理想の顧客を掴むポイントは、「誰に・何を・どう売るか」

通販化粧品では、想定外の客層に商品が届き、本来の価値が伝わらないケースが多くあります。その背景には、メディア選定や訴求表現、販促施策が数字重視で進められていることが一因です。化粧品は、生活や肌悩みに寄り添ってこそ価値を発揮するもの。誰に、何を、どう届けるかを見失わず、お客さまが心地よく使い続けられる提案こそが、信頼につながります。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』12月7日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.98」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

忙しい人向け|対談で学ぶ「“理想の顧客”を掴むための秘訣

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顧客層は、新規広告メディアや施策によっても変化する!

通販化粧品会社
広告宣伝担当者

弊社のお客さまイメージがあまりはっきりしていないので、調査したところ特徴的な傾向は出なかったようです。ほとんどのお客さまから「価格を安くしてほしい」という要望が寄せられ、それ以外のニーズにはあまり声が上がらず、どうやら美容に感心の低いお客さまが多くなってきたような気がします。

得意先のお客さま調査で、とてもショックなことがありました。敏感肌で苦しんだ経験から、同じ肌悩みを持つ女性のために、ある女性社長が時間をかけて開発した商品がありました。しかし、お客さまを調査したところ、その化粧品を使っている理由が肌悩みではまったくなくて、売りにつられて購入しているお客さまばかりだったのです。

このように通販化粧品では、本来の開発意図とは全く異なるお客さま層に、目的とは別の使われ方をしている例がよくあります。その理由は、販売手法にあるのではないかと考えられます。通信販売は多くの場合、さまざまな通信手段でお客さまとやり取りしますので、対面販売とは異なり情報提供やヒアリングをする機会が圧倒に少なくなっていることが考えられます。

その上、メディアを通じて新規獲得広告を展開するため、分かりやすいキャッチフレーズをアピールして売るのが王道になっています。お客さまの肌悩みをヒアリングして寄り添うのは、その後のCRMで展開しますので、まずはメディアの選び方が大事な関門となります。

そもそも各社ともメディアや広告代理店との付き合いがあるので、必ずしも設定したペルソナ像1や商品にフィットするメディアにばかりに出稿できる訳ではありません。ボリュームを取るためにはリーチ2が広いメディアを選ばざる得ない場合もあります。

次に多くのメディアの中で、瞬時に選ばれなくてはならないのでインパクトのあるキャッチコピーが不可欠となります。じっくりと説明が必要な商品も、凝縮された一言で表現しなくてはならないのです。それもクリエーティブテスト3と称されて、さまざまな表現が試されます。場合によってはお客さまの期待を高めるためにベネフィットまでいろいろな訴求方法で試されます。

最後に、その場でのお得感を演出するための、値引きやプレゼントや即効性のあるキャンペーンをするのが常識になっています。これらのさまざまなテストを経て、反応率という数字をチェックし、より効率のよい数字が出た施策を続けることになります。

「信念」からブレた戦略が、理想と現実のギャップを生む

その結果、最初に設定していたお客さま像とはまったく違う、商品の価値とニーズがかけ離れたお客さまが集まってしまうということが起こります。その事例が冒頭で紹介した事例です。また、値引きを前面に打ち出した商品では、お客さまの共通項は「値引き購入」のみで、お客さまの肌悩みもライフスタイルや価値観も全くバラバラという例もあります。気が付いた時には、そんなお客さまたちの大集団になっていたという事例も少なくないわけです。

そうなると、マーケティングの原理原則である「誰に、何を、どのように売るか」を全く決められず、まるで暗闇の中でビジネスをしなければならない状況に追い込まれます。規模が大きくなってから、そのような状況を修正するには大きな困難が伴います。

あなたのブランドは、どんな人に使ってほしいのか

化粧品を販売するという行為は、お客さまに寄り添い、その生活を知った上で適切なご提案が必要です。毎朝お客さまがどんな状態でお肌のお手入れをされるのか、何のためにメイクをするのか、ライフスタイルを知らなければ役立つご提案はできないはずです。

また、何の目的でそのアイテムを使用されるのか、他にどんな商品を使っているのかを知らなければ、余計なご提案をしてしまうことにもなりかねません。
化粧品とは、お客さまに気持ちよくお使いいただくことで「きれいにする」「気持ちよく自信を持てる」という本来の目的を果たすものです。そのためお客さまに使い続けていただくことを、われわれが十分にサポートする必要があると考えます。私は、化粧品の価格にはその値段も含まれていると考えています。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

フォー・レディーでは、貴社の課題やお困りごとに寄り添いながら、ペルソナ開発から理想の顧客獲得施策、ロイヤル育成などをトータルで支援し、実務に即したサポートをさせていただきます。

用語解説

  1. ペルソナ像―商品やサービスの理想的な顧客モデル(年齢・悩み・生活などを具体化)。 ↩︎
  2. リーチ―広告や情報が届くユーザーの人数または範囲のこと。 ↩︎
  3. クリエーティブテスト―複数の広告表現を比較し、反応がよいものを選ぶ検証方法。 ↩︎
ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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