キャンペーン情報:読み物コンテンツ =2:8〜3:7程度を目安にバランスをとると、読まれる誌面になりやすくなります。

そもそも、なぜ通販は“面白さ”が必要なのですか?機能価値だけでは不十分?

配送の速さや便利さは、どの会社も提供できる時代になりました。差がつくのは「この会社から買いたい」と思ってもらえる理由です。通販は対面販売がないため、体験価値・ストーリー・驚き・ワクワクといった“人の感情を動かす要素”が、購買行動を後押しします。だからこそ「面白さ」は差別化の源泉になります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

BACK TO INDEX