アドバイス力を復活させたい—化粧品販売に必要な“1to1提案”とは

販売の現場では商品説明や売り込みが優先され、本来あるべき「肌と生活に寄り添うアドバイス」が置き去りにされている。本コラムでは、化粧品で迷った消費のリアルな視点から、化粧品販売におけるアドバイス力の重要性と、これから企業が取り組むべき販売現場のあり方を考える。今回のコラムは、『週刊粧業』3月7日号に掲載された「激変するコスメマーケット vol.26」です。ぜひご覧ください。

週刊粧業
化粧品、日用品(トイレタリー製品、石鹸洗剤、歯磨き等)、医薬品、美容業、装粧品、エステティック等を中心とした精算・流通産業界の総合専門紙として、日々変化する業界の最新動向を伝えています。

忙しい人向け|対談で学ぶ〝 化粧品の迷子が求める理想のアドバイザー像〟

忙しくてなかなか文章を読む時間がない方向け、スキマ時間に聞くだけで学べる音声版をご用意しました。

合う化粧品がわからない時代に、生活者は迷い続けている

私はどんな化粧品を使用しても、めったに肌あれしたという経験がない。そのため若い頃から「自分は健康な肌だ!」と思い込んできた。

ところが最近は老化が深刻になってきたということもあり、合うものとそうでないものがはっきりしてきた。そのように感じ始めると、「合うもの」に対する基準が途端に厳しくなって、なかなか自分に対する「イチオシ」製品が決まらない。

どんな小さなことでも気になり、「もっと良いモノがあるはず」という、自分に合う化粧品が見つからず迷い続ける状態から抜け出せなくなっているのだ。

理想のアドバイザー像が示す、1to1美容の本質

私の身近な友人・知人の女性たちも、そんな悩みを持つ人が多い。一方で化粧品業界の大御所たちの中には「将来、1人ひとりのお客様のアドバイザーとなって、トータルで美容をサポートしたい」という夢を語る人もいる。

よく考えてみれば、美容は1人ひとりのお客様によって、様々なお手入れ方法があり、製品の選択肢もとても幅広い。究極の1 to 1マーケティングを実施しようとすれば、「オーダー化粧品も当然」となってくるのかもしれない。

しかし今すぐにそれが不可能だとすれば、せめて販売時点だけでも、迷い続けている状態に陥っているお客様に、適切なアドバイスができる体制を整えたいものである。

本来は最前線にいる販売員たちが、メーカーの枠組みに左右されず、国内外のあらゆる製品を熟知し、また使用&体感して、その経験を基にアドバイスしてくれたらどんなに心強いかと思う。

夢のようなアドバイスが可能なら、まずは私の住まいの気候風土を把握して季節ごとのアドバイスをきめ細かくして欲しい。そして私の現在の肌悩み、つまり自分の肌への不満をじっくり聞いてくれて、肌質をチェックして、知りうる限りの製品の中から私に合う製品を選んで欲しい。

同時に私の生活状態をよく理解し、どんな時にお手入れの時間を確保できて、どんな時はスピーディーに済ませたいか、という気持ちと生活に合わせたお手入れ方法を伝授するとともに、5年後、10年後の私がどんな肌状態になるかを予測して欲しい。

売る力より、アドバイス力が企業力になる時代へ

こんなコンサルタントのようなアドバイザーがいたら、多分その人の言うことを信じて、教えられたお手入れを実行するに違いない。もちろん高いアドバイス料金は払えないので、できる限り安く、私の化粧品予算の範囲内でできれば嬉しい。

もともと化粧品の販売は、このようなお手入れのコンサルティング販売が基本だったのではないかと思う。ところが何時の間にか販売現場は、プロダクツとしての化粧品の売り込みに追われて、大切なアドバイスがなおざりになってしまい、お客様にも煙たがられる存在になってしまったのではないか?

1人ひとりのお客様の肌状態は、健康状態と同じで条件が全く異なる。そのようなお客様に、1 to 1で対応するなら、販売現場でのアドバイス力を復活させる以外にないと思う。

そのために時間を費やし、教育訓練にどれだけ投資しているかということが、これからの企業力の差になってくると思う。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕 登志子

商品を深く理解していただくためにも販売力は不可欠です。フォー・レディーでは、販売現場のマニュアル整備や美容部員教育の支援実績もあります。ご相談いただければ幸いです。

深掘りQ&A

なぜ、アドバイス力がこれほど重要なのでしょうか?

化粧品の機能差が分かりにくくなり、情報量だけが過剰に増えたことで、消費者は「選べない状態に。その結果、商品そのものよりも「誰が、どの視点で、どう導いてくれるか」が信頼判断の軸になっています。アドバイス力は、商品価値を正しく伝えるための前提条件になりつつあると思います。

アドバイス力は、個人の経験やセンスに任せるものなのでしょうか?

いいえ、本来は組織が設計・共有すべきです。ヒアリングの順序、考え方の軸、伝え方の言葉選びなどは、ある程度まで言語化・仕組み化できます。個人任せにすると、お客様に伝わる情報がバラバラになる恐れがあります。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

BACK TO INDEX