リピート率が伸びない理由と、最初に手をつけるべき一手とは?

新規獲得の難易度が上がり、既存顧客の離脱も早まる――いま多くの通販化粧品企業が、同じ壁にぶつかっています。環境が大きく変化したいまだからこそ、成果につながりやすい“ある部分”に集中することで、売上とLTVの改善スピードは大きく変わってきます。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』8月21日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.117」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝LTVを高める優良顧客への戦略的えこひいき

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最も費用対効果が高いのは、ロイヤル顧客への「おもてなし強化」

通販化粧品会社
担当者様

新規顧客獲得は厳しい状況が続いています。リピート率も回復せず、クロスセル企画は外れてばかりで、打開策が見つからない状況です。同時にさまざまなことに投資するのは難しいので、最優先でやるべきことを教えてください。

最近、通販化粧品を取り巻く環境は劇的に変化しました。これまで店頭販売を主力としていた化粧品会社はほとんど通販と二刀流になりました。海外からは安価な化粧品が大量に流入し、通販も店販も席巻し始めました。
アフターコロナ、物価高の中、ポイント制のモールで商品を購入するユーザーも多く、自社サイトではなかなか購入いただけないという状況になっています。既存の国内通販化粧品会社にとっては、悪条件のオンパレードといえます。
「通販化粧品は、安くて、簡単に手に入る、便利な商品」という、かつてのイメージは完全に忘れられています。今や通販専業化粧品の価格は、化粧品全体の中でも中価格帯~高価格帯になっています。
それでもお客さまに支持され、売り上げを拡大していくためには、アジア等の新規マーケットに出ていくか、あるいは国内マーケットでは、お客さま一人当たりのLTVを上げていく以外に方法はありません。

新規獲得が難しい今こそ、LTV向上が企業成長の要に

新規顧客獲得コストが高騰する中では、一度獲得したお客さまを大切にして、長く愛用していただき、生涯LTVを少しでも高めてもらう以外に方法はありません。

そしてもはや「安物ではない通販化粧品」は、高価格帯ブランドと同等のサービスを提供しなければ支持されなくなるでしょう。

すなわち通販に加えて実店舗での販売や、サービスカウンターでのカウンセリング&お手入れのアドバイス、専用サロンでのケアと同等のサービスなどをする必要も出てきます。

LTVを向上させるためには、中価格帯~高価格帯の化粧品にふさわしい体制を整備し、きめ細かで付加価値の高いサービスを提供しなければいけません。LTVの向上には、単なる商品の提供を超えた、強力なブランディングが不可欠なのです。

成長を持続させるために必要なのは「おもてなしの設計」

しかし、すべてのお客さまを一律に優遇するのではなく、その中でも特に貢献度の高いロイヤル顧客に重点を置き、定期的に購入してもらう仕組みを作ることが大切です。

ロイヤル顧客は、1回商品を購入してくれるだけではありません。ブランドを継続して使い続けてくれる方々なので、企業に大きな利益をもたらしてくれます。

そんなロイヤル顧客を大切にするために有効なのはVIP会員制度を作ることでしょう。VIP会員制度を用いて、特別なお客さまをおもてなしすることで、継続して商品を使ってもらうだけではなく、ブランドの応援団としても機能してもらうのです。

具体的には、頻繁にコミュニケーションを行うことです。試供品やプレゼントの提供、限定割引&カウンセリングなどの特別サービスの提供、参加型イベントへのご招待、アンケート調査への協力依頼などを通じて、きめ細かく接点を持つことがよいでしょう。

もちろん、過剰なサービスは逆効果になりかねません。重要なのは、ロイヤル顧客の気持ちに寄り添う必要があるということです。そして会社の考え方やコンセプトに沿った一貫性を持ったサービスをすることです。単に「モノ」を提供するだけでなく、ブランドメッセージや社会貢献活動についても発信することが大切です。なぜならロイヤル顧客は商品だけでなく、会社やブランドコンセプト全体にも関心を寄せているからです。

これからの通販ビジネスで成長を続けるためには、単に商品を売るだけでなく、お客さまの心をつかむ、「おもてなし」の精神が欠かせません。

ブランドを深く愛してくれるロイヤル顧客こそが、企業の持続的な成長を支える柱となります。一人一人に寄り添い、心から満足してもらえる特別な体験を提供することで、お客さまは単なる消費者の立場を超え、ブランドの熱心なファンへと育ってくれるでしょう。

お客さまとの間に確かな絆を築き、その「幸せ」を追求する「おもてなし」こそが、激しい競争を勝ち抜き、ブランドの未来を拓く鍵となるのです。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

フォー・レディーは、ロイヤル顧客を育てる仕組みづくりを得意としています。CRM戦略から会報誌・同梱物・VIP施策まで、お客様との“関係価値”を高めるご支援を行っています。自社らしいファンづくりにお悩みの企業さまは、ぜひお気軽にご相談ください。

深堀り!Q&A

 なぜロイヤル顧客への投資は“最優先”と言えるのか?

ロイヤル顧客は単なるヘビーユーザーではなく、企業が届けたい価値を最もよく理解し、ブランドの世界観と歩調を合わせてくれる存在だからです。購入額が大きいだけでなく、口コミや紹介、アンケート協力など“関係性ベースの価値”を自然に生み出してくれます。広告費を投下しても獲得しにくい今、最も投資対効果が高いのがこの層なのです。

VIP会員制度の目的は、特典を配ることではないのですか?

特典はあくまで“きっかけ”にすぎません。本来の目的は、「このブランドと長く付き合いたい」と感じてもらえる“心理的安心感”をつくること。試供品やプレゼントも、単に渡すだけでは意味がなく、「あなたをよく理解しています」「大切に思っています」というメッセージが伝わったときに初めて価値が生まれます。

VIP施策で失敗する企業の共通点は?

多くは「特典内容」から考えてしまうことです。本来は、ロイヤル顧客が求めている“体験価値”を理解してから企画をつくるべきなのに、施策がモノ中心になるとブランド軸がブレてしまいます。結果、「お得だから嬉しい」だけの制度になり、ファンづくりにはつながりません。成功する企業は、特典よりも“世界観”と“関係性”を先に設計しています。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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