創業から10年、話題性と独自性で成長してきた通販化粧品ブランドも、次のステージに進む過程で必ず「伸び悩みの壁」に直面します。いま、多くの企業が同じ課題にぶつかり、模索を続けています。――では、その壁を越えるために必要な視点とは何でしょうか。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』7月5日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.48」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。
成長を止めないためには、まず「顧客の本音」に立ち返ること

通販化粧品ブランドを立ち上げて10年目の会社です。もともと別の事業を運営しており、化粧品については全くの素人だったが、固定観念が無かったことが幸いしてか、他社にないユニークな商品を開発できたことが話題になって、ここまで規模を拡大することができたが、いま伸び悩みの壁を感じている。
今年4月に開催された「ダイレクトマーケティングフェア2018」(日本流通産業新聞主催)のセミナーで、私は「50億、100億の壁を破って、飛躍するための作戦とは?」というテーマでお話をさせてもらった。
その後いくつかの事業会社から問い合わせがあり、伸び悩みで模索しているところが想像以上に多いと実感した。そこで今回はセミナーの内容を再度要約してお伝えしたい。
まず成長の伸び率が落ちて、壁のようなものを感じ始めたら、「マーケティングの原点」に返ることが一番よいと思う。単にデータ分析を繰り返すだけでなく、本当にお客さまの声に耳を傾けること。
弊社でよくやっているのは、「お客さまアンケート」で「不満・要望」などを徹底して集めること。あるいは直接お客さまに会う機会を設けて、徹底的にヒアリングを行う「グループインタビュー」などを実施する。最近のお客さまは企業に意見を言うことに慣れているので、そのような機会を設けると、リアルな本音が返ってくる。
こうした手段を通じて、徹底してお客さまの生活と美容意識、実際のお手入れ状況を知ることはとても役に立つ。通販化粧品企業はデータマーケティングが主体なので、「定量調査」は毎日やっているようなものだが、お客さまの本音を知る「定性調査」もぜひ充実させてほしいものだ。
競合を知らなければ、顧客の本音もつかめない

通販化粧品はお客様とダイレクトに結びついているので、店頭販売に比較すると隣に競合の店舗が並んでいるわけではない。そのため競合他社の動向に敏感に反応することをつい忘れられてしまう。ところが、お客さまの洗面台には、競合他社商品があふれている。つまり他社動向に疎くなっているため、お客さまのニーズや新しい情報に遅れてしまう要因につながっているのではないか。
少し極端なアドバイスをすると、競合他社の「ロイヤル顧客」になってみると、商品やサービスを自分で体感できるので、自分の会社を振り返るきっかけになるのではないかと思う。
コミュニケーション不足が成長の足かせになる

もうひとつ、ぜひお勧めしたいのは、社内のコミュニケーションを円滑にして、「情報の共有化」を進めることだ。通販化粧品会社の業務内容は、商品開発、新規獲得、リピート育成、販促企画、受注や出荷、美容相談など多岐にわたっている。
そのため、なかなか情報の共有がスピーディーに行われず、後手後手に回ってしまうことがある。しかもある程度の規模になってくると、創業時の「全員が何でも知っている」状態は維持できなくなってきて、問題点が先送りになってしまうこともよく見られる。
社内のコミュニケーション不足はとても大きな課題で、全社員の考えている方向性を定めることや、コミュニケーションを円滑にするための仕組みを作ること、目標設定に対するPDCAの回し方など、ルールを定めなければならないことが山のようにある。
歴史が長い会社はきめ細かなマニュアル類がそろっているため、一定のレベルは共有できるが、更新してレベルを上げたり、新しい情報を取り入れることができにくくなっていたりするので、必ずしも「マニュアル類」があればよいというわけでもない。一番いいのは、担当者たちが自分たちで工夫して改善していく「マニュアル類」を完成させることだが、なかなか実現できている会社は少ない。
このように、お客さまの要望を知り、競合のレベルを知り、自らの会社の力量を知ることで、次の一手が見えてくるはずだ。つまり孫子の兵法である「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という故事に基づくマーケティングを実践してみることから再スタートを切ってみてはいかがだろうか。

鯉渕登志子
フォー・レディーは、通販化粧品各社の豊富な調査実績と、生活者のリアルな声を基点にした消費者視点の両輪で、御社の次なる成長をサポートします。これまで多くの企業様が直面してきた「伸び悩みの壁」を共に乗り越え、再び成長軌道に乗せるためには、データだけでなく、お客様の声や現場の感覚を的確にとらえることが欠かせません。

















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