お客様の心に寄り添う、化粧品ビジネスの使命

震災をきっかけに、化粧品が「心の支え」として求められる場面がありました。改めて見えてきたのは、お客様との信頼関係の大切さ。化粧品は、ただ“売る”だけでは終わらない──そこに、化粧品ビジネスの原点がありました。今回のコラムは、『週刊粧業』6月27日号に掲載された「激変するコスメマーケット 第3回」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝化粧品ビジネスの使命〟

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

被災地で女性たちを支えた生活必需品

日本通信販売協会の「ジャドマニュース」の5月号では、特集「3・11東日本大震災~会員各社はこう動いた」というタイトルで、通信販売各社の震災後の対応や動向について緊急アンケートを実施し、集計結果を掲載している。

その内容によると、会員各社の支援物資は、衣料品、食料品に次いで「化粧品」が3位になっていた。弊社は化粧品関連の仕事が多いので、震災後に得意先にヒアリングしたところ、震災直後の1週間はビジネスそのものを自粛した会社が多かったが、被災地から「シャンプーが欲しい」や「化粧品が何もない」等の声が聞こえてくるにつれ、一斉に支援や対応に動いたケースが多かったと分かった。また中には、被災地向けの出荷をすべて「お見舞い品」や「支援品」にした会社もある。その会社には、その後被災地のお客様から、多くの感謝の言葉が寄せられたと聞いている。

化粧品はライフラインに直結する商品ではないが、女性たちにとってやはり「なくてはならない」生活必需品となっていることがよくわかる。

販売後にこそ始まる化粧品の価値

今回の大震災を機会に、化粧品だけではなく、様々な商品の本来の「価値」が問いただされているという面もある。今まで以上に「価値」と「価格」のバランスについてもシビアな目が向けられるようになってきた。

また、商品の効果については、安易にメーカーの言うことや固定観念、イメージ先行のブランド価値等を信用せず、ますます口コミに頼って使用した人の体験等を参考にすることが多くなると予測することができる。

これからの化粧品の販売にとって重要なことは、そのようなお客様の不信感や疑問点を払拭してくれる、信頼に裏づけられた、お客様との関係づくりであると思う。化粧品販売の原点といえば「お客様に好感度を与え続け、使用していただくこと」である。というのも、化粧品は商品を販売しただけでは完結しない商品なので、「半完成品」を売っているという意識が、私たち販売する側に強くないといけないと思う。

化粧品は、お客様に使っていただいて初めて価値を発揮する。お客様に「使い続けてもらう」ことがまず重要だ。使い続けて、「きれいになっていただく」ことが最終目標だ。

そのために、各社ともモノづくりでは、「使用感」「質感」をとても大切にしている。ある意味では、化粧品ほど女性たちが「品質」を感じる物はないのではないかとさえ思う。わずかなテクスチャーの違いで、嫌になったり、好きになったり。化粧品は、女性のこころや気持ちと深く結びついた商品なのだ。だからお客様の気持ちに敏感に対応することや、きめ細かいフォローを忘れてはならないと思う。そして批判を恐れずに言わせてもらえば、気持が荒めば、お肌も荒むので、良い気持ちになっていただくことも大切なことだと思う。

支援から見えた、お客様との関係づくり

化粧品ビジネスは、やはりお客様が商品を気に入ってくださり、喜んで2個目3個目を買ってくれて、使い続けてくださることが、成功の証なのではないだろうか。つまりリピート客づくりが最も大切だということ。

この震災をきっかけに、公的な支援だけでなく、個々のお客様に対して大小の様々な支援を続けている通販化粧品会社の活動を聞いて、あらためてお客様とのつながりの深さが、人気の秘密なのだろうと思った。また化粧品ビジネスの上でお客様との関係づくりが、最も大切なことだと再度実感させられた。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

フォー・レディーは、顧客調査に基づいたマーケティング視点で、顧客とつながるコミュニケーションや販促施策をご提案します。

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株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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