DMや会報誌で満足する仕上がりを得るための「オリエンの鉄則」

パンフレットや情報誌を外注しても、満足いく仕上がりにならない……。制作会社を変えても状況は同じ。実はそこに共通する原因が潜んでいます。本コラムでは、その「すれ違い」を解消するためのヒントをお伝えします。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』7月30日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.29」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝伝わる制作物の「設計図」オリエンテーションの極意〟

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

クオリティを左右するのは、デザインよりも“最初の打ち合わせ”

新規参入3年目の化粧品通販会社 担当者

パンフレットや情報誌などのDM類を制作会社に外注しているのですが、当社が意図している仕上がりになりません。制作会社を変えても同じでした。どうすれば満足するものを作ってもらえるでしょうか?こつを教えてください。

制作物が思ったような内容に出来上がらない場合は、オリエンテーション1のやり方から見直してみてはいかがでしょうか。

実際に制作に入る前に制作物の目的、商品概要(キャンペーン概要)、媒体の概要、広告目標、トーン&マナー、連動企画などを依頼する制作会社と綿密に打ち合わせしておくべきです。

また、その内容をもれなく、明確に伝えるために事前にオリエンシートにまとめておくといいでしょう。弊社がオリエンテーションを受ける際に、お得意先様各社に提示をお願いしているのは、下記のような内容です。

▼制作の目的
文字通り何のために制作するのか、そのDM(または広告)の目的を明確にします。「新商品の告知」「無料モニター募集」「ブランド認知度アップ」など、制作物が及ぼす効果目標を明確にしておくことです。

▼商品概要(キャンペーン概要)
商品名、価格、商品コンセプト、獲得すべきターゲット層、効果効能などの機能性、ボトルデザインや商品開発に込められた思いなども漏れなく伝えてもらいます。それが明確に伝わると広告企画スタッフやクリエイターの想像力もかきたてられて、提案内容もさまざまな角度から豊富に提案することができます。

このほかターゲット層の詳細イメージや商品受容性のデータ(商品認知率/使用意向率)などがあれば見せていただきます。キャンペーン告知が目的の場合は、商品概要に加え、キャンペーン内容や期間などの基本情報、キャンペーンを企画した意図なども必要です。プレゼント訴求であれば、プレゼント品の概要やそのポイントも分かりやすく伝えてもらいます。

▼媒体の概要
DMの送付時期、対象者、部数、配布エリアなども明確にします。会報誌などであれば制作の方向性などを、広告の場合なら媒体名、発行部数、発行時期、エリアなどを明確にします。広告制作は媒体の特性2によって、表現を変えなくてはならないからです。

▼広告目標
目標の売上げやレスポンス率も最初に設定しておきます。DM送付後は、この数字と照らし合わせて結果を分析し、次のクリエイティブ案に反映させましょう。通販の広告はテストと検証の繰り返しこそが最も重要です。

▼トーン&マナー
トーン&マナーについては、自社のガイドラインがあればそれを提示していただきます。トーン&マナーはブランドイメージを左右しますので、整備されていない場合は早めに整備しておくべきです。

▼連動させたい企画や商品
連動して販売したい商品があれば、それもあらかじめ決めておくべきです。特にボリュームのある冊子類の場合、構成案づくりには不可欠です。単品の広告であれば、他の媒体への出稿連動も明確にしておくべきです。

情報共有が、成功する広告制作の第一歩

オリエンテーションによる情報共有は、広告やDM作りの第一歩。

最初に必要な情報を共有することで、クリエイターたちも制作意図に合ったアイデアを提案できます。さらに発注者がオリエンテーション内容をまとめておけば、制作会社から提出されたクリエーティブ案をチェックする際にも役立ちます。

もともとのオリエンテーションの内容に立ち返ることで、お客さまにお伝えしたいことがブレることなく、アイデア倒れの企画になることを防ぐことができます。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

フォー・レディーが大切にしているのは、単に見栄えの良いツールをつくることではありません。オリエンテーションを通じて貴社の目的や背景を深く理解し、お客様に届く言葉やデザインへと翻訳することです。DMや会報誌はもちろん、キャンペーン企画やブランド全体のコミュニケーション設計まで。経験と実績をもとに、御社の〝伝えたい思い〟をかたちにし、成果につながる制作物を一緒に築いてまいります。

用語解説

  1. オリエンテーション(オリエン)—広告や制作物の発注時に行う「事前打ち合わせ」のこと。目的やターゲット、商品情報、媒体条件などを制作会社に共有する場を指します。 ↩︎
  2. 媒体の特性―広告を掲載する媒体(DM、雑誌、Webなど)がもつ特徴のこと。読者層や配布方法、発行部数などに応じて、表現の仕方を調整する必要があります。 ↩︎

深掘りQ&A

オリエンテーションはどれくらい時間をかけるべきですか?

制作物の規模や内容によりますが、初回は1〜2時間程度を目安に、必要な情報を一通り共有するのがおすすめです。大切なのは「情報量」よりも「目的と背景をきちんと伝えること」です。

トーン&マナーがまだ整備されていない場合はどうすれば?

自社内でゼロから作るのが難しい場合、制作会社や外部パートナーと一緒にルール化を進めるのも有効です。早めに整えることで、今後の制作物すべてに一貫性が出ます。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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