会報誌をやめる前に、もう一度考えてほしいこと

売上への直接効果が見えにくい――。多くの通販企業が、そんな理由で会報誌の継続を迷う時期を迎えます。けれど、やめてしまう前に少し立ち止まってみてください。その情報誌は、お客様との“絆”を深める大切な役割を担っているかもしれません。今回のコラムは、『日本流通産業新聞』2月10日号に掲載された「強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.79」です。ぜひご覧ください。

日本流通産業新聞
通販・ネットビジネス・健康食品・美容業界などの最新動向を専門的に取り上げる業界紙です。実務に直結する情報を多角的に発信し、多くのビジネス関係者に支持されています。

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会報誌は、売上だけでなく“ブランド”を育てるツール

通販化粧品会社 担当者

創業以来、売り上げは順調に伸びて中堅といわれる規模になってきました。しかし社内は少数精鋭で運営しているため、常に人手が足りない状態です。中でも会員情報誌の発行は手間暇もコストもかかる割に、売り上げに貢献しているかどうか不明なので発行をやめようかと考えています。

会員情報誌1が「売り上げに貢献しているかどうか不明」ということですが、それは「お客さまの役に立つ編集内容」にする工夫が少し不足しているのかもしれません。

弊社が過去に手掛けた事例では、情報誌を大幅にリニューアルしたところ、売り上げが対前年比130%を4年連続で達成した例があります。もちろん同時に新規顧客獲得も拡大していたからの結果ですが、同様の例は、他社の案件でも多くあります。

弊社が会員情報誌のリニューアルを依頼されたときには、まず徹底してお客さま調査から始めます。定量調査、定性調査、過去の会報誌やDMの発信内容と商材別の売り上げデータを詳細につき合わせて、お客さまの嗜好や傾向、買い物行動のパターンを調べつくします。

そして、お客さまが何をご不満に思っているか、どんな情報を欲しているかを調べて、何をお伝えしなければならないかを考えます。丹念にそれを繰り返し、お客さまのペルソナ像を設定し、情報発信の課題を見つけて、会員情報誌の発行目的やテーマ、毎号のコンテンツと表現方法を決めていきます。

ブランドの世界観を伝える、最強の発信ツールに

さらにはターゲット層に受け入れてもらえるような言葉の使い方、ビジュアル表現などを研究し、会員さまに「届くのが楽しみになる」と言ってもらえるような情報誌づくりを目指しています。

この段階になるとある程度は成功が見えてきます。つまり弊社が考える「通販化粧品の販売における会員情報誌」は、ブランディングの一環で、お客さまと強い絆で結ばれるための最強の情報発信手段なのです。

紙媒体で、あるいはウェブで、届ける手段はさまざまになりつつありますが、会員さまに定期的にお届けする「マガジン」は、化粧品情報だけにとどまらず、ライフスタイル提案、暮らしのヒントなど、お客さまに「役立つ情報」をお届けすることによって、お客さまと私たちをつなぐ「絆」にすることができるのです。

もちろん売り上げ拡大に貢献するためには、販売促進の情報も欠かせません。ほとんどがリピーターのお客さまの場合は、多少のサービス価格提示も必要でしょう。しかしそれが主体ではありません。いつも割引価格を提示しているとバーゲンブランドになって、そのうち正価では売れなくなってしまいます。
 「割引で売る」のではなく、「価値で売る」べきです。そのためには、「お客さまが欲しいと思っている情報を提供し、自分の役に立つブラントだ」と思ってもらうことが必要なのです。

お客さまが化粧品を購入する理由は、自分の悩みを解決したい、きれいになりたい、自信を持ちたいなどさまざまです。その思いに寄り添い、お悩み解決のヒントになるような情報を提供することができれば、とても喜ばれると思います。商品プラス情報という付加価値のある販売を心掛けたいものです。

会報誌は、顧客の声を生かす「ブランド資産」

弊社が会員情報誌を制作するときにこだわっているもうひとつのポイントは、お客さまにも「参加」してもらうということです。方法はいろいろ考えられます。お客さまの要望などを「お声」という方法で寄せていただく、あるいは「アンケートへの回答」で参加いただく、会社の「イベントや座談会」に参加していただくなどいくらでもあります。

また、会社側の主張を一方的に伝えるだけでなく、お客さまのご意見(感謝、疑問、要望、不満などすべて)も包み隠さず掲載すると、信頼感が高まると思います。

リアルなお客さまの声を取り上げることで、会社とお客さま、またお客さまとお客さまの交流の場になり、会員情報誌を起点に交流の輪が広がります。そうすると商品開発にも、販売手法にもさまざまな要望やアイデアが生まれることになります。

お客さまのお声は、通信販売にとって最大の「宝」です。会員情報誌はその「宝」を集めたり、発表したり、業務の改善改良の指針にしたり、お客さまにとっても、会社にとっても活用次第で大きな貢献も成果も期待できるようになるのです。

目先の売り上げ貢献だけではなく、将来にわたってブランドを育てていくためのツールとして、会員情報誌を育ててほしいものだと思います。

株式会社フォー・レディー 代表
鯉渕登志子

会報誌は、育て方しだいでブランドの未来を変える力を持っています。フォー・レディーは、お客様と企業をつなぐ“伝わる情報誌”づくりで、貴社のファン育成をお手伝いします。

用語解説

  1. 会員情報誌-通販企業が既存顧客に定期的に発行する情報誌。商品紹介だけでなく、美容・健康・ライフスタイルなどの「役立つ情報」を届けることで、ブランドへの信頼やファン化を促すCRMツールのひとつ。紙媒体のほか、デジタル版(Webマガジン)として発行する企業も増えている。 ↩︎

深掘りQ&A

会報誌の発行コストに見合う効果は、どう判断すればいい?

売上だけで判断するのではなく、「お客様の行動変化」を見るのがポイントです。たとえば、情報誌掲載後のアクセス数・定期継続率・紹介数・お声投稿数など、関係性を示す指標をKPIに設定します。中でも、記事に共感したお客様の反応(アンケートやSNS投稿)は“ファン化の兆し”として重要な成果といえます。

会報誌の内容を決めるとき、どんな情報を中心にすべき?

商品の効果や特長だけでなく、**「その商品を使うことでどんな毎日が変わるか」**を伝える視点が鍵です。美容・健康・心の豊かさなど、お客様のライフスタイルに寄り添うテーマを軸に据えると、読後感の満足度が上がります。また、誌面の一部を“お客様発信のページ”として設けることで、双方向性が生まれます。

紙媒体とWebマガジン、どちらがいいの?

目的によって使い分けが有効です。紙媒体は“手に取る安心感”と“保管性”で信頼を築きやすく、Webマガジンは“拡散力”と“即時性”に優れます。フォー・レディーでは、紙での感情的な訴求とWebでの行動導線を連携させるハイブリッド型CRM設計をおすすめしています。

ABOUT US
株式会社フォー・レディー 代表 鯉渕登志子
日本大学芸術学部卒業後、アパレル業界団体にてファッション経営情報誌の編集に携わり、カネボウファッション研究所を経て、1982年に株式会社フォー・レディーを設立。これまで手がけた化粧品・ファッション通販企業は180社を超えます。一貫して「女性を中心とした生活者ターゲット」に寄り添い、消費者の実感から発想することを信条としています。 「自分が使って心から納得できるものを届ける」というポリシーのもと、コンセプト設計からクリエイティブ制作までを一貫して行っています。また、日本通信販売協会などでの講演実績も多数あり、生活者視点のマーケティングを広く発信しています。

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